ON AIR REPORT オンエアレポート

11月27日 ジョアキーノ・ロッシーニ

11/12/12


11月最終週は、イタリアの作曲家、ジョアキーノ・ロッシーニ(1792〜1868)をご紹介しました。ロッシーニといえば、<セビリアの理髪師>や<ウィリアム・テル>などのオペラ作曲家として大変有名ですね。彼の作品は、当時の大衆だけでなく、ベートーヴェンやワーグナー、そしてショパンやリストなど、同時代の作曲家にも非常に人気があり、多大な影響を与えたと言われています

ロッシーニは18歳でデビュー後、20歳前半にして一流の作曲家として認められていたそうです。生涯で39のオペラを書きましたが、いずれも大ヒットしオペラ作曲家として不動の地位を築きました。しかし37歳の時に発表した《ウィリアム・テル》を最後に、いわゆる公の音楽界からは引退してしまうんです。その後はグルメとして高級料理店を経営したり、養豚業を始めたりと・・・食の道へと完全に方向転換しました。一説によると、自分のオペラの初演中に、突如いいレシピが思い浮かんだため、演奏会の途中で自宅に帰ってしまったというエピソードもあるようです。食への強い探究心が伺えますね。ロッシーニにとって、音楽と料理にかける想いは半々だったのかもしれませんね。とにかく大変ユニークな作曲であることは間違いありません。オペラ作曲家として一世を風靡したロッシーニですが、ピアニストの立場からすると、決して演奏される機会の多い作曲家ではありません。ただロッシーニのオペラは、ショパンをはじめ、同時代の作曲家のインスピレーションを刺激し、またピアノという楽器で歌のような表現をするのに大変重要なヒントとなったようです。

1曲目にご紹介したのは、ロッシーニの代表作《ウィリアム・テル》序曲より<スイス軍の行進>。
舞台はオーストリアの圧制下にあるスイス、自由と独立を求めるウィリアム・テルとその仲間達の活躍の話です。なんといっても、自分の息子の頭上に乗せられたリンゴを打ち抜くウィリアム・テルの苦渋の決断シーンが有名ですね。見所、聴き所満載のドラマとなっています。2曲目、3曲目は《セビリアの理髪師》より<今の声は心に響く>そして<あなたに平安と喜びがありますように>をお聴き頂きました。ロッシーニのオペラはとりわけ序曲が大変有名な場合が多いのですが、僕はたまたまこの<今の声は心に響く>は歌の伴奏で演奏したことが何度かある作品です。ヴェルディやプッチーニのような、ドラマティックなアリアに比べると、ロッシーニの音楽は、誰もが馴染みやすく、また共感しやすい音楽のような気がします。また、ロッシーニの音楽は明るく楽しい曲が多いので、少し気分を楽しくしたいときなどに聴いてみるのも良いのではないでしょうか?

【オンエア楽曲】
♪M1 歌劇《ウィリアム・テル》序曲より<スイス軍の行進>
 /指揮:アルフレッド・ショルツ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

♪M2 歌劇《セビリアの理髪師》より<ロッジーナのカヴァティーナ「今の声は心に響く」>
♪M3 歌劇《セビリアの理髪師》より<二重唱「あなたに平安と喜びがありますように」>
 /指揮:ヴィル・ハンブルク/ハンガリー放送合唱団/ファイローニ室内管弦楽団