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Dream HEART vol.594 京都芸術大学客員教授 本間正人さん 著書『100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門』

2024年08月17日

今週ゲストにお迎えしたのは、京都芸術大学で客員教授を務められている、本間正人さんです。

本間さんは、1959年、東京都のお生まれ。

東京大学文学部社会学科をご卒業後、松下政経塾(3期生)を経て、ミネソタ大学大学院を修了。

「教育学」を超える「学習学」の提唱者で、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師として、アクティブ・ラーニングを30年以上、コーチングを25年以上実践し、「研修講師塾」「調和塾」を主宰。

現在は、京都芸術大学で客員教授、NPO学習学協会代表理事などを務めていらっしゃいます。


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──「最終学歴」ではなく「最新学習歴」

茂木:本間先生が今回書かれました『100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門』に、色々衝撃的なことが書かれているんですが、まず、よく皆が言う「最終学歴」についてちょっと教えて頂けますか。

本間:履歴書に『最終学歴』と書くことがあるんですけれども、でもそれは人生の中で見たら本当に一部に過ぎないわけですよ。例えば、「大学院の博士課程を出た」と言っても一番若くして27歳じゃないですか。人生100年だと、その4分の1ということですよね。
『人生100年』と言ってもなかなか皆ピンとこないので、1日24時間に換算し直すと、お昼の12時が50歳です。25歳は朝の6時ということですよね。僕は「学び」というものと「食事」というものは近いと思っているんですけれども、そうすると、夜明け前に朝ご飯を食べて、その後お昼も食べない、おやつも食べない、晩ご飯も食べない、夜食も食べないでいたら、どこかでお腹がすいてガス欠になるだろう、と。
だから栄養補給をし続けるというような意味でも、人生100年ちゃんと学び続ける、頭と心の栄養を取り続ける、ということが大事だと僕は思っています。

茂木:そして本間先生は、「最終学歴」に対して「最新学習歴」が大事だとおっしゃっていますが、これはどういうことでしょう?

本間:「最終」というのはどこかに学び終わりがあるという話ですよね。でも、学び終わりなんてあっちゃいけないと思うんですよ。だって、社会はこれだけ劇的に変化し続けてるわけだし。
例えば、社会人として、仕事人として生きていくためにも、劇的な環境の変化に対応し続けていかなきゃいけない。「学び続けなきゃいけないんですか!?」と言う人は、申し訳ないけれども、これまでのあまり面白くない学校教育の被害者と言うか…。「『学び』というのはつらく悲しく苦しいことだ」という固定観念を植え付けられてきた人にとっては、「学ぶ」というのは、「学校で教わることだ」、「あんまり面白くないものだ」というイメージが強い。でも、例えば茂木さんが「アオスジアゲハが可愛いな」とか、蝶々について研究するのは楽しいことじゃないですか。それは努力しなくてもどんどん新しい知識を得られるし、世界が広がっていくし、教養というのはやっぱり心の広さだと僕は思うんだけれども、そういうものを身につけていくということが、一生を通じて行われる。
「学歴」というのは最後にどこの学校を卒業したという他者からの評価のことなんだけれども、「学習歴」というのは、自分の成長、自分の心の豊かさとか人間性が進化していくこと。そういうことを「学習歴」と僕は呼んでいるわけです。

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茂木:なるほど。
この本の中で、「そもそも今まで『教わる』という発想だったのが良くなかったんだ」と先生はお書きになられていますが、これはどういうことなんでしょうか?

本間:「教わる」というのが好きな人もいるし、当然役に立つこともあるんですよ。でもそれイコール「学び」じゃないよ、と。
人間には学ぶ本能が付いている、ぐらいに思っていて。小さな赤ちゃんは誰に教わったわけじゃないけれども、物を触ろうとし、あるいは口に入れて味わおうとし。そういうことというのは、本能の一部として、環境を認知しようという人間のドライブがあるんですよね。でも「教わる」ということに慣れると、「危ないからそんなもんに触っちゃ駄目」と言って、その意欲的な学習行動、本能的な学習行動の発露みたいなものがブレーキをかけられる。それはすごくもったいないことだなと思っています。「勉強はやらされるものだ」、英語で言うと『teachee』になっちゃうんですね。

茂木:『teachee』は「教えを受けている人」、みたいな。

本間:そうなんです。雇われている人が『enployee』、面接を受ける人が『intaviewee』、教わる人は『teachee』になっちゃう。本来人間は、全ての人が生まれてから死ぬまで「アクティブ・ラーナー」…自ら能動的に学ぶ人だったのに、教わる人になっちゃうと、学習意欲が下がっていく。
今世の中で不登校と言われているのは、学校にそういう古いパターンのパラダイムが残ってるから、そこに不適合を起こす人が増えているという、そういう現象なんじゃないかなと僕は思っています。

茂木:先生、今回出されましたご著書『100年学習時代』では、エピローグの中での最終的に目指す未来像がすごい言葉ですね。「学習する地球社会を目指して」。これは壮大な構想だと思うんですけど、どういうことを目指されているんですか?

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本間:普通「学習」というと「個人が学ぶもの」ということなんですけれども、1980年代にピーター・センゲというMITの先生が、「学習する組織」…「ラーニング・オーガニゼーション」というものを提案したんですね。そうやって、個人以外のものを学ぶ…チームも学べば、コミュニティ も学べば、社会も学ぶ。
でも、人類全体として学習する地球社会というものを作っていき、そして自然から学び、歴史から学び、文化の多様性から学び合う、そういう人間感、歴史感に立つと、もっと平和な社会が訪れるのではないか、というのが僕のビジョンです。

茂木:本間先生の今回の本は、これから色々学んでいこうという方にとっては、具体的なヒントなどことも教えてくださると思うんですけど、それから、「そもそも人間というのは学習する存在である」、「ホモ・ディスケンスである」と。

本間:ラテン語でそう言うんだそうです。

茂木:我々はホモ・ディスケンスだったんですね。

本間:そうです。

茂木:そういう非常に深い哲学も教えてくださっています。
先生、まだ読んでいらっしゃらない方もいらっしゃると思うので、これからこの先生の『100年学習時代』を読むという方に、是非メッセージを頂けますか。

本間:はい。今お仕事をされている、家庭生活を送られている方で、「もっと自分が良くなりたい」、「もっと自分の可能性を発揮したい」という時に、どこから手をつけたらいいか分からないというケースがあるんじゃないかな。そういう意味では、第一歩を踏み出すためのヒントが満載です。
そして、学校教育の呪縛の一つは、「失敗してはいけない」。その呪縛が大きいんですね。でもね、「失敗」という言葉はやめようよ、と。チャレンジすることが大事で、でもある時点でまだ成功とは言えない時に、それは「未成功」と呼ぼう。その方が気持ちが明るくなりますからね。
そして、同じ未成功、同じ未成功、同じ未成功…というのはやっぱり工夫がないので、ちょっとやり方を変えてみて、アレンジをしてみて、他の人の力を借りてみて、質の高い未成功を積み上げていくことが成功への道だ。それは、その自分の学習でも、仕事でも、家庭生活でも、人間関係でも、全てに当てはまる原理・原則だと僕は思っています。

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本間正人 ((@learnologist) / X(旧Twitter)公式アカウント


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