お米で“ニワトリのえさ”を作る 新たな技術
オンエアレポート
今回はこちらに注目します。2022.11.02
「お米で“ニワトリのえさ”を作る 新たな技術」
今回のイノベーターは、「JA全農」の江崎尚二さんです。
お米で“ニワトリのえさ”を作る。これはどういうことなのでしょうか?
「ニワトリの卵の生産に用いる配合飼料は
輸入トウモロコシなどの穀類が半分を占めているのですが、
JA全農では
この穀類を全てお米に置き換える技術の特許を2020年7月に出願し、
今年5月に取得しました」
ニワトリのえさの半分を“穀類”が占めているということですが、
こちらはどうしてなのでしょう?
「ニワトリは、配合飼料とお水だけで、毎日、卵を産むことができます。
様々な原料を組み合わせて、栄養成分を適正に管理したものが配合飼料です。
ニワトリは体内で卵を作って産むときに体力をたくさん使いますので、
配合飼料にはカロリーの高い穀類が多く配合されています。
人間のお弁当も半分くらいはご飯で穀類です。
ニワトリも人間と一緒で、健康な生活のためにカロリーが必要ということです」
ニワトリのえさの半分をお米にする。
こちらはどのような技術で実現したのでしょうか?
「配合飼料にお米を少し配合するだけであれば何も問題ないのですが、
半分を占める穀類を全てお米にした時には、
ニワトリが先に米粒だけを食べて、
おなか一杯になってしまって栄養のバランスが崩れるなど、
いろいろな問題が出てきました。
そのため、お米の粒そのままではなく、
ちょうどよい大きさに割るなどの工夫をすることで問題をクリアし、
穀類全てをお米にする技術を確立しました」
この技術、なんと、すでに実用化されていまして、
JA全農が東北地方の生産者の方と協力し、
このえさを実際にニワトリに与えて、卵を作っているということです。
この技術、
日本の農業にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか?
「お米を配合飼料の原料にする“飼料用米”の活用の幅を広げて、
お米全体の需要を高めることによって、
水田の維持とお米の価格安定に繋がると考えています」
「また、別の視点で見ると、
配合飼料の原料の大部分は輸入に頼っている状況ですので、
このような国産飼料原料の活用を広げていくことで、
飼料自給率の向上にも繋がると考えています」
国内の主食用米の消費が、年々、減る中、JA全農が生み出した、今回の新たな技術。
この技術を使って生産した卵が広く流通し、それによって、主食用米の需要が回復する。
そのようなサイクルが生み出されることを祈っています。