2014年2月19日、ロシア、アイスバーグスケートパレス。
フィギュアスケートに全てを捧げてきた、天才スケーターが集大成として望んだでそれは起きた。
女子ショートプログラム、ショパンの「ノクターン第2番」にあわせ滑り出したが、冒頭のトリプルアクセルでいきなり転倒。
後半のジャンプも立て続けに失敗し、まさかの16位。
「なにも分からない…」と呆然とする浅田真央、
見守っていた日本中が落胆した。
しかし、翌日のフリーで、その落胆は、驚嘆と感動に変わる。
演技冒頭は、自身がこだわり続け、苦しみ続けてきたトリプルアクセル。
観客そして日本中が固唾を飲んで見守る中、空中で1、2、3…、氷上にすっと降りた。
浅田は、オリンピックでトリプルアクセルを含む6種類、計8度の3回転ジャンプを跳ぶ。
女子ではまだ誰も成功させていない最高難度のプログラム。
ひとつひとつのジャンプを、支えてくれた人たちの顔を思いながら飛んだ。
父へ、姉の舞へ、天国の母へ…
全てのジャンプを着氷し、ノーミスでフィニッシュ。
同時に天を見上げ涙があふれ出る。
自己最高スコアを上回る142.71をマークし、16位から6位へと一気に順位を上げた。
バンクーバーから積み上げた4年間の集大成を詰め込んだ”世紀の4分間”。
それは、誰もが待っていた浅田の姿だった。
総立ちの観客からは、万雷の拍手。
浅田の涙が笑顔に変わった。
「最後のオリンピック」と位置づけた2度目の夢舞台。
メダルには届かなかったが、最高の演技と不屈の精神で世界中を魅了した浅田真央は、まぶしい笑顔で、ソチに別れを告げた。