ON AIR REPORT オンエアレポート

7月17日 癒しの音楽

11/07/18


音楽には、ストレス解消、リフレッシュ、気分高揚、集中力アップ等、いろいろな作用がありますが、とりわけクラシック音楽には、癒し(ヒーリング)の作用があると言われています。そこで今夜は、「癒しのクラシック音楽」ということで、聴いていると何となく心が落ち着くような作品をセレクトしてご紹介しました。
もともとクラシック音楽の本場、ヨーロッパでは「癒し」という概念が音楽と結びつくことはなかったのですが、1990年代に『アダージョ・カラヤン』というCDが発売され、世界的大ヒットとなりました。「アダージョ」とは音楽用語で「ゆったり」という意味ですが、カラヤンが残した膨大な録音のなかから、ゆったりとして聴きやすい、癒し系の作品を集めたこのCDは、クラシック音楽での癒しブームの火付け役となりました。

そんな『アダージョ・カラヤン』より、今夜はまずマーラーの《交響曲 第5番》より 第4楽章 <アダージェット>をご紹介しました。この作品は、1971年公開の『ヴェニスに死す』という映画で用いられ大変有名になりました。ちょうどマーラー(1860〜1911)は、今年没後100年を迎えた作曲家、指揮者ですが、僕自身、中学生時代にマーラーに熱中した覚えがあります。マーラーの作品には壮大なスケール観があり、かといって大袈裟ではなく理知的な音楽だと思います。知性的な部分と感覚的、官能的な部分との絶妙のバランス・・・それが中学生くらいになってようやく理解できるようになったのかなという気がします。ところで、指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤン(1908〜1989)には僕も一度、小学生の時にお会いして演奏を聴いて頂いたことがあります。今でも優しいまなざしで握手してもらったことを覚えています。

今夜はもう一曲、『アダージョ・カラヤン』よりマスカーニ作曲、歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》より<間奏曲>をお聴き頂きました。マスカーニ(1863〜1945)はマーラーとほぼ同時代の作曲家です、ゲルマン系のマーラーと、ラテン系のマスカーニとの間には、音楽的にも大きな違いがあるように感じます。ラテン系の音楽が、人間の感情に直接訴えかけてくるのに対して、ゲルマン系の音楽は、より哲学的、理知的なものを求める傾向があるように思います。

僕自身、よく楽しそうにピアノ弾いてるね、と言われますが、自分自身でも知らずに音楽の中に入り込み、音楽によって自分の気持ちを落ち着かせたりしているのかもしれません。今回は、癒しということで、僕が1994年にレコーディングした『イマージュ』というアルバムより《牧神の午後への前奏曲》を最後にお聴き頂きました。ドビュッシーの作品で、本来オーケストラ用の曲ですが、僕自身がピアノに編曲しました。いろいろな楽器で織り成す色彩感、陰影、立体感をピアノでどこまで表現できるかなというのを楽しみながら編曲した作品です。

【オンエア楽曲】

♪M1 マーラー作曲、《交響曲 第5番》より 第4楽章 <アダージェット>
♪M2 マスカーニ作曲、歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》より<間奏曲>
♪M3ドビュッシー作曲/横山幸雄編曲 《牧神の午後への前奏曲》

【横山幸雄の今後の予定】

●めざましクラシック・サマースペシャル
日時:7月20日(水)、午後7時〜9時
場所:サンリーホール  / 出演:高嶋ちさ子(Vn)/軽部真一ほか

●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日(日) 午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム