Athelete News
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15.05.02
この道は続いていく
今週の「ATHLETE NEWS」は、長年日本のロードレース界を牽引してきた、元プロレーサーの宮澤崇史さんです。


ー競技生活お疲れ様でした。去年引退されて、何年間の競技生活になるんですか?

「僕は高校を卒業してから、ずっと自転車に乗り続けていたので、18歳から36歳まで18年間、人生の半分ですね(笑)」

ー18年間続けてきた競技生活、引退を決めた瞬間は何だったのでしょうか?

「引退する予定はなかったんですけど、ふと我に返って、”来年も走るのかな?”と思った時に、自分のイメージしている走りの評価と、自分の体の動く範囲が繋がっていないところがあって、これはまずいなと思っていたんですよね。一ヶ月ほど悩んで、最後のレースの3日前くらいに「辞めよう!」と思ったんです。子供が物を飽きて放り投げるように「やーめた」って感じですね(笑)」

ー宮澤さんを語る上で欠かせないストーリーに「生体肝移植」のお話があるのですが、現役の途中で肝臓病を患っていたお母様に、自分の肝臓のを移植されたんですよね。

「以前に一回大きな手術をしたことがあって、病弱だったのですが、母は父が亡くなってから女手一つで育ててくれて、自分が自転車に乗りたいと言った時も、自転車を与えてくれて。やりたいと言う事に対して、100%環境を与えてくれた母親だったんです。また、二人三脚で上を目指したいという思いがありました」

ー「生体肝移植」をされた方が、その後トップレベルまで復帰した例というのは、世界でもほとんどないそうですが、そこに大変な努力があったんですよね?

「努力はしましたけど、その時その時に努力してるなという感じはなく、もう必死なんですよね。自分で、いま出来る事、例えば駅の階段を登るとか、日常の中でしゃがむとか、歩く時に手を振るとか、どの角度まで振ったら体って楽に歩けるんだろうとか、プラスの方に転じていく要素を、とにかく一分一秒の中に考える。そうする事によって、人生は好転していくんじゃないかなと思いました。そういうことが競技生活にも出ていたかなと思います」

ー「ツール・ド・フランス」出場という夢は叶わなかったということですが、ロードレースの選手にとって「ツール・ド・フランス」はどんな舞台なんでしょうか?

「華やかで、自転車競技の中でも、自転車競技の枠を超えたお祭りです。「ツール・ド・フランス」が、自転車競技というのは、僕の中では違うと思っていて、下のカテゴリだとか、世界中で行われいてるほとんどの自転車レースは、町おこしだったり、地元のスター選手を観に来るお客さん達が、季節を楽しみにお祭りを楽しむ。逆に「ツール・ド・フランス」は商業的なところが強いですね。レースが通る1時間前、道路は猫でも通っちゃいけないくらい警戒態勢なんですよ」

ーロードレースは最大何キロくらい出るんですか?

「僕は下り坂で時速120キロくらい出した事ありますね。パンクしたらアウトですね(笑)。雨が降ってると時速70キロくらいで顔が痛くなりますし、カナブンとか当たると最悪ですね。デコピン並の痛さですよ(笑)」

ー毎回、ゲストの方のお気に入りの一曲を伺っています。宮澤さんが自分を鼓舞するために聴いている曲や、集中力を高めるためによく聴いている曲はありますか? 

「ジャコモ・プッチーニさんが作曲した「Nessun Dorma」という曲です。最後に「勝つんだ」というフレーズがあるんですけど、聴く度に鳥肌が立つ様な思いにひたれる曲なんですね。トレーニングのきつさに対してに勝つんだとか、気持ちに勝つんだとか、週末のレースに勝つんだという思いをそこに込めます」

ーこの曲を知ったきっかけは何だったんですか?

「イタリアに行った時に、たまたま、ジャコモ・プッチーニさんが住んでいたルッカというイタリアのトスカーナ地方の町に2年間住んでいました。その時に、ここがプッチーニが住んでいた町なんだと思いながら聴いていて、歴史的背景を思い描きながら、自分の好きな曲を聴くのはすごくいいなと思いましたね」

ー最後に、リスナーのみなさんにメッセージをお願いします。

「自転車が大好きで、幼稚園から乗っていて、自分の世界を広げてきたので、これから自転車を始める人も、自転車に乗っている人も、安全に楽しく、風を受けながら自分の世界を広げていってほしいと思います」