ON AIR REPORT オンエアレポート

5月15日 ベートーヴェン特集①

11/05/18


5月第3回目の放送では、ショパンと並び僕の演奏活動のもう一つの柱、ベートーヴェンにスポットをあて、その人生や音楽についてご紹介しました。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(独: Ludwig van Beethoven、1770年〜1827年)は、古典派からロマン派にかけて活躍したドイツの作曲家です。ちょうどモーツァルトやサリエリが活躍していた時代に生まれ、そしてメンデルスゾーン、シューマン、ショパン、リストといった作曲家が続きます。それぞれ際立った個性をもった作曲家たちが、時代を押し進め発展させた、ある意味クラシック音楽における全盛期ともいえるでしょう。
また、それまでは音楽家が宮廷や教会に所属するのが主流の時代において、独立した一人の音楽家として道を切り開いて行ったのもベートーヴェンがはじめてでしょう。音楽が単なる娯楽や教会に属するものではなく、単独で存在しうる芸術として、また哲学やメッセージを内包するものとして存在すること、それを世に問うた作曲家もベートーヴェンが初めてといえるかもしれません。
幼少より父の教育を受け、天才ピアニスト、即興演奏の名手として名を馳せていました。後に作曲家としての名声を広め、あらゆるジャンルで作品を残しています。20代後半で聴覚障害の兆候が現れ、その絶望感から1802年に「ハイリゲンシュタットの遺書」を残していますが、これは芸術家として生きる決意表明のようなものだと考えられるでしょう。今回はこのあたりまでの人生を取り上げました。


今回まずお聴き頂いたのは<ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」>
副題の「春」は、ベートーヴェン自身で名を付けたわけではありませんが、曲の雰囲気とも一致して愛称として親しまれています。このヴァイオリン・ソナタというジャンルは、モーツアルトの時代は、ヴァイオリン助奏付きのピアノ・ソナタ、つまりピアノがメインでヴァイオリンのオブリガード付きといった感じでした。一方ベートーヴェンは、ピアノとヴァイオリンを同格に扱っています。ヴァイオリンにメロディーがくると、次にピアノのメロディーが続くというように、ピアノはただの伴奏ではなく、音楽の中で非常に重要な部分を担っています。30歳を少し過ぎた頃の作品です。

続いてお届けしたのは<ピアノ・ソナタ第14番「月光」>
ベートーヴェンは24歳で作品1を発表しています。そして、翌年作品2としてピアノ・ソナタを3つ書き、師匠であったハイドンに献呈しています。1番、2番、3番の順に規模も大きくなっていきます。ドラマティックでありながらコンパクトにまとまった第一番、少しユーモラスで軽やかな印象をもつ第二番、壮大なスケールをもった第三番。これらの3つのスタイルに、その後の作曲スタイルが凝縮されており、ピアノ・ソナタ全32曲のタイプは、このいずれのスタイルに分類されるように思われます。
月光ソナタは、最初ゆったりとした楽章から始まります。いわゆるソナタ形式では、通常ゆったとした楽章というのは、真ん中(第二楽章)に持ってこられて、最初と最後の楽章は早いパターンが多いのですが、この月光ソナタにはベートーヴェンの独創性があらわれているといえるでしょう。

ベートーヴェンの人生後半は来週取り上げます。お楽しみに!!


<オンエア楽曲>
♪M1 ベートーヴェン《ヴァイオリン・ソナタ 第5番 「春」》より第一楽章
   演奏:ヴァイオリン/ジャン=ジャック・カントロフ、ピアノ/上田晴子
♪M2 ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ 第14番 「月光」》より第一楽章
   演奏:横山幸雄