今回の西日本豪雨におきまして、
被害に遭われた皆様に謹んでお見舞いを申し上げるとともに、
被災地、および、周辺地域の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。
川瀬良子・「あぐりずむ」番組スタッフ一同
水害を乗り越えて前に進む倉敷の農業。
取材のパート2は、岡山を代表するもうひとつの果物、ブドウ。「マスカット」です。
倉敷市船穂町。
低い山の傾斜地に石垣が組んであり、
そこに何棟ものハウスが並んでいる風景が印象的です。
日当たりの良い南向きの傾斜地と豊かな自然の恵み、
そして、生産者さんに代々受け継がれてきた技術で、
この地域では、古くからブドウとスィートピーの生産が盛んにおこなわれてきました。
そんな船穂町でブドウの生産を始めて9年、松井一智さんのブドウ農園を訪ねました。
今回の豪雨の影響は、
やはりブドウにも及んだといいます。
雨で土が水を含んだ状態になったことで、
ブドウが水を吸って実が割れてしまう現象が起き、
出荷できなくなったものもあったそうです。
松井さんに伺いました。
「災害があって、普段、
恵まれた環境にいることを改めて感じました。
その後、細心の注意を払ってブドウを管理、
順調に糖度を上げて、
今はどんどん出荷している最中です。」
管理がしやすいように、人の背丈に合わせて仕立てられたブドウの木には、
大粒で黄緑色の美しいブドウがたわわに実っていました。
松井さんが手掛けているのは、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」という品種。
この地域では130年の歴史があるブドウです。
昨今、栽培面積が増えてきた「シャインマスカット」の親にあたる
「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、
ワイン用としても生産され、タネがあり、香りが強いのが特徴。
ただ、作りやすい「シャインマスカット」に押され、
この地域では「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を生産する人が、
年々減ってきているのが現状です。
そんな中、松井さんが「マスカット・オブ・アレキサンドリア」にこだわっているのは、
地域の伝統ある品種を絶やしたくない、、、そんな思いがあるからなんだそうです。
「この地域でワイン用のブドウを作っているのは珍しいんです。
先輩たちから受け継いだ古い木はワイン用に適していて、
若い木は生食用に向いています。
生産をやめて行く人も多いですが、
自分にとっては、この地域の伝統を守れていることが
やりがいであり、誇りです。」
もともと、フランスでフランス料理の修業をしていた松井さん、
帰国後、故郷である船穂町が「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の産地だと知り、
いつか自分でもワインを作りたい、とこの地で就農。
農業の先輩たちからいろんなことを教わりながら栽培技術を習得し、
また、若手農業者として、先輩たちの力になることで、地域の農業を活気づけてきました。
「農業は地域の先輩ありきです。」
そう語る、松井さんの熱くて優しい眼差しがとても印象的でした。
「ブドウは皮が大事です。
皮と実の間に香りや旨味がつまっていて一番おいしいので、
食べる時は一粒丸ごと口に入れて、よく噛んで味を楽しんでもらいたいです。」
ブドウのおいしい食べ方を教えてくれた松井さん、
最後は、地元、倉敷への思いをこんな言葉に残してくれました。
「実りある年であるように願います。」
岡山県の農業は、これからも前進を続けます!