今週の「Athlete News」は、北京パラリンピック・アルペンスキー日本代表の森井大輝選手をゲストにお迎えしました。
森井大輝(もりい・たいき)選手は、1980年、東京都あきる野市生まれ。
4歳のころからスキーを始め、高校でもスキー部に所属していましたが、高校2年生のときに事故で脊椎を損傷。
リハビリ中に「長野パラリンピック」を見て、チェアスキーを始め、アルペンスキーで、2002年、ソルトレイクシティパラリンピックに出場。
平昌大会では、トリノ大会から4大会連続で銀メダルを獲得。
6大会連続出場となる北京大会では、悲願の金メダルを目指します!!
今回はリモートでお話を伺っていきました。
──森井選手は、2002年のソルトレイクシティ大会から20年、6大会連続出場。20年って、相当長い年月じゃないですか。その間ずっとトップにい続ける。本当に頭が下がります。
始めた頃は「チームのホープだ」って言われていたのが、最近は「レジェンド」って言われるようになって、どう対応していいかわからなくて、ちょっと複雑な思いではいるんですけれども(笑)、ただ、気持ちとしては“まだホープ”という気持ちで臨んでいます。
──6大会目となると、過去に比べて、気持ちの変化というか、ゆとりみたいなものが出て来たりしますか?
そうですね。すごく大会を楽しめるようになってるなと思いますね。
──でも、若い時はがむしゃらにいけたけど、逆に怖さを知ってしまう…みたいなこともあったりしませんか?
それもあると思います。特に何が一番怖いかと言うと、転倒して怪我をした時なんですね。若い頃は寝て目が覚めれば治っていたのが、ここ最近は、寝て目が覚めると余計に痛くなってるということがたまにあるので(笑)。
と言っても、スタートバーを切ってしまえば、そういった恐怖心というのはほぼなくなってしまいますね。
集中するので、そういうものは全部排除して、もう“どうしたら速く滑ることができるのか”ということだけを考えています。
そのスタートバーを切るまでには、いろんな複雑な思いがありますね。
──そのスタートバーを切るまでの気持ちの持って行き方や、ルーティンみたいなものはありますか?
これといって“何かポーズを取ったりする”とかはないんですけど、基本的に、(スタートの前は)スタートからゴールまでのコースを頭の中でイメージをして、そのラインをずっとトレースしていくんですよね。それが上手くイメージできた時というのは、やっぱりタイムもすごくいいですね。
どうしても斜面が難しくてうまく滑れなかったり、あとは記憶力の問題で、たまに“あれ、コースどこだっけな?”っていうことがあるんですけど(笑)、そういう時はたまに迷子になります(笑)。
──(笑)。「次、なんだっけ?」と思う時もあるんですか?
たまにありますね。その時は“右行ったから次は左だな”と思って飛び込むと、大抵合ってる(笑)。
──アルペンスキーって、自分で(好きなタイミングで)スタートを切れるんですよね。
そうですね。10秒前からコールが始まるんですけど、5秒前になったところから、自分の好きなタイミングでスタートしています。「位置について、よーいドン!」ではないですね。
──さて、平昌大会から4年。強化されてきたところを教えてください。
今回、強化をしていく中で一番大変だったのは、コロナ禍でどうやってトレーニングする環境を作るか、もしくは構築するかというところが、すごく僕にとっては課題でしたね。
──やっぱり、ゲレンデに行って滑ることすらできないと、練習しようがないですよね。
もちろん「ゲレンデに行く」ということもそうだったんですけれども、もう1つすごく大変だったのは、夏のトレーニングだったんです。
僕の“脊髄損傷”という身体は、どうしても平熱が高いんですよ。熱が高くなってしまったり、発熱してしまうことがすごく多くて。
そうすると、例えば37度3分、4分…と上がってしまった時に、ジムに行けないじゃないですか。「その熱は何が原因で出ているのか」ということになってしまうので。
コロナ禍だと、やっぱりどうしても、“その微熱はひょっとしたら(新型コロナ感染症かもしれない)”ということもありますし、もし(自分の体質による)微熱ではなく、本当に新型コロナウイルス感染症に罹ってしまっていたとしたら、僕がいろんな所に行ってしまうことで周りに感染させてしまって迷惑をかけてしまうかもしれない、という思いがありました。
だから、トレーニング環境を思い切って作っちゃったりしました(笑)。
──「作った」というのはどういうことですか?
自宅にジムを作りました。ジムにあるフリーウエイトのマシンは一通り、全て入れてみたって感じです。
──(リモート画面の後ろに映っているジムが)それはご自宅なんですか! そこでジムの営業ができますよ(笑)。
実際に、フィジカル面は強化されましたか?
そうですね。実際にトレーニングをやることによって、例えば体幹がすごく強くなりましたし、やっていて“近く(自宅)にジムがあるっていうのはすごくいいな”とも思ったんですが、1つ残念なことがあって。
というのは、僕は元々地元のジムに行くことが多かったんですね。地元のジムに行くと、「森井君、元気?」とか「頑張ってね」とか、応援をすごくいただけるんです。それこそ応援だけではなくて「おはようございます」とか「お疲れ様です」とか、人との接点というものがあった。
でも、自宅のジムで1人で、もしくはトレーナーさんと2人でトレーニングをしていると、そういう応援だったり繋がりがないので、それはすごく寂しいなと思いました。
あともう1つ重要なのは、トレーニング仲間ができてくると、筋肉をみんなで褒め合うんですよね(笑)。それがないのがやっぱりすごく寂しいなと思います。
──それが励みになったりしますもんね。
そうなんです。なので、コロナが落ち着いたら、もちろん自宅のジムのそうなんですけど、地元のジムに行って、いろんな人とコミュニケーションを取りながらまたトレーニングをしたいなと思います。
──6大会目となる森井選手。やっぱり経験、引き出しの多さというのは武器になるんじゃないですか?
僕もそう思っています。それこそ今、海外の若い選手たちが本当に強くなってきていて、その選手たちの勢いが勝つのか、それとも僕の技術が勝つのか。どちらが本当に強いのかというところを、僕も楽しみにしています。
──6度目のパラリンピックとなる今大会、金メダルかける想いを聞かせてください。
僕1人でスキーができているわけではなくて、本当に多くの方のサポートや支援のおかげでスキーができているんですね。“どうしたら恩返しができるだろう”って思った時に、やっぱり僕自身が獲っていないタイトルというのは、パラリンピックの金メダルなんです。
だから、金メダルを持ってみなさんにお返しをしたいなと思うので、是が非でも表彰台の一番真ん中に立てるように、頑張りたいなと思います。
──前回に来てくださった時にも「もちろんプロセスも大事だけれども、結果も大事だ」と仰っていたのが、すごく印象的で。ぜひ素晴らしい結果を報告しに、また来てくださいね。
最高の報告ができるように頑張りたいと思います!
──さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。森井大輝選手の心の支えになっている曲を教えてください。
Honey L Daysさんの「ノンフィクション」という曲になります。
この曲は、今回夏の東京パラリンピックに出場した陸上の選手で、伊藤智也さんという方の主題歌、テーマソングになっているんです。伊藤智也さんは僕の大先輩になるんですけれども、本当にすごく良い方で。
曲の内容も、僕自身がすごく感銘を受けますし、勝負にかける想いみたいなものが歌詞に詰まっているので、すごく良い曲だなと思って、今回選ばせていただきました。
──改めて、北京パラリンピックでは、森井選手のどこに注目してもらいたいですか?
チェアスキーは、パラリンピックのスポーツの中で一番アグレッシブでスピードが出る競技なんですね。なので、そのスピード感というものに注目していだけたらなと思います。
今週のゲスト、森井大輝選手のサイン入り色紙を1名様にプレゼントします!
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