野菜に刺激を与えて活性化を促す物質『バイオスティミュラント』
オンエアレポート
今回、注目するのはこちらです。2024.08.22
「野菜に刺激を与えて活性化を促す物質『バイオスティミュラント』」
今回のイノベーターは、名古屋大学 生命農学研究科の竹本大吾教授です。
「バイオスティミュラント」とは何なのでしょうか?
「バイオ(Bio=生命)、スティミュラント(Stimulant=刺激)からの造語で、
生物に刺激を与えて活性化を促すような物質のことです」
「植物に使う『バイオスティミュラント』は、植物の生育を促進したり、
様々なストレスに対する耐性を高めたりすることができる物質のことを指します」
「農作物は適切な刺激を与えてあげれば、もっと力を発揮してくれるはずで、
その力を引き出すのがバイオスティミュラントです」
どのように使うのでしょうか?
「たとえば、水で薄めてスプレーでかけるといった使い方です」
なぜ、野菜の活性化を促すことができるのでしょう?
「植物は、細胞の表面に周りの状況を感知するセンサーをたくさん持っています。
例えば、植物が傷つくと植物細胞壁のかけらであるオリゴ糖が出てきますが、
植物はそのオリゴ糖をセンサーで認識して、『自分が傷ついている→修復する』という反応をします。
一方、病原菌であるカビ由来のオリゴ糖をかけると
『病原菌が攻撃している→免疫力を上げる』という反応を起こします」
「このような“危機を知らせる物質”を健康な植物にかけると、
植物の生育を促したり、前もって免疫力を高めて病気に対抗する力を活性化したりすることができます」
たとえば、どのような野菜で、どのような効果が確認されているのでしょうか?
「かなりたくさんの作物で効果が確認されています。
研究室で扱っているオリゴ糖を混合したバイオスティミュラントでは、
トマト、キュウリ、オクラなどで、生育(特に根の成長)の促進や病気に対する免疫力の向上などが確認できています」
「また、共同研究をしている企業の圃場試験では、
例えばイネ、ジャガイモ、タマネギ、ネギ、サツマイモ、ニンジンなどの生育を促進するという結果が得られています」
キュウリの病害抵抗性が向上
この「バイオスティミュラント」の研究は、どのようなきっかけで始めたのでしょう?
「私は、もともと植物とその病原菌の研究が専門です。
『病原菌に強い植物が、病原菌由来の物質をセンサーで認識して、免疫力をあげる遺伝子を活性化する』という
基礎研究をしていました」
「企業の方からご連絡があり、
『オリゴ糖を作物にかけると免疫力が上がっているみたいなので、そのメカニズムを調べてほしい』と
お声がけいただいて共同研究を始めたのがバイオスティミュラントの研究を始めたきっかけです」
「バイオスティミュラント」の今後については、どのようなことを考えていますか?
「バイオスティミュラントは、植物を守ったり与えたりするのではなく、
植物の持っている力を引き出すというアプローチです。
『植物を活性化する資材』という発想は古くからありましたが、まだまだ発展途上の分野です」
「植物は、まだ役割が解明されていないセンサーをたくさん持っています。
そのようなセンサーを刺激することで、植物が持っている意外な力を活性化できるかもしれません。
植物に働きかける物質(=バイオスティミュラント)の解明が進めば、
植物の様々な力を上手に引き出す農業技術にできると考えています」
竹本さんのお話を伺って、
「バイオスティミュラント」は農業の可能性を広げてくれるかもしれない物質だと感じました。
竹本さんの研究、これからも応援しています。