砂漠でも作物が育つ“次世代肥料”
オンエアレポート
今回は、こちらに注目します。2023.06.01
「砂漠でも作物が育つ“次世代肥料”」
今回のイノベーターは、「愛知製鋼」次世代あぐり開発室の鈴木基史さんです。
砂漠でも作物が育つ「次世代肥料」。こちらは、どのような肥料なのでしょうか?
「土の中の鉄を溶かして吸収しやすくする、植物が分泌する天然の鉄キレート物質『ムギネ酸』を改変した
『PDMA(プロリンデオキシムギネ酸)』という物質です。
愛知製鋼と徳島大学が共同開発し、もともと非常に高価な『ムギネ酸』を安価に合成できるようにしました」
「『ムギネ酸』は“ムギの根から分泌する酸”として50年前に発見されたのですが、
あまりにも高価で肥料として使えませんでした。
土の中の鉄を溶かして植物が吸収できるようにする特別な物質です」
「イネやトウモロコシのような穀物によく効きます。
全ての植物は鉄分を必要とするので、どのような植物にも鉄肥料としての効果が期待されます」
PDMA(プロリンデオキシムギネ酸)
愛知製鋼はどのような思いがあって、このような肥料を開発したのでしょうか?
「土の中には鉄分は豊富にあるのに、植物が吸収できずに育たない土地があると聞き、
鉄鋼会社として貢献できることを模索していました」
「日本人が50年前に発見した『ムギネ酸』をなんとか使って、砂漠の緑化に貢献したいと考えていたところ、
同じように考えていた徳島大学の難波康祐教授と出会い、共同で開発することができました」
愛知製鋼と石川県立大学の共同研究
この肥料を使うと、なぜ、砂漠でも作物が育つのでしょう?
「地球の土壌の約3分の1は土壌がアルカリ性で、鉄分が溶けにくい土地です。砂漠の土もアルカリ性です」
「土壌には、元々、豊富に鉄は含まれているのですが、
そのような土地では植物が鉄分を吸収できず、栄養不良になります。
水と肥料はもちろん必要ですが、それらがあっても鉄欠乏になってしまいます」
「PDMAを撒くと、土壌中の鉄分を植物が吸収できるようになるため、
砂漠のようなアルカリ土壌でも作物が育てられるようになります」
アルカリ性の土でPDMAを使用せずに育てたイネ(愛知製鋼と石川県立大学の共同研究)
実際に砂漠で、この肥料を使って、作物を栽培したことはあるんですか?
「実際の砂漠でPDMAを使用した作物栽培の実績はまだありませんが、
アルカリ性の土壌を使ったイネの栽培の実験を行いました」
「普通の鉄入りの肥料を使っても、ほとんど育たなかったのですが、
PDMAを1平方メートルあたり1.6グラム入れるだけで、通常の田んぼと同じくらい生育が改善しました」
アルカリ性の土でPDMAを使用して育てたイネ(愛知製鋼と石川県立大学の共同研究)
通常の肥料と同じように、植えた作物の周辺に散布すれば効果を発揮するという、この肥料。
2027年度の商品化を目指しているということです。
近い将来、世界的に食料不足になると言われる中、
この肥料は、食料不足を解決する救世主になるかもしれません。
鈴木さん、一日でも早く、商品化が実現すること、期待しています。