ON AIR REPORT オンエアレポート

6月12日 エドヴァルド・グリーグの音楽

11/06/15


今回は6月生まれの作曲家ということで・・・エドヴァルド・グリーグの音楽をご紹介しました。

エドヴァルド・グリーグ(Edvard Hagerup Grieg、1843年6月15日〜1907年9月4日)はノルウェーを代表する作曲家です。ベルゲンというオスロに次ぐ大都市に5人兄弟の第4子として生まれました。幼少より母親からピアノを習いはじめ、15歳から18歳までは、ドイツのライプツィヒ音楽院で作曲とピアノを学び、メンデルスゾーンやシューマンらの影響を受けました。音楽院を卒業後は故郷ベルゲンに戻り、さらに翌1863年にコペンハーゲンでニールス・ガーデ(Niels Gade, 1817年〜1890年)から作曲を教わり、国民楽派の影響を受けたと言われています。

ところで、ちょうどこのグリーグが活躍した時代というのは、当時勢いのあったドイツのロマン派音楽が周辺諸国へと波及し、それぞれの国の民族的要素と融合した新しい音楽様式が生まれましたが、それを音楽史の中では「国民楽派」と呼んでいます。その背景には、当時鉄道が整備され人々の移動が容易になったことも関係しているのではないかと思われます。国民楽派の作曲家たちは、自国の歴史や風物、民謡、民族音楽などを題材にした作品を積極的に作りました。ロシア、ボヘミア地方、北欧などで様々な作曲家たちが活躍し始めるのがこの時期です。

まずはグリーグの初期の傑作であり、ピアノ協奏曲史上でも大変重要な作品、《ピアノ協奏曲 イ短調》より第1楽章を聴いて頂きました。この曲はグリーグが25歳の時、1868年に作曲されました。第1楽章の、ティンパニーのトレモロから始まる出だしが大変有名な作品ですが、少しシューマンのピアノ協奏曲と似ている部分があるように思います。グリーグは完成した協奏曲を当時最も高名なピアニストであったフランツ・リストにみせたところ、リストは若き作曲家グリーグの才能を賞賛し、激励したと言われています。このことからグリーグは自信を得て、作曲家としての道を邁進していきました。

続いて、グリーグのピアノ作品の中でも重要な位置を占めている《叙情小品集》の中から、第3集より<春に寄す>、そして<故郷にて>を聴いて頂きました。グリーグの作品は、一つ一つに題名がついていて、描写的であるという点ではリストに近いでしょう。しかしリストほど技巧的ではなく、音楽の表現の仕方はショパンのように少し遠慮がちの部分もあるように思います。グリーグは、ショパンとリストのちょうど両方の要素を兼ね備えた作曲家のような気がします。ちょっと物悲しいような、でも聴いていてとても美しい作品が多いですね。

ぜひ皆さんも北欧の代表的作曲家、グリーグの作品を他にも探してみて下さいね。


【オンエア楽曲】

♪M1 グリーグ作曲《 ピアノ協奏曲 イ短調 》より第1楽章
      /ネーメ・ヤルヴィ指揮、エーテボリ交響楽団 、ピアノ:横山幸雄 
♪M2 グリーグ作曲《叙情小品集 第3集 作品43 》より <春に寄す> /横山幸雄
♪M3 グリーグ作曲《叙情小品集 第3集 作品43 》より <故郷にて> /横山幸雄 


【今後の予定】

●東京フィル定期演奏会 指揮:三ツ橋敬子
日時:6月24日(金)、午後7時〜9時
場所:サントリーホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

●“デビュー20周年を祝う会” 〜横山幸雄とベルリン・フィル八重奏団〜
日時:6月28日(火)、午後7時〜9時
場所:めぐろパーシモンホール
曲目 ベートーヴェン:ピアノと管弦楽のための五重奏曲 作品16
      シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」 作品114/D.667