ON AIR REPORT オンエアレポート

1月29日 モーツァルト特集②

12/02/19


1月最終週は、引き続き1月27日生まれの大作曲家、モーツァルト特集②ということで、ウィーンを中心に活躍した人生後半と、晩年の傑作をご紹介しました。

モーツァルトは、25歳頃からウィーンに定住するようになります。オペラの作曲やレッスン、楽譜の出版などで生計を立てていましたが、加えて自らの演奏会も頻繁に行うなど過密スケジュールの生活を送るようになります。そしてこの頃から自身が主催する演奏会用に、ピアノ協奏曲を連続して作曲しています。とりわけ28歳から30歳頃まではピアノ協奏曲第14番から25番までが、凄い勢いで書かれています。1曲目にご紹介したのは、ちょうどこの頃に書かれた《ピアノ協奏曲第20番》。モーツァルトの数あるピアノ協奏曲の中でも高い人気を誇る一曲です。

その後も、《ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」》、《ドン・ジョバンニ》など精力的に作曲活動を展開し、代表作のオペラ《フィガロの結婚》《魔笛》など大成功を収めたものの、晩年は徐々に人気に陰りがさし、借金がかさむなど、生活も苦しくなっていったモーツァルト。一説には、経済観念が希薄で収入以上に様々な経費がかさんだ、妻のコンスタンツェも浪費家であった、等言われています。そして、1781年、35歳で《ピアノ協奏曲第27番》を仕上げたのち、《レクイエム》作曲途中、筆半ばにして亡くなります。2曲目は、その最後のピアノ協奏曲より第3楽章をご紹介しました。最後とは感じさせない軽さと明るさをもった作品だと思います。特に第3楽章=フィナーレは、通常の早いテンポと比べ、比較的ゆったりした明朗な音楽です。曲調に深刻さはないものの、一歩一歩天国に近付いていくような、もしかしたらモーツァルト自身も死が近付いていることを感じていたのでは?と感じさせる作品です。

モーツァルトの活躍した古典派の時代は、ピアノがまだ未完成で、ダイナミックな表現やデリケートな表現も現代ピアノに比べると難しく、作曲上も、枠組みがしっかりしていて、例えばテンポ一つとっても、同じ楽章の間で大きく変化することはほとんどありません。それがベートーヴェンを経てロマン派に入ると、ドラマティックな表現やテンポの揺れも多くなっていきます。僕自身はモーツァルトを弾く機会はそれほど多くありませんが、より表現力が豊かになった現代ピアノで弾くと、ちょっとモーツァルトにしてはドラマティック過ぎるかな、と思ったり、逆に枠や抑制を重視するとモーツァルトの音楽がもつ生き生きとした新鮮さや即興的な要素が減ってしまったり・・・常にバランスを考えながら演奏するように心がけています。


【オンエア楽曲】
♪M1 モーツァルト 《ピアノ協奏曲 第20番 K.466》より第2楽章
 /ピアノ&指揮:ウラディーミル・アシュケナージ、フィルハーモニア管弦楽団
♪M2 モーツァルト 《ピアノ協奏曲 第27番 K.595》より第3楽章
 /ピアノ&指揮:マレイ・ペライア、ヨーロッパ管弦楽団