今から16年前の2000年10月11日、世界タイトルをかけ、2人の日本人が死闘を繰り広げた。
WBA世界ライト級タイトルマッチ、チャンピオンは、天才・畑山隆則。
挑戦者は、「平成のKOキング」・坂本博之。
試合会場の横浜アリーナは、1万6000人の大観衆で埋め尽くされた。
「守りはダセーからやめた」という畑山の言葉通り、ゴングと同時に両者ともに激しい打ち合いが始まった。
畑山が坂本の顔面を撃ち抜けば、坂本は重いパンチを畑山のボディーに返した。
互いに休む間もないパンチの応酬が続く。
一進一退攻防が大きく動いたのは8ラウンド、畑山のアッパーが連発で決まると、無尽蔵のスタミナと耐久力を見せてきた坂本の動きがついに鈍る。
続く9ラウンド、畑山の度重なるパンチで坂本は左耳から出血。
三半規管が揺れ平衡感覚が狂い、記憶も飛んだ。
そして…運命の10ラウンド。
開始と同時にコーナーを飛び出した畑山のワンツーが坂本の顔面を捉えた。
まるでスローモーションのようにゆっくりと、坂本は背中からマットに落ちていった。
セコンドからタオルが投げ込まれる。
10ラウンド18秒、テクニカルノックアウト。
畑山が王座を防衛。
両者ともに、生涯最高の一戦と語るこの名勝負は、伝説の一戦としてボクシング史に刻まれている。