2024.05.14
『かくれフードロス』をなくす
ONE MORNING「 The Starters 」
火曜日のこの時間は社会に風穴を開けようと取り組む若き起業家をお迎えして
そのアイデアの根っこにあるものや未来へ向けたビジョンを伺います。
今週と来週のゲストはASTRA FOOD PLAN株式会社 代表取締役の加納 千裕さんです。
加納千裕さんは埼玉県のご出身。ご両親の影響で食に興味を持ち、これまで一貫して食に関わるお仕事でキャリアを積まれ、2020年にお父様の開発した技術を引き継いで、「アストラ フード プラン」を創業されています。
ASTRA FOOD PLANは、いわゆるフードテックアドベンチャーと呼ばれるスタートアップ企業です。どういうサービスを展開してるんでしょうか?
「私達は『過熱蒸煎機』という名前をつけた食品の乾燥装置を開発致しまして、食品の風味とか劣化を抑えてあっという間に乾燥できるという機械を使って、かくれフードロスの解決など様々な社会課題の解決に取り組んでいる会社になります。」
風味や劣化、酸化を抑えて、栄養価的なものも残るんですか?
「そうですね、皆さんがご存知の普通の乾燥機というとフリーズドライとか、熱風乾燥機をご存知だと思うんですけれども、実は乾燥に24時間、時間がかかるんですね。ところが私達が開発した装置では5秒から10秒という非常に短い時間で乾燥ができちゃうんです。非常に風味が良いのが特徴になっております。」
ドライフルーツなどをこういったもので作るんですか?
「ドライフルーツはフリーズドライの装置で、すごく時間をかけてすごく高品質に乾燥されている乾燥物になるんですけれども、当然時間がかかるってことはエネルギーコストがとても高いということですよね。なのでドライフルーツってちょっと高いと思うんですけど、実は過熱蒸煎機が対象にしている食材が異なりまして、ドライフルーツなどはフリーズドライで美味しくできて食品としていいんですけれども、私達が対象にしているのは食品残渣であったりとか、規格外の作物とかはい、これまで無駄になっていた食材をコストをかけずに、大量に、しかも栄養を残して美味しくできる、そういったパウダーを作っております。」
5秒から10秒とおっしゃっていましたが、なぜそんなに短くできるんですか?
「400℃ぐらいの高温のスチーム、加熱水蒸気という技術ですね、これが父が開発してきたものなんですけれども、これを使うことであっという間に乾燥できちゃうんです。400度で乾燥させるので、しっかり殺菌もできるというのが特徴になっていまして、100℃を超えた400℃ぐらいの水蒸気はもう乾いた雰囲気になっていますので、実は乾燥がに使えるという新技術になっています。」
具体的にはどういったものを加工しているんですか?
「私達が対象にしているのは『かくれフードロス』、私が名前を名付けたんですけれども、皆さんが知っている普通のフードロスはお弁当とかお惣菜など、製品になった後に売れ残ったり、食べ残されたりするものを指していまして、年間500万tぐらいある。これでもすごく多いんですが、かくれフードロス、実は年間2000万t以上あると言われていまして、お弁当やお惣菜になる前に中に入っているお野菜を下処理すると、芯とか皮とかもいたりしますよね。飲料を飲めば、その飲料の残渣ですね。麦茶絞ったり、ビールの搾りかすとか、こういったものが皆さん知られていないんですけれども、普通の製品のロスよりも非常に多いんですね。ASTRA FOOD PLANはこれを粉末化して再利用するということを行っています。野菜類ですとか、何でも乾燥ができる機会になっていますが、栄養も残して美味しいものになるので、アップサイクルという言葉を使っているんですが、堆肥とか肥料にしてしまうと価値が下がってしまいますけれども、食品で美味しいものになるということでより価値が高いものに生まれ変わらせるものになります。」
手元に小瓶に入ったパウダーのようなものが今あるんですが、これは何ですか?
「こちらはですね、弊社の装置が導入されている牛丼チェーンの吉野家さん、実は玉ねぎのロスが大量に出ておりまして、工場で下処理をしてるんですけれども、年間250t、捨てられているという、芯をくり抜いて、表面の緑色の硬いところを取り除いてスライサーにかけると、長さ6cm、幅2cmという規格が決まっていまして、それ以外の大きさのものとその芯の部分とかが全部捨てられてしまっていて、それを過熱蒸煎機を使って乾燥したものになります。市販のオニオンパウダーは熱風乾燥で作られているんですが、それに比べて135倍の香りの強さがあり、このパウダーになったもの、これをですねパンに練り込むと非常に美味しいパンになります。既にポンパドウルさんでは、オニオンブレッドとして販売されておりますし、この5月1日からは、考えた人すごいわというちょっと変わった高級食パン屋さんでもオニオンスープブレッドという名前で販売されております。」
玉ねぎだけではなく、キャベツパウダー、あと人参パウダー、お米などもできるんですね。
「米ぬかですとか、実はお米を精米すると米ぬかが出てきますけれども、これもサプリメントに変えることができたりですとか、あらゆることにこの装置は利用できることができます。」
こういったものでパウダー氏にしたものを別の企業がまた買い取るっていうことなんですかね?
「そうですね、パウダーにする利点としては、残渣そのままにしておくとあっという間に腐ってしまって捨てるしかなくなりますけれども、乾燥すれば1年常温で保存ができますし、栄養・美味しさも残っていますから売りものに変えるということができて、お金をかけて山に捨てていたものが新しい価値を生むものに生まれ変わります。」
埼玉県とも連携した取り組みも行われているんですよね。
「かくれフードロスのうち、今お話したのは食品工場で出てくるロスの話でしたが、生産者さんのところでも規格外の作物とかたくさん捨てられているものがあります。これをアップサイクルするには地域の方々との協力というのが非常に重要になってきますので、産官学連携という形で埼玉県の方からサーキュラーエコノミー補助金というものをいただいてですね、大学生を巻き込んで一緒に商品開発をして、地元の野菜のロスになってるものを学校給食に入れたりですとか、地域のお店でメニューに使っていただいたりそんな取り組みをしました。」
実際興味を持ってくれている企業というのは増えていますか?
「農家さんもそうですし、食品企業両方増えています。今まで何かを捨ててしまうことは悪いこと、隠したいということでしたけれども、それをアップサイクルするということは企業イメージアップに繋がりますので、皆さん進んでどんどんチャレンジしたい、そんな世界になってきています。」
最後にこれまで乗り越えてきたハードルを教えてください。
「誰もやったことがないことを事業化するというのはすごく大変でして、資金の面とか人材いろんなハードルがありました。ですがちょうど集まってきましたので、これから仲間と一緒にいろんなハードルを乗り越えていきたいと思っています。」
ASTRA FOOD PLAN株式会社の加納千裕さんでした。ありがとうございました。