ON AIR REPORT オンエアレポート

12月2日 12月生まれの作曲家:ベートーヴェン!

12/12/30


12月第1週は、今月16日生まれのルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)を久々に特集しました。

1曲目にご紹介した悲愴ソナタは、ベートーヴェンの20代後半の作品。この頃は、聴覚障がいの自覚、それが治らないかもしれないという絶望・・・こうした悲劇的な思いがこの作品に反映されています。第1楽章は強烈な響きから始まるのですが、お聴き頂いた第2楽章はゆったりした音楽です。このよう構成は従来のピアノソナタからすると掟破りなんですね。

2曲目は月光ソナタ。このタイトルはベートーヴェン自身がつけたものではありませんが、この曲の雰囲気をぴったり表しているように思います。静かに始まり静かに終わる第1楽章。これも、それまでのピアノソナタの常識ではあり得なかったものです。もともとベートーヴェン自身は、この作品には「幻想曲風ソナタ」というタイトルを付けています。当時、幻想曲(ファンタジー)とは即興演奏のようなイメージで書かれる作品が多かったわけですが、ベートーヴェンの表現は、緻密に組み立てられる従来のソナタの枠組みに収まらなくなっていたのかもしれません。

3曲目の熱情ソナタでは、音楽のスケールがぐんと広がります。ちょうどこの頃、ベートーヴェンの支援者であるワルトシュタイン伯爵からフランスのエラール社のピアノが贈られています。ピアノという楽器がどんどん進化を遂げていた時代ですが、ベートーヴェンの表現したい音楽と、それをかなえるだけの能力を備えたピアノの製造とが相まって、ピアノの性能、可能性を広げていったともいえるでしょう

こうして代表的なピアノソナタを見てくると、それまでのピアノソナタの常識からすると型破りに思える作風が多く見られますが、それはただ自分が書きたいものを書いた結果、といえるかもしれません。革新的で想像力豊かな人であったため、どんどん新しいものが湧き出て来てしまう、という感じなのかなと思います。また、ベートーヴェンの音楽は、一つ一つの音に強い意志が込められていて、強いメッセージ性のある音楽です。演奏する側は、その独特の緊張感やエネルギーに押しつぶされないようにする必要がある。そうでないと、ベートーヴェンの本来の魅力も引き出せないのではと思います。


【オンエア楽曲】
♪M1 ベートーヴェン《ピアノソナタ第8番「悲愴」》より第2楽章
♪M2 ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番「月光」》より第1楽章
♪M3 ベートーヴェン《ピアノソナタ第23番「熱情」》より第1楽章
  ピアノ:横山幸雄(2000年『ベートーヴェン12会』より)