ON AIR REPORT オンエアレポート

6月19日 ショパンの愛したプレイエル

11/06/22


6月第3回目の放送では、「プレイエル ポイント ラブ」と題し、ショパンが愛したピアノ「プレイエル」という楽器の魅力をじっくりご紹介しました。あわせて、6月22日にリリースされるCD『横山幸雄 プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲 全曲集4・5・6』もご紹介させて頂きました。

この番組でも毎週お知らせしていますが、昨年の10月から上野学園にある石橋メモリアルホールにて、毎月、『プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲全曲演奏会』を行っています。それも残すところあと3回!ショパンの命日である10月17日に最終回を迎える予定です。そこで用いている楽器が、1910年製のプレイエルです。ちょうどショパンが生まれて100年たった頃の楽器なんですが、以前僕がパリで見つけたもので、いつかこの楽器でショパン全曲演奏会をやりたいなと考えていました。

プレイエルは1807年創業のフランスを代表するピアノ製造メーカーです。初代イグナッツ・プレイエルは作曲家としても当時有名でした。そして2代目のカミーユ・プレイエルのもとで飛躍的に発展を遂げました。この2代目のカミーユとショパンは親しかったと言われており、生涯にわたってショパンはプレイエルのピアノを愛用しています。そのプレイエルのピアノですが、完成度としては1900〜1925年あたりのものが最も良いとされています。といっても古い楽器ですので、どのように使用されてきたか、どういう技術者、どういう状態で保管されてきたかによって、一台一台で状態が異なります。僕がショパンの全曲演奏会シリーズで用いている1910年製のプレイエルは非常に良い状態です。そして石橋メモリアルホールの響きにとてもよくマッチするんですよ。

さて、このショパンも愛した楽器、プレイエルですが、音量があまり出ない反面、弱い音でも音色の変化を引き出すことが可能な楽器と言われ、何より音色の美しさ、品格が非常に賞賛されていました。「シンギングトーン」と呼ばれる歌声のような伸びのある響き。これをショパンは最も愛していたと伝えられています。もう一つ、当時プレイエルと並び、エラールという楽器が有名でしたが、この楽器はリストが好んで弾いたことで有名です。この楽器は現代のピアノに通じるような機能性を備えたもので、音量もあり、早いパッセージや連打などの機能性に重点を置いたものでした。ショパン自身も、疲れているとき、気分のすぐれないときにはエラールのピアノを弾く。反対に元気で演奏したい気持ちが高まっている時はプレイエルが最もふさわしい、という趣旨のことを言っていたそうです。

プレイエルという楽器は、音一つ一つの美しさを考えると、他には代え難い魅力があると思います。よく聴くと、一つ一つの音が個性を持った音、ちょっとずつ異なる音色を持っているんです。皆様にも演奏会に足をお運び頂き、モダンな楽器とは違った魅力、よりショパンに近い音色を感じてもらえればと思います。

さて、次回は若手ピアニストのマリオ・ヘリングさんをゲストにお迎えする予定です。連弾もしたいなと考えていますので、どうぞお楽しみに!

【オンエア楽曲】
♪M1 3つのエコセーズ(『横山幸雄 プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲 全曲集4』より)
♪M2 ノクターン遺作 ホ短調(『横山幸雄 プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲 全曲集5』より)
♪M3 マズルカ 作品17-4(『横山幸雄 プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲 全曲集 6』より)

【今後の演奏会】
●東京フィル定期演奏会 指揮:三ツ橋敬子
日時:6月24日(金)、午後7時〜9時  / 場所:サントリーホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

●“デビュー20周年を祝う会” 〜横山幸雄とベルリン・フィル八重奏団〜
日時:6月28日(火)、午後7時〜9時 / 場所:めぐろパーシモンホール
曲目 ベートーヴェン:ピアノと管弦楽のための五重奏曲 作品16
      シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」 作品114/D.667

●プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲全曲演奏会 第10回
日時:7月5日(火)、午後7時〜9時 / 場所:上野学園、石橋メモリアルホール
曲目:バラード第3番 変イ長調Op.47、2つのノクターン Op.48、バラード第4番 変イ短調Op.52、
    ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」Op.53 他