ON AIR REPORT オンエアレポート

4月3日 デビュー20周年を振り返る

11/04/05


こんばんは、横山幸雄です。
まずは被害に遭われ今も困難に直面している方々へ心よりお見舞い申し上げますとともに、
亡くなられた方々へ深く哀悼の意を表します。

ここ数週間、音楽家として自分に何ができるのかいろいろ悩みましたが、音楽を聴くことの出来る状況にいる人たちに向けて、この番組やコンサートを通して音楽を届けることで、その気持ちを被災された方々のもとへつないでいけるのではないかと思います。
そこで、5月3日の『ショパン・ピアノソロ全212曲完全奏破コンサート』を、急遽チャリティコンサートとして行うことに決めました。このコンサートの収益金は、JFNヒューマンコンシャス募金として、一部を災害復興支援のため、日本赤十字社を通し被災地にお送りします。

『TOKYO FM チャリティコンサート
〜横山幸雄 ショパン・ピアノソロ 全212曲 完全奏破コンサート』
来月、5月3日(祝) 午前8時(7時半開場)〜深夜2時まで。
東京オペラシティコンサートホールにて行います。
ぜひ足をお運び頂き、皆様のご協力を頂ければと思います。

昨年の166曲コンサートに引き続き、ショパン全作品212曲を一日で弾き切るコンサートですが、ショパンといえば、19歳の時にショパンコンクールで入賞してから、実は今年デビュー20周年なんですね。そこで今回は、「ピアニストとしての活動20周年」を振り返ってみました。

この20年、どんな変化があったかなと考えてみたのですが、毎日自分がやるべきだと思うことを、そのまま素直にやってきたので、「何が変わったか」ということを言葉にするのは難しいですね。常に自分ができる最大限の演奏をしようとすることに今も昔も変化はありませんが、デビュー当時は、「横山幸雄」というよりも「ショパンコンクールの入賞者」として見られている感が強かったような気はします。でも僕の中では、作品に対するアプローチに大きな変化ないように思います。
二十歳という比較的若い時期にデビューしたので、「失敗も許される」と思い、特に最初の10年は様々なことにチャレンジしました。そして、ピアニスト以外でも幅を広げたいと思い、教員として後進の指導にもあたっています。
ショパン、ベートーヴェン、ラヴェル、ブラームスはじめ、全曲演奏をしてきましたが、やはり人前で演奏するというところまで完成度を高めないと、作品の本質を理解することは難しいと思いますし、何度も本番を経験することで、その理解度も深まるのだと思います。今年もショパン全曲コンサートを行いますが、一日でショパンの人生を駆け抜け、ショパンという作曲家と同化していければいいなと思っています。

<リストコーナー>
前回は、リストの20代最後、本格的な演奏活動を再開した頃のお話をしました。
当時のリストはマリー・ダグー伯爵夫人とも幸せな生活を送り、演奏旅行も精力的に行っていました。
今回ご紹介したのは、リストが1839年(28歳)、久々にハンガリーを訪れたことがきっかけとなって生まれた作品です。この曲は、皆さん一度は耳にしたことあるのではないでしょうか。

リストは故郷ハンガリーを想いながらジプシー音楽の要素を取り入れて、そこにピアノとしての演奏効果を充分に盛り込んだ作品を作りました。そして大きなホールでたくさんの聴衆を対象に、祖国への想いをぶつけ、人々を熱狂されたのです。一方、ショパンの作品、例えばマズルカなどは、自宅で一人ひっそりと祖国を想いながら演奏したのはないかと想像されます。同じ祖国を想う曲でも、ショパンとリストでは内と外と、向かっていく方向がまったく逆のように感じられます。

<オンエア楽曲>
♪M1 ショパン 《マズルカ二長調》(1820年、ショパン10歳の作品)/横山幸雄
♪M2 ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ第30番 作品109》より第一楽章 / 横山幸雄
♪M3 リスト 《ハンガリー狂詩曲 第2番》/ ヴォロドス