ON AIR REPORT オンエアレポート

3月20日 ヨハン・セバスチァン・バッハ ②

11/03/21


ケーテンの宮廷楽長として充実した時を過ごしていたバッハでしたが、
1723年5月にザクセン地方の大都市ライプツィヒでトーマス教会のカントールに就任。
この時期には、教会カンタータ、《マタイ受難曲》や《ヨハネ受難曲》、
《クリスマス・オラトリオ》など、教会声楽曲の作曲と演奏が活動の中心となりました。
バッハは就任後5年間、カンタータを毎週作曲したと言われています。
現代の作曲家も映画音楽を3日で作らなければ、などという話も聞きますが、
毎週新たに作曲とは、すごいですね!

また、この時期は、代表的なクラヴィーア作品も多く残しています。
《ゴルドベルグ変奏曲》、《音楽の捧げもの》、《フーガの技法》といった大作があります。
《ゴルドベルグ変奏曲》はバッハが残した鍵盤楽器のための作品の
最高傑作といえるのではないでしょうか。
この曲は「2段鍵盤のチェンバロ」のために作曲されたものですが、鍵盤が2段あることで、
音色を変化させられる点、そして手の交差が自由にできる点が利点として挙げられます。
そういう点では、現代ピアノは鍵盤1段なので、演奏がちょっと難しいと言われています。

さて、私たちピアニストは子どもの頃からバッハの作品を勉強してくるわけですが、
バッハを学ぶ意味について改めて考えてみました。
まず、十二平均率(1オクターブの音程を均等に12等分した音律)という考え方が
バッハの時代に確立しました。
1オクターブにある12の音をそれぞれ主音とする長調・短調=24の調性をフルに使った作品、
《平均率クラヴィーア曲集 第1集&第2集》をバッハは残しています。
転調も自由にできるようなり、平均率のもつ特性を最大限に利用した作曲家がバッハです。
バッハの音楽は、調性音楽の基礎ともいえるでしょう。

また、バッハは自分の楽譜に音符とリズム以外、ほとんど何も記入していないんですね。
我々はそこから音楽を読み取らねばなりません。
強弱記号や速度記号などの演奏記号が書かれていない楽譜をもとに、どんな音楽を形作っていくか、どうやったら自然な音楽に聴こえるか一生懸命考えるわけですね。
つまり音符しか書かれてない楽譜から、どのようにして豊かな演奏を引き出すのか。
バッハを勉強する意味はここにあるのかもしれません。

さらに、バッハの音楽はその後のモーツァルトやベートーヴェンのように、旋律と伴奏という音楽ではなく、各声部で複数の旋律が同時に出てくるような音楽です。2声や3声をきちんと意識しながら演奏するのは、なかなか難しいんですね。そういった意味で、指のコントロールのためにもバッハを勉強する意味はあると思います。特に3声になると、さらに難しくなり、このあたりでピアノを弾くことに挫折したり、「バッハは難しいから嫌い!」となる人が多いと聞きますが、そこをちょっと我慢して続けると、新しい世界が開けてくるんだと思います。

今回は、音楽の父といわれるバッハの人生&音楽をご紹介してきました。
バッハの作品は本当に多種多様ですが、教会音楽は最も重要なジャンルでしょう。
教育的な作品も、単に教育的な価値だけでなく曲としても充分に楽しめる要素を持っています。
さらにバッハの作品は、後世において様々なジャンルに編曲もされています。
もちろんピアノ用のアレンジもありますし、またロックやポップにアレンジされたり、
本当に幅広い魅力を持っていますよね。
今回こうしていくつか作品を紹介し、僕自身もバッハについて再認識しました。
昔バッハに苦しめられた人も、改めて聴いてみると新たな魅力を発見できるかもしれませんよ。


<オンエア楽曲>
♪M1 J.S. バッハ《管弦楽組曲第3番》より 第2曲 <G線上のアリア >
♪M2 J.S. バッハ《ゴルドベルク変奏曲》/横山幸雄
♪M3 J.S. バッハ/ブゾーニ《シャコンヌ》/横山幸雄