Athelete News
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16.06.25
武井壮が考える「スポーツへの取り組み方」
今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、陸上・十種競技の元日本チャンピオン、“百獣の王”武井壮さんです。

今週は、武井さんが考える子供のスポーツへの取り組み方について伺いました。



──小さい頃から運動はできたんですか?


運動ができたというよりは、運動をできるようになるために、すごい時間を使いました。
校庭で野球をやっていたら、ホームランを打ちたいじゃないですか?でも、打てない理由がまったくわからなくて。
目の前に置いてあるコップの水を飲めなかったことがないのに、同じ”○○したい”なのに、なんでこっちは叶わなくて、こっちが叶わないんだって思って。
悶々として過ごしていたら、あるとき父親がビデオカメラを買ってきて、僕が野球やってるのを撮っていたんですね。それを見たときに衝撃が起きたんですよ。
当時、西武のペリー選手の真似をして打っていたんですよ。
投げるのも、永射保選手の真似をしてたら、どっちも全然似てなかったんですよ。

──自分が思い描いてる動きと、実際の動きがずれていたんですね

僕のやっていると思っていたことは、実際にできていない。このズレが生まれているんだと思って。
見てないところの自分の体を、思い通り動かせていないっていうのが、最初の僕のスポーツ理論ですね。

頭で思ったことができていないのに、スポーツをやっちゃいけない、そしたら失敗するか成功するかのギャンブルになっちゃうので。
僕は、”これからアスリートになりたい”と思っていたから、偶然で勝負するのはとんでもないギャンブルだなと思ったんですよ。
まずは自分の体を思った通りに動かせるようなトレー二ングを始めようと思って始めたのが、目をつぶって腕を真横に真っ直ぐあげるということなんですよ。
鏡に映した自分をパッと見たら、”ちょっと上だ!”と思って。
動いてもいない、相手もいないのに、自分が一番よく使ってる腕を真っ直ぐに伸ばせないなんて、スポーツが上手くなるわけないと思いました。

──野球が上手くなりたいと思ったら、ひたすらバットを振ったりしますよね?

反復練習はミスの幅が小さくなるだけなんですよ。だけど、偶然なのは変わらないんです。
自分の体を思った通りに動かせてない状態で、高校に進学してコーチが付いて「そうじゃない、こうしなさい」と言われたら、”そうしなさい”と言われた通りにやる能力は育ってないんですよ。
職人さんみたいなもので、その技術だけは高いんだけど、隣に行ったら素人なんですよ。新しいことをやろうと思ったら、ゼロからもう一回積み上げないといけない。
だから僕は、スポーツ一個だけで高く積むのは危ないよと、思うんです。

子供の頃は、まず頭で思ったことをその通り再現できるようなトレーニングとか…そのあとに力の部分。フォームが全く一緒でも、力の内容で結果はまるで変わっちゃうんですよ。
力の種類と、力を向ける向きと、どのタイミングで、どのくらいの長さ力を加えるか、っていうのが運動の内容なんですよ。形と内容を一致させて、初めて運動っていうのは同じことになりますから。
スポーツを始める前に、物が動くこととか物理とか、そういうことをきちんと分かってからスポーツの技術を習得するのと
分からずにただ反復で習得するのは、10年かかるか、それを1年で手に入れられるかの違いになると思います。

──それを子供に分かれといっても、実際にやるのは難しそうですよね

難しいほど、みんなやらないんですよね。だから、チャンスがあるんです。
それを持ってて、たくさん反復するのと、持たずに10年やるのでは全然質が変わってきますから。
1日に1分でも2分でもいいから、それについて考えてみたり調べてみたりすると、もう成長出来てると僕は思いますけどね。

──今週も、武井壮さんのお気に入りの1曲を教えてください

Dream Amiちゃんの「トライ・エヴリシング」です。
いつもE-girlsのライブに行ってまして、この曲を現場で聴いたら、歌詞が「なんでもやってみようよ!その先に何かがあるから」っていう、希望を持てる曲なので。

──武井さんにぴったりの曲ですね

今までやったことに、全部に同じだけ広くて深くて、楽しめる何かが詰まっていたので。
自分が大好きだった十種競技だけじゃなくて、それ以外の分野にも同じだけの輝きがありました。だからこそ、いま言えることなので。
アスリート達にも、いまの競技以外にも楽しめることが沢山あるし、自分が輝ける場所もあるよっていうメッセージとして贈りたいですね。