「川瀬良子のあぐり紀行」、2017年最後は沖縄県の農業にフォーカスします!
沖縄料理に欠かせない食材のひとつといえば「豚肉」。
中でも、貴重な高級豚肉として知られ、
地元だけでなく県外からも評価が高いのが「あぐ~」です。
どんな豚が、どんな風に肥育されているんでしょうか?
沖縄本島の北部、やんばるの森の中にある、
JAおきなわグループ
「沖縄県食肉センター 大宜味農場」
を訪ねました。
「アグー豚」は、昔から沖縄にいた豚で、沖縄固有の在来種。
その原種にあたる豚は、600年以上も前に、中国から琉球王国へやってきたと言われています。
戦前までは、庭先など、至るところで飼育されていましたが、
戦後、絶滅寸前にまで減ってしまいました。
そんなアグー豚をなんとか復元しようと、
沖縄県内の行政機関などが粘り強く選抜交配を行い、
現在の姿となりました。
そしてJAおきなわ(当時は沖縄県経済連)がブランド化に乗り出したのが、平成4年ごろ。
約10年の歳月をかけて、
アグー豚を父親に持つブランド豚「あぐ~」を確立し、
食卓にも上がる高級ブランド豚に育て上げたのだそうです。
生産部長の上門 勉(うえじょう・つとむ)さんと、
農場長の伊れい松秀(いれい・まつひで)さん※にお話を伺いました。
「アグー豚の特徴は、荒い黒毛で覆われていて、背中が弓状に曲がっていて、
お腹が地面につきそうな、独特の体型をしています。
肉質は、霜降り肉で、脂に甘みと旨みがあり、豚肉特有の臭みが少ないのが特徴ですね。
この形質をしっかりと受け継いでいるのが『あぐ~』。」
なぜ、貴重なんでしょうか?
「普通の豚と比べると、
大きさは半分くらいの小柄な豚で、
しかも、子豚のうまれる数が少なく、
食肉としても少ししか取れないからなんです。
これを洋系の母豚と掛け合わせることによって、
安定した出産頭数にしていますが、
やはりアグー豚の血を引く豚は、とても貴重なのです。」
「あぐ~」が、稀少かつ貴重で
高級な豚肉とされる理由に、
川瀬良子、思わずナットクです。
どんな風にして育てられているのか、今回、特別に見せて頂けるということで、
早速、豚舎にお邪魔しました。
豚は徹底した衛生管理のもとで肥育されているため、
関係者以外の立ち入りが厳しく制限されています。
これは貴重な経験です。
うわー!たくさんいます!
ひとつのサークル内に34頭と
決まっているそうで、
同じグループの豚は、皆、
同時にエサを食べていました。
豚は、一斉にエサを食べる習慣が
あるんだそうです。不思議ですね。
そして、とても人懐っこく、
豚舎に入るとすぐに
こちらに近寄ってきてくれる豚もいました。
どうやら人に興味津々のようです。
生後90日で、繁殖農場からこちらの肥育農場に移動してきた豚は、
まだ体重40kgほどの子豚。そこから数か月間、大事に育てられて、
110kgから115kgになったら出荷されるんだそうです。
日々の肥育において、豚舎に入って最初にすることは、
豚にストレスがかからないように、心地よい環境づくりに力を注ぐことだといいます。
夏は涼しく、冬は暖かく。
豚は人間と感覚が似ているので、
人が豚舎に入って心地良ければOKなんだそうです。
最後にこんなことを伺いました。
「あぐ~」の生産にかける“思い”や“誇り”に
ついて教えて下さい。
「この仕事はとても楽しいです。
楽しくないと良い仕事はできません。
毎日、“元気?”、“今日は大丈夫?”と
豚に話しかけているんですよ。」(伊れいさん)※
「この豚たちは、沖縄の宝!
いつも感謝の気持ちで接しています。」(上門さん)
アグー豚の復活を志した人々のたゆまぬ努力によってよみがえり、
沖縄の貴重なブランド豚肉として、ゆるぎない地位を築いたブランド豚「あぐ~」。
「沖縄の宝」は、畜産農家の方々の、真心と愛情でできていたんですね。
※伊れいの「れい」は「ネ豊」(しめすへんに豊)