ON AIR REPORT オンエアレポート

7月31日 聴いて楽しむ「花火」

11/08/03


日付も変わり、8月1日は、「花火の日」と日本では制定されているそうです。実は音楽にも「花火」をモティーフにした作品があるんです・・・そこで今回は花火にまつわる音楽をいろいろご紹介しました!

まず1曲目は、ヘンデル作曲、組曲《王宮の花火の音楽》より<歓喜>をお送りしました。ヘンデル(1685〜1759)はバッハと同年にドイツで生まれ、後にイギリスに帰化した作曲家です。この作品は1749年、オーストリア継承戦争終結を祝う祝賀行事に際し作られました。野外での演奏を考慮して、大編成の金管楽器が用いられるなど、華やかな作品になっています。そして2曲目にご紹介したのは、ドビュッシー作曲、《前奏曲集 第二集》より<花火>。フランス印象派を代表するクロード・ドビュッシー(1862〜1918)の50歳頃の作品で、晩年の代表作といえるでしょう。調性の枠を超えて、絵画のような色彩感あふれる音楽を生み出したドビュッシーですが、全二巻の『前奏曲集』は、20世紀前半のピアノ音楽としても最高傑作のひとつに数えられています。

ところで、日本では夏の風物詩とされている花火ですが、その歴史は古く、もともとは中国発祥で、その後13世紀頃にヨーロッパに伝わったそうです。ヨーロッパでは主に王侯貴族の祝典の際に用いられ、その音の迫力で催しを盛り上げたと言われています。今でも独立記念日や大晦日など、祝祭で用いられますね。僕もフランス留学時代、7月14日の独立記念日に際し、たくさんの花火で祝っているのを目にした思い出があります。
 
さて花火にまつわる音楽・・・3曲目にご紹介したのは、ストラヴィンスキーの《花火》。イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)は、ロシアの作曲家、指揮者ですが、民族主義的な要素にフランス印象派の影響を取り入れ、独自の描写的な音楽を確立しました。その後、新古典主義、十二音技法、ジャズなど様々なスタイルの音楽を書き続けました。この《花火》は非常に若い時の作品で、作曲の師であるリムスキー=コルサコフの娘の結婚祝いに書いたものです。これを聴いて感銘を受けたロシア・バレエ団の主宰者セルゲイ・ディアギレフは、《火の鳥》の作曲をストラヴィンスキーに依頼したと言われています。いわばストラヴィンスキーの作曲家としての道を切り開いた最初の作品といえるでしょう。そして最後、4曲目にお送りしたのは、モシュコフスキ作曲、《8つの性格的小品》より <花火>です。モシュコフスキ (1854〜1925)は、ポーランド人の作曲家、ピアニストです。ドイツで学び、後半生はフランスへ移住してパリで過ごしました。ちょうどショパンが亡くなった頃に生まれていますね。ピアノを習っている方にとっては、ショパンのエチュードを始める前に習う練習曲の作曲家として知られているかもしれませんね。

花火をモティーフにした音楽、4曲をお届けしましたが、聴いて楽しむ花火はいかがでしたでしょうか。器楽の作品は、特定のテーマが決まっていない、いわゆる絶対音楽の作品が主ですが、こういった描写的でイマジネーションを掻き立てられるような作品も、音楽を聴く上での楽しみの一つとなるのではないでしょうか。


【オンエア楽曲】
♪M1 ヘンデル 組曲《王宮の花火の音楽》第4曲<歓喜>
/ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
♪M2 ドビュッシー《《前奏曲集 第二集》》より第12曲<花火>/横山幸雄
♪M3 ストラヴィンスキー《花火》/ピエール・ブーレーズ指揮、シカゴ交響楽団
♪M4 モシュコフスキ 《8つの性格的小品》より 第6曲 <花火>
/アルトゥール・ルービンシュタイン

【横山幸雄の今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080