2017.02.18 Sat
職人が手業を尽くす家具。松岡茂樹
今回ご紹介するのは、木製家具工房の直営店、KOMA shop。若手だけでやっている小さな工房です。その魅力とは? 代表取締役で家具職人、親方の松岡茂樹さんに話を伺いました。
小宮山雄飛さんのリポートです!
■お客さんに向けて物づくりをしたいんです。
KOMAの家具の特徴は?
松岡茂樹さん
「ひと言で言うと、職人が手業を尽くす家具。一点物ではないのですが、量産品とハンドメイドの一点物の中間です。一点物だから値段が高いというのは、作り手のエゴがかかっているような気がして。あくまで、お客さんに向けて物づくりをしたいんです。一点物はクオリティが高いんですが、効率が悪くて値段が高くなる。一点物と同じクオリティで作れるだけ数を作っています」
14年前にKOMAを設立した松岡さんは、まだ30代。趣味はサーフィン、スノボー、スケボー、オートバイ。
松岡茂樹さん
「元々は超職人ですが、親方感やこだわりが強すぎると、若い子が付いてこれないんですよ。夢を持ってうちに来てくれる若い子をつぶしちゃう。そこらへんのさじ加減が難しい。今日も午前中にサーフィンをしながら、ボーッと反省してました……」
KOMAの家具は、デザイナーズ家具業界で注目を集めているのはもちろん、林野庁が一昨年からはじめた〈ウッドデザイン賞〉というアワードでも、2年連続で奨励賞を受賞するなど、目覚ましい活躍を見せています。
オススメの家具は何でしょうか?
松岡茂樹さん
「椅子。一番力を入れています。作っていて楽しいから。椅子は人の体が触れる面積が広いので、座り心地はすごくシビア。デザインだけではなく、理にかなうかどうか? 理をどうやって求めていくか。どこまで行っても終わりがなく、進化していく。椅子は挑戦し甲斐があります」
■大手メーカーとは別物。
KOMAの家具の魅力は?
松岡茂樹さん
「大手メーカーとは別物。IKEAやニトリなど、あれだけのクオリティの物をあの値段で出すことは、逆立ちしてもできないです。マネできない部分がたくさんあります。うちは手作りで製品にしていますが、職人やアーティストが一点物で作っているわけではなく、数は少ないけれども製品にしてひとつひとつ世に出しているところが魅力です」
家具を長く使うことの良さはありますか?
松岡茂樹さん
「無垢の材料を使っていても、量産品は〈経年劣化〉しますが、うちは〈経年優化〉。使っていく中で、家族の誰かが傷付けたひとつひとつが思い出になるような仕上がり。傷が傷にならず、味になっていきます」
■家具屋だったら、俺は世界一になれると思ったんです。
家具づくりを始めたきっかけは何ですか?
松岡茂樹さん
「学校へ行きながら建築やインテリアを最初はやっていたんですが、どうやって成りあがるかがわからなかったんです。最初は、クライアントがいて、自分が好きな物を作れるようになるまでの道筋が見えなかった。でも、自分で独立して工房を持てば、好きな作品を作って世に出せる。家具屋だったら、俺は世界一になれると思ったんです。本気でやるなら、絶対に負けたくないんですよ。歴史上、誰にも負けたくない(笑)
22歳でKOMAを始めて、今は日本一と言ってもらえるようになりました。何が日本一なのかわからないし、日本一になった感覚などないんですが、あの時に目指した自分にはなれた。次は、世界一。世界一になったら、歴史の中でも一番になりたい。『KOMAという会社がマジやばい』という所まで行きたい。今はまだ、納得していません。20点です」
■線を一本引くことから、やり直しています。
松岡茂樹さんが考えているこれからのワクワク、教えてください!
松岡茂樹さん
「スノーボードやサーフィン、スケボーなどの趣味がありますが、何が一番熱くなるかって、家具を作ること。一番モテる職業って家具職業だよ、って。男が汗をかく肉体労働感もあるし、デザインするクリエイティブ感もある。いろんな意味で、仕事が凝縮されているのが家具職人。
家具を作るのがうまくなりたくて、毎日考えています。頂上を高くするには、裾野をどんだけ広げられるか。まっすぐの線を、フリーハンドで何万本と引く。線を一本引くのがうまくなったら、家具の図面を引く線が変わってくる。家具の図面が変わったら、家具が変わる。線を一本引くことから、やり直しています。今日より明日、来年、十年後……毎日生まれ変わっていくつもりでやっていける仕事だから、いつもワクワクしてやっています」
koma-shop.jp/
〈本日のオンエア曲〉
In Your Arms / NERVO
Unbound / Ásgeir