ON AIR REPORT オンエアレポート

5月22日 ベートーヴェン特集②

11/05/25


22日の放送では、前回に引き続き、ベートーヴェンの後半の人生&音楽をご紹介しました。
ベートーヴェンに影響を受けた音楽家はたくさんいますが・・・5月22日が誕生日の作曲家、リヒャルト・ワーグナーもベートーヴェンから非常に大きな影響を受けています。1813年生まれのワーグナーは(ちょうどベートーヴェンの43歳年下にあたりますね)、17歳の時にあの有名な第九をピアノ用に編曲しているんですよ。ベートーヴェンの交響曲のピアノ編曲といえばフランツ・リストが有名ですが、若きワーグナーによる編曲も興味深いですね!今回の1曲目にご紹介しました。

さて、前回はベートーヴェンが32歳で書いたといわれる「ハイリゲンシュタットの遺書」あたりまでの人生をご紹介しました。その後、芸術家として生きる決意を固めたベートーヴェンは、30代で多数の傑作を生み出しています。例えば、交響曲第3番「英雄」、同5番「運命」、同6番「田園」など。ピアノ・ソナタでは第17番「テンペスト」、第21番「ワルトシュタイン」、第23番「熱情」などです。なお、当時の時代背景としては、フランス革命が終わりナポレオンが皇帝に即位した頃です。それまでの王侯貴族が支配する世の中で、人間性の解放ということの立役者として活躍したナポレオンを尊敬していたベートーヴェンにとって、ナポレオンの皇帝即位は、彼がフランス革命の理想を裏切った事のように感じたのでしょう。大変落胆し、「英雄」をナポレオンに献呈することを止めたという話はよく知られています。


今回ご紹介した30代後半あたりから、ベートーヴェンの作風はさらに哲学的、宇宙的、豊かな想像力をもった異次元の世界へ入っていたような気がします。このような作風は、続くロマン派の自由で形式にとらわれない音楽へ大きな影響をあたえたのではないでしょうか。ちょうど音楽史上でも大きく流れが変わった時期といえるでしょう。ピアノ曲に着目しても同様のことが言えます。そこにはピアノという楽器の変遷・発展も大きく関わってきます。ベートーヴェンが生涯にわたって使用していたといわれるピアノは数台ありますが、当時のピアノ制作者が、試作品をベートーヴェンのところに持って行き、感想や要望を聞きに行っていたそうです。一方ベートーヴェンも新しい楽器に刺激され、より規模の大きな作品を作ったり、新しいことを試みたり・・・こうして徐々に現代のピアノの形に近付いていったと言えるでしょう。

今回2曲目にご紹介したのは・・・ピアノの発展というものをとても感じさせてくれる作品です。ピアノ・ソナタ第23番「熱情」よりフィナーレ・第三楽章をお届けしました。モーツァルトの時代に比べても、いわゆるピアノという楽器から引き出せるダイナミックレンジ、音の多さ、速さは、当時の人々にとっては衝撃的だったと思います。この曲のように、強烈なインパクトを持ち、ドラマティックで、直接心に迫ってくるような作品は、それまでの音楽史上存在しなかったのではないでしょうか。

今回2週にわたりベートーヴェンを特集しましたが、まだまだご紹介したい作品があります。また番組でも取り上げていきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!


<オンエア楽曲>
♪M1ベートーヴェン(ワーグナー編曲) 《交響曲第9番》より第一楽章 / ピアノ:小川典子
♪M2 ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ 第23番》より第三楽章 / 横山幸雄


<横山幸雄の今後の予定>
●矢部達哉&横山幸雄デュオ・リサイタル
日時:5月28日、午後2時〜4時
場所:(千葉県)佐倉市民音楽ホール
曲目:ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ「春」、「クロイツェル」、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」他

●プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲全曲演奏会 第9回
日時:6月10日、午後7〜9時
場所:石橋メモリアルホール
曲目:2つのノクターンOp.37、バラード第2番ヘ長調Op.38、2つのポロネーズOp.40、
     スケルツォ第3番嬰ハ短調 Op.394つのマズルカOp.41 他

●東京フィル定期演奏会 指揮:三ツ橋敬子
日時:6月24日、午後7時〜9時
場所:サントリーホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」