ON AIR REPORT オンエアレポート

8月7日 チャイコフスキー特集①

11/08/08


今夜はピョートル・チャイコフスキーの人生と音楽をご紹介しました。

1曲目にご紹介したのは、《序曲「1812年」》。チャイコフスキー(1840年〜1893年)40歳頃の作品です。この曲は、終盤に「大砲」が出てくる(楽譜に「大砲で」と指示がある)ことでも広く知られています。タイトルにある1812年とは、チャイコフスキーの祖国ロシア帝国に、ナポレオン率いる同盟軍が侵略してきた年なんですね。当初、フランス軍が優勢でしたが、すぐにロシア軍が反撃し、結局フランス軍は敗北を喫することになります。終盤に登場する大砲は、こういった戦争をイメージして使われたと考えられていますが、実際の演奏では、大砲部分は大太鼓で代用されたり、シンセサイザーを使ったりすることが多いようです。

さて今夜取り上げたチャイコフスキーは、ロシアを代表する作曲家です。幼少より音楽的才能を示しましたが、父親の意向で最初は法学の道に進みました。しかし、音楽に対する情熱を忘れられず21歳にして初めて正式に音楽の勉強を開始します。音楽の場合、どうしても早期教育が大切になりますから、チャイコフスキーのような経歴は珍しいですね。ただ幼い頃から専門教育を受けてきた、いわゆるアカデミックなタイプの作曲家にはないような発想があるように思います。実は僕自身、子どもの頃から好きな作曲家を挙げると、ベートーヴェン、チャイコフスキー、ショパンなんです。チャイコフスキーの作品はロマンティックな要素がとても好きで学生時代たくさん聴きました。今夜2曲目にご紹介した《ロメオとジュリエット》を含め、チャイコフスキーはオーケストラの作品が多いので、それをピアノで自由にアレンジして弾いてみたりと、本当に身近な存在でした。

最後にご紹介したのは、《ピアノ協奏曲第1番》。極めて人気が高い一曲で僕自身もよく弾いている作品です。一説によると、この曲の楽譜を最初に見せたニコライ・ルービンシュタインというピアニストに「まったく無価値で、訂正不可能なほど拙劣な作品」と酷評されたそうですが、その後別の演奏者によって大人気の作品となったようです。ただ酷評された理由は何となく分かる気がします。というのも、チャイコフスキー自身があまりピアノを弾かなかったことと関係していると思いますが、ピアニスト特有の指の動きと音楽の要素があってないんですね。例えばショパンやリスト、ラフマニノフのような、名ピアニストが作った作品は手の動きに合っていて、指が動きやすいように書かれているんです。でもチャイコフスキーのは違う。ぱっと指がいきやすい方に書かれてない。そういう意味で先ほどの酷評の言葉が出てきたのかなと思います。作品自体は、この一楽章だけでも迫力満点で聴き応えがありますが、第二楽章、第三楽章もそれぞれ特徴的で、聴いていて非常にストーリーが分かりやすいように思います。こういった点も多くの人の心をとらえる魅力の一つなのかもしれませんね。

来週も引き続き、チャイコフスキーの人生と音楽を取り上げます。どうぞお楽しみに♪


【オンエア楽曲】
♪M1 チャイコフスキー 《序曲「1812年」》作品49
    /シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団
♪M2 チャイコフスキー 幻想的序曲《ロメオとジュリエット》
    /アルトゥーロ・トスカニーニ指揮、NBC交響楽団(1946年録音)
♪M3 チャイコフスキー 《ピアノ協奏曲第1番》作品23 より第1楽章
    /ピアノ:マルタ・アルゲリッチ、キリル・コンドラシン指揮、バイエルン放送交響楽団


【横山幸雄の今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080