体に負担がかからない、大規模トマト工場
オンエアレポート
今回、注目するのはこちらです。2024.12.19
「体に負担がかからない、大規模トマト工場」
今回のイノベーターは、トマトを中心にアスパラやワイン用ブドウなどを生産販売している北海道の農業生産法人、
株式会社寅福の代表取締役社長、加藤夢人さんです。
この春、青森県むつ市に建設した「大規模なトマト工場」、こちらはどのような工場なのでしょう?
「大きなガラス温室でトマトの栽培をしております」
「工場の温度や湿度、CO2濃度などをトマトにとって最適な環境にコントロールすることができて、
トマトを育てるためのLEDライトを
トマトにとって最適な光にコントロールする設備が導入されています」
「体に負担がかからない」工場ということですが、こちらは、どういうことなのでしょう?
「例えば、トマトを収穫する際は常に自分の胸の高さくらいで収穫できるような仕組みになっていて、
従来の農業で腰を曲げて行うような作業がなく、老若男女が働きやすいことや、
収穫した重たいトマトの運搬は自動搬送ロボットが運んでくれて、
さらにパッキングした商品についてもパレット積みをする作業などはロボットが積み込んでくれています」
「こういった重労働を機械化することで、体に負担がかからない工場になっています」
どのような方法で、トマトを栽培しているのでしょうか?
「『養液栽培』と呼ばれる方法で栽培しております。
土は使わず、土の代わりにココヤシのチップにしたものを土の代わりに培地として使用しており、
トマトの健康状態を科学的に判断しながら肥料や水やり、そして温度、湿度、CO2の濃度などコントロールしながら、
トマトにとって最適な環境を作ることで、通常の農家さんの7倍以上、トマトを生産しています。
「大規模」ということですが、どのぐらいの数のトマトを栽培しているのでしょうか?
「トマトの苗が約12万本植えられていて、年間約1500トンのトマトを生産する農場になります。
青森県全体のトマト生産の約10%の生産規模となります」
どのような思いがあって、こちらの工場を作ったのでしょうか?
「きっかけは、青森県むつ市にあった東北最大の『アツギ東北』というストッキングの会社の事業撤退です」
「これによって、むつ市内で約500人が雇用喪失という地域の大きな課題が生じていたのですが、
当時、むつ市長でいらっしゃった宮下さん(現在の青森県知事)が、むつ市へ企業誘致しており、
ご縁があって、むつ市に進出することになりました」
「私自身、地方の出身で地方の過疎化は大きな社会問題にもなっており、
その根底には若い人が働く場所がないというのを強く感じており、地方だからこそできるのが農業だと思っています」
「また、この農業というフィールドを利用して、地域に価値ある農業を実現して、地域課題の解決、
我々のお客様であるマーケットの課題解決、そして社会の課題であるカーボンニュートラルの実現など、
実現可能なポテンシャルがある、むつ市は非常に魅力的な市で、
これから、この事業を通じて、農業界から持続可能な農業の新しいカタチを発信できればという思いを持って、
工場の建設に至りました」
こちらの工場で、今後、どのようなことをしていきたいと考えていますか?
「私は、農業の本質は『エネルギーの変換事業』と考えています」
「我々は野菜を作るスペシャリストですが、その生産にはたくさんのエネルギーが使われます。
このエネルギーを最適化するためには自分たちだけではなく異業種(エネルギー会社)とのコラボレーションが
次なるイノベーションのカギだと確信しております」
「現在、北海道で業種や業態を飛び越えてエネルギーの会社と共同事業で新しく事業を進めており、
地域にとって持続可能な新しい農業を展開していく予定です」
今回の取材では「農業というフィールドを利用して、地域の課題を解決する」というお話が特に印象に残りました。
同じような取り組みが他の地域でも行われることを期待しています。