ON AIR REPORT オンエアレポート

7月3日 セルゲイ・ラフマニノフ

11/07/04


今夜は、ロシアの作曲家、セルゲイ・ラフマニノフの人生、音楽をご紹介しました。

ラフマニノフ(1873〜1943)は19世紀末から20世紀初頭にかけて、作曲家、ピアニスト、そして指揮者として活躍したロシア・ロマン派の巨匠です。幼少より並外れた音楽的才能を示したと言われています。12歳の時、名門モスクワ音楽院に入り、ピアノと作曲でみるみる頭角を現し、一時期スランプはあったものの、20代、30代とロシアを中心に精力的な活躍を展開しました。しかし40代半ばで、10月革命の影響でアメリカへ渡ります。アメリカでは指揮者、ピアニストとして大活躍、演奏旅行を繰り広げ非常に多忙な生活を送りました。その後ヨーロッパへ戻りスイスへ生活の拠点を移しますが、晩年はアメリカに永住し、最後までロシアへ戻ることはありませんでした。

まず1曲目は、ラフマニノフの代表的作品、《ピアノ協奏曲 第2番》より第一楽章を、ラフマニノフ自身の演奏でお聴き頂きました。この演奏は僕も学生時代によく聴きましたが、こうして作曲家自身の演奏を聴けるというのは、なかなかないんですよね。資料としても大変貴重なものだと思います。
この曲はラフマニノフの代表作であり、出世作でもあります。28歳頃に作られていますが、実はその数年前に《交響曲第1番》の初演が酷評されたことなどがきっかけで、精神的に弱り作曲が全くできなくなっていたラフマニノフ。辛い時期を乗り越え、創作意欲をようやく取り戻した後、最初に完成させたのがこの作品なんですね。治療にあたったダール医師に献呈されています。作品自体は非常に濃厚でロマンティックな曲ですが、ラフマニノフは非常にあっさり、さらっと演奏している印象を受けます。

続いてご紹介したのは、《練習曲集「音の絵」op.39》より第5曲です。1917年、44歳のラフマニノフがアメリカへ亡命する直前、ロシアでの最後の作品です。この作品には「音の絵」とタイトルが付けられていますが、絵画のように様々なイマジネーションが引き出される作品で、技術的にも難易度の高いものです。5年前の僕自身のCD『ラ・カンパネラ〜ヴィルトゥオーゾ名曲集』からお聴き頂きましたが、これは僕のCDの中で唯一、ニューヨーク・スタインウェイを使用した録音になっています。このピアノの音色が、スケールの大きなヴィルトゥオーゾの作品と合うと考えたんですが、少しいつもと音色が違うなと感じた方もいらしたのではないでしょうか。

ラフマニノフの音楽は、濃厚でドラマティック、叙情的な美しさもあり、さらに技術的にはかなりのレベルが求められます。ラフマニノフ自身の演奏は、それを敢えてさらっと演奏しているところが、かえって大人の魅力を醸し出しているような気がします。今日ご紹介した以外にも、たくさん素敵な作品がありますので、ぜひ聴いてみてくださいね。


【オンエア楽曲】

♪M1 ラフマニノフ《ピアノ協奏曲 第2番 op.18》より 第1楽章 / セルゲイ・ラフマニノフ
     (フィラデルフィア管弦楽団、指揮:レオポルド・ストコフスキー、1929年録音)
♪M2 ラフマニノフ《練習曲集「音の絵」op.39》より第5曲 / 横山幸雄


【横山幸雄 今後の予定】

●プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲全曲演奏会 第10回
日時:7月5日(火)、午後7時〜9時
場所:上野学園、石橋メモリアルホール
曲目:バラード第3番 変イ長調Op.47、2つのノクターン Op.48、バラード第4番 変イ短調Op.52、ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」Op.53 他

●ピアノ・リサイタル 〜ショパン&リスト
日時:7月13日 (水)、午後6時半〜8時半
場所:(埼玉県)北本市文化センター
曲目:ショパン:バラード第1番、ノクターン第20番「遺作」、幻想即興曲、英雄ポロネーズ 他

●横山幸雄ピアノ・リサイタル
日時:7月16日(土)、午後2時〜4時
場所:(神奈川県)鶴見区民文化センター

●めざましクラシック・サマースペシャル
日時:7月20日(水)、午後7時〜9時
場所:サンリーホール
出演:高嶋ちさ子(Vn)/軽部真一ほか