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アーティストLOVEがお届けしています。

TOKYO FM

相馬市 松川浦漁港の漁師、菊地基文さんの10年。

ON AIR REPORT / 2021.03.10 update
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TOKYO FMでは、今週「LOVE&HOPE」と題して、 あの大震災を風化させないためにどんなことが出来るか? リスナーのみなさんと一緒に考えながら、 各番組で特集しています。

LOVEちゃんは当時14歳の相馬市の中学生と出会ったことをきっかけに、震災後、音楽イベント「今日ここにいるという事」通称「今日ここライブ」を2012年から開催してきました。そんな、今日ここライブを相馬で開催するために最初に相談した方が相馬市の松川浦漁港で漁師をされている菊地基文さんです。清照丸、船長。現役底引き網漁師。浜の駅松川浦内にある食堂「浜の台所くぁせっと」の責任者の一人。

今日ここライブを相馬で開催するために最初に相談したら「1発の花火はいらないよ、復興継続のためにやってくれるなら一緒にやるよ」と言ってくれた正直で素敵な浜の男!今日は、菊地さんに『相馬の漁業の今』についてインタビューした模様をお届けしました。

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まずは、震災後、漁業を再開するためにしたこと。相馬の漁業の現状について伺いました。

菊地さん:福島第一原発の事故で福島の海が汚されてしまって、当然魚は人の口に入るものなので安心・安全な魚を水揚げするために1年3ヶ月、流通目的ではなく検査目的で毎週魚を獲って、そのデータをずっと見て安全性を確認された魚種から流通にのせようという事で。最初は3魚種から始まったんです。もともと200魚種くらい水揚げされる浜なんですけど、その中のたった3魚種からはじめて。地道にデータから見て、安全だなというものを徐々に魚種の数が増えていって、ようやく全魚種出荷可能となりました。
LOVE:地道なデータを集め続けた船長のお一人でもある菊池さん。私は、震災前からいかに相馬港が日本の海産物に貢献しているかを知って。本当にたくさん知らないうちに、私たちは相馬のお魚を食べていたんですね。

菊地:そうですね、水揚げ量も豊富な漁港なんで、中央市場の方には流通していますね。
LOVE:そんな相馬のお魚を信用するようになったのは、まさに菊池さんに聞いたお話で。データをとって、国が「このデータならいいよ」と決めた数値がわかりやすく100だったとすると、100を切ったら安全で101なら流通しないって、「それなんなの?」って。「僕たちはもともと安心安全な魚を当たり前のようにみんなに届けていたプライドがあるから」と言って、相馬港の皆さんは半分の設定にしようとしたって聞いて、すごいなと。
菊地:国内の基準がおっしゃるように100として、相馬港では50という独自の基準を設けてそれをクリアしたものが出荷されていて。逆に日本に入ってくるものは日本の基準の5倍くらい高いんです。海外から日本に入ってくる魚です。そこからすれば、外国から入ってくる魚介類から比べれば10分の1の厳しい基準ってことになるんですよね。
LOVE:相馬港の皆さんの努力とプライドで安心安全に届けるということが、昔から変わらないポリシーだということを勉強させてもらいました。

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そんな菊地さんは、漁師として働く一方、浜の駅松川浦内にある食堂「浜の台所くぁせっと」でもお仕事をされています。先日の大きな揺れの時は大丈夫だったのでしょうか。

菊地:オープンして間もない地震だったので、構造体の方が心配だったんですけど、大きな損傷もなくそちらの方はなんとかお客さんもすぐにも戻って来ていただいて、今は通常営業でやっています。
LOVE:美味しいお魚を地元の方々が楽しまれる新たなスポットでもあり、この10年の相馬の海の復興を象徴する食堂でもあるなと思って。ところで「くぁせっと」って?
菊地:相馬の方言で「食べさせますよ」という意味で。文字の表記が平仮名で「くぁせっと」って書くんですけど、「ぁ」が小さいんですよね。正式にはこちらの方言で言うと「かせっと」って言う。今は、旬なお魚で言うとズワイガニとかサクラマスとか。これからメヒカリとか小女子とか。メバルとか。数え上げればきりがないんですけどその時々の美味しい魚がありますね。

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LOVE:私たちが漁業のためにさらにできることはありますか?
菊地さん:推し生産者を作ることですかね。一般消費者というのはスーパーやコンビニで○○産の○○というところばかりに目がいって、結局テレビで有名だからとか「カニと言ったら北海道でしょ!」というそういう買い方がほとんどだと思うんです。でも、そういうものって他の場所でそれが有名になるとそっちに移っていっちゃうもので。それは生産者にとっては浮気されたのと同じで(笑)だから、どこどこ産とかテレビで有名になった○○とかそういうのではなくって、好きな生産者をケータイでも見ることができるので、魚だったら「この漁師の食べてみたいな〜」とか。実際にその漁師から食べれる魚とかとってみて、美味しかったらなんか気になってその後もその漁師のことを調べたり。会いに行って仲良くなりたいな〜とか思ったりして。そういうつながりが友達づきあいみたいになって。知っている人の食べ物だとずっと食べたいものじゃないですか!
マブダチが作っているネギとかだったら、もうネギっていったらあいつのだよなー!ってなるじゃないですか。だから、やっぱり作っている人、自分の推しメンを作るのって、生産者にとっては長くおつきあいができるし、生産意欲も増すわけです。「あの人に変なものは送れないからいいもん作ろう」とか、「いいもの獲って来てあげよう」とか。お互いいい関係性をつくれると思うので。

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相馬で漁師を務める菊地さんですが、お父様も漁師をされていたそう。そんなお父様から受け継いだポリシーがあるんですが、それがとても素敵なんです。

菊地さん:よく言っていたのは、「うちはいくら裕福になっても、人んちよりはおかずが一品多いくらいがいい」って。やっぱり金を持つと生活レベルあげたり高いもの買ってそれをステイタスにするみたいなそういう感じが大半だと思うんですけど。うちの親父ってそうじゃなくって。儲けてもうちは食卓に出るおかず一品多いくらいでよくて、それ以外は地域とかに貢献するというか。うちの親父怪我して船降りたんだけど、会社起こして魚を出荷する発泡スチロールの箱を販売する会社を立ち上げて。当時って魚は木箱で流通していたんです。それをこの浜で初めて最初に発泡スチロールに魚を入れて出荷することを始めて、当然一社独占だから値段をそこそこ設定しても、いいものだから売れたわけです。だけどそうせずに、うちの親父は利便性を上げるために、地元の仲買さんたちに価格を落として地域全体の水産業が潤うことを喜んだんですよ。だから、なかなかできないなと思って。
LOVE:10年間私の視点で菊池さんを通して相馬港を見てきたんですけど、お父様の精神も含めて地域に貢献する意識を地域の方々が当たり前のように持っていらっしゃる。それだからこそ、みんなで分かち合って食べるお食事、お魚って美味しいんだなって思うようになりました。何も知らずに食べるご飯と、生産者さんの背景を知って食べるご飯って、全然違うんですよね。

菊地:違うと思いますよ〜!重さも多分重くなってくると思いますよ!
LOVE:2021年、いろんな地域の食べ物について考えようと思います!

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