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20.05.23
オリンピアン、パラリンピアンとスポーツ用具の関係
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今週の「Athlete News」は、スポーツライターの経験を持つ、作家の乙武洋匡さんをゲストにお迎えしました。
(※このインタビューは、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定する前に行われたものです)

乙武洋匡さんは、1976年生まれ、東京都のご出身。
早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。
卒業後は「スポーツのすばらしさを伝える仕事がしたい」との想いから、スポーツライターを中心に活動。
その後、教育に強い関心を抱き、小学校教諭などを経て、現在は、作家としてメディア出演や講演活動でご活躍されています。

今回のインタビューでは、「オリンピアン、パラリンピアンとスポーツ用具の関係」や「東京パラリンピックの見どころ」について伺っていきました。



──マラソンランナーに大人気の、“ナイキの厚底シューズ”について論争がありましたけれども、この件に関して、率直にどんなことを感じられましたか?

まず、どんな用具を使うにあたっても、“平等性”が担保されることが大事だと思うんですね。
ある用具が開発された時に、“この選手は使っていいけれど、この選手は使ってはいけない”、そういう不平等が生まれるならば、どうしても禁止しなければならないと思うんです。でも、このシューズのように“誰もが履くことができる”といった場合、「なぜ、制限をかけたり、時には禁止する必要があるのか」ということを突き詰めて考えていく必要があるんだろうな、と思うんですね。

今回のこの厚底シューズの場合、「このシューズを履いて好記録を連発する選手が出てきた。それって、(スポーツは)“肉体の勝負”であるはずなのに、“用具の勝負”になってしまっていないか?」というのが、「規制をかけるべきだ」という方の論拠になっていると思うんです。
でも、そんなことを言い出したら、そもそも、裸足で走らずになぜシューズを履いて良いんでしたっけ、ってことにもなってくると思うんです。
本当に純粋に肉体の勝負をするなら、やっぱり裸足で走るべきじゃないかという話にもなってくると思うんですよ。
「じゃあ、線引きをどのあたりに置いておくのが、皆が納得する形なのか」というふうに議論を進めていくべきなのかな、と思いました。

──パラリンピアンと用具の関係というのは、やはり密なものがありますか?

やはり、オリンピアン以上に、パラリンピアンの方が“用具”というものを活用して競技に臨む選手が多いので、これは非常に密接な関係にあるんですね。
特に近年、パラリンピアンが使う用具の発展が目覚ましいです。今では、カーボン(炭素繊維強化プラスチック)という素材で作られた「板バネ」と呼ばれる、人間の脚の形とは全く形状の異なる、速く走ったり高く跳んだりするのに特化した義足が作られるようになって、競技性も格段に進歩してるんですよ。

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──乙武さんは、“オリンピックとパラリンピックの関係”というのは、どうあるべきだとお考えになっていますか?

これは、ずっと私が、東京への(オリンピック・パラリンピックの)招致が決まる前から言い続けていることなんですけど、ゆくゆくは、オリンピックとパラリンピックが統合されたらいいな、と思っているんですね。
こういうことを言うと、「さすがにパラリンピアンがオリンピアンに勝てるはずないじゃないか」というようなことを言われるんですけど、これにはいろんな論点があって。

まず1つは、最近は、 “良い勝負”どころか、パラリンピアンの記録がオリンピアンの記録を上回ってしまうような競技も出てきているんです。例えば、走り幅跳びのマルクス・レームというドイツの選手がいるんですけれど、彼が出す記録は、すでにオリンピックの金メダリストの記録を上回ってしまっているんですよ。
なので、もしも彼がオリンピックへの出場が認められたら、義足のジャンパーがオリンピックで金メダルを獲ってしまう可能性がかなり高くなるんです。

実際、今はどういうルールになっているかというと、「“義足が健常者に比べて有利に働かない”ということが証明されていない」ということで、(義足の選手の)オリンピックへの出場がリオでも認められなかったし、今回の東京オリンピックへの出場も認められていないんですね。

これに対してはいろんな考え方があるんですけれど、当然、「条件が違えばしっかりと競技を分けるべきだ」という意見もありますし、そこには私も賛同するんですけど、一方で“ちょっと待てよ”と思うことがあるんです。

以前、オスカー・ピストリウスという、やはり義足のランナーがいたんですけど、彼はパラリンピックの中では“最強ランナー”と言われていて、ぶっちぎりに速かったんですよ。そんな彼が、オリンピック(ロンドン)への出場を認められたんです。そして、(男子400mで)準決勝まで進出したんですね。
その時は(オリンピックへの出場が)認められたし、「義足のランナーがオリンピックで準決勝まで行った」と、美談として受け入れられたんです。でも、おそらくそれは、「さすがに決勝までは行かないだろう、表彰台までは上らないだろう、金メダルまでは獲らないだろう」という前提だったから、出場が認められていたし、美談として扱われていたんだと思うんですよね。

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──それは、“用具に順応していく身体を作っていかなければいけない”という面もあるんでしょうか。

そうですね。“どっちを寄せていくか”ということについては、実はどちらも大事で。
やはり、選手個々の肉体は1人1人違いますから、用具をしっかりと選手個人に合わせていくということも大事になってきますし、そうは言っても“これ以上は変えられない”という範囲はやはり決まっていますから、そこに対しては選手が合わせていく必要もあると思いますし、これはどちらも大事になってくるのかな、と思います。

──やはり“用具”というのは、選手の一部でもありますよね。

そうですね。長野オリンピックで日本チームが“日の丸飛行隊”と呼ばれて、スキージャンプで金メダルを獲った。しかし、日本があまりに強すぎるということで、今度はスキー板の規定が変わって、ちょっと日本人には不利なルールになってしまったり、と。
やはり、用具をいじることによって有利な人が出てきたり不利な人が出てきたりということもあるので、しっかりとルールが決まって、それが周知されて、選手のみなさんがそのルールに合わせてしっかりと練習ができる、そういう時間は確保されてほしいなと思いますね。

──さて、番組では、ゲストの方にCheer up Songを伺っています。乙武さんの心の支えになっている曲を教えてください。

私の友人のギタリストなんですけど、MIYAVIというアーティストがいて。彼はもちろん日本でも大人気なんですけれども、苦手な英語も克服して海外ツアーを回って、世界中にファンを作っているんです。そういう姿に、私も友人として非常に刺激を受けています。

──その中でも「WHAT’S MY NAME?」を選んだ理由はなんですか?

本当にカッコいいんですよ。彼のギターの弾き方っていうのはすごく特徴的で、他のギタリストとはちょっと音が違うので、そのあたりをみなさんにも楽しんでいただければと思います。

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来週も引き続き、乙武洋匡さんのインタビューをお送りします。 お楽しみに!


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