ON AIR REPORT オンエアレポート

3月11日 ミサ曲

12/03/13


2012年3月11日、未曾有の大震災からちょうど1年がたちました。復興へ向けてやるべき事は、まだまだたくさん私たちに残されているように思います。僕自身、一人の音楽家として何ができるのか、日々考えながら音楽と向き合ってきました。音楽の力を通してより多くの人が少しでも幸せを感じてもらえればと願いながら今後も演奏を続けて行きたいと思います。今夜は、改めて、震災の犠牲になられた方々への哀悼の意と、一日でも早い復興を願い、「ミサ曲」をご紹介しました。

1曲目にご紹介したのは、バッハの《ロ短調ミサ曲》。バッハといえば、バロック期最後の音楽家で、中世以後の多声音楽を総合、総括した作曲家です。この作品は30代後半に作曲されたものを部分的に含みますが、最終的に完成されたのは亡くなる1年前の1749年。バッハが生前、最後に完成させた作品と言われる。バッハの集大成ともいえる作品です。僕はこの作品は中学生くらいのときに何度も聴いた作品で、いわゆる学習曲とは異なる深淵な世界に魅力されました。

続いて、モーツァルトの《大ミサ曲》より冒頭の<キリエ>をお送りしました。モーツァルトの宗教音楽では、レクイエムに次いで有名な曲ではないでしょうか。1783年、モーツァルト27歳の頃の作品でザルツブルクの聖ペトロ教会で初演されました。しかしこの作品、結局未完成に終わり、クレドは途中まで、アニュス・デイは作られませでした。陰鬱な雰囲気で始まりますが、次第に明るくモーツァルトらしい朗らかさも聴こえてきます。またバッハの終始厳格な曲調とは異なり、同じ典礼文を用いたミサ曲といっても、作曲家による違いが聴き所でもありますね。

そして次にご紹介したのは、ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)》。1823年に完成された晩年の大曲です。ちょうど同じ時期に第9交響曲が書かれています。ベートーヴェンは壮年期に《ミサ曲ハ長調》を伝統的な教会音楽の形式に則って書いていますが、本作では形式の自由度も増し、実際のミサ式典のためではなく、一般の演奏会で取り上げられる機会が多い作品です。終曲 の<アニュス・デイ>では「内と外の平和を願って」とベートーヴェン自身による指示が書き込まれています。自らの人生、葛藤の多かったベートーヴェン自身の平和と、世の中の平安を祈って書かれたのかもしれません。そして、最後に僕の最も好きな作品の一つである、フォーレの《レクイエム》をお聴き頂きました。

今夜は、改めて、震災の犠牲になられた方々への哀悼の意と、一日でも早い復興を願い「ミサ曲」をご紹介しましたが、音楽を通して、一人一人が少しでも気持ちが安らぎ、幸せを感じてもらえればと願っております。また僕自身も、一音楽家として自分にできることを常に最善をつくしてやっていきたいと思います。

【オンエア楽曲】
♪M1 バッハ《ミサ曲ロ短調》より<ドナ・ノビス・パーチェム>
 指揮:グスタフ・レオンハルト、オランダ・コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団、
 ラ・プティット・バンド
♪M2 モーツァルト《大ミサ曲》より<キリエ>、
 指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー、イギリス・バロック管弦楽団、
 モンテヴェルディ合唱団
♪M3 ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》より<アニュス・デイ>
 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、
 ウィーン楽友協会合唱団、ソプラノ:レラ・クーベッリ
♪M4 フォーレ《レクイエム》より<リベラ・メ>
 指揮:アンドレ・クリュイタンス、パリ音楽院管弦楽団、
 バリトン:ディートリッヒ・フィッシャーディスカウ

【横山幸雄の今後の予定】
★どりーむコンサート〜シンフォニーの祭典
日時:3月20日(火・祝日)、午後2時〜4時
場所:府中の森芸術劇場
共演:指揮、大友直人/日本フィルハーモニー交響楽団
曲目:ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番
♪ぜひ足をお運び頂ければと思います♪