左手のために書かれたピアノ曲
17/12/01
いつもお聴きいただきありがとうございます!
11月27日は、フランスの作曲家、ラヴェルの《左手のためのピアノ協奏曲》という作品が初演された日。
第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタイン(1887-1961)の依頼を受けて作曲されたこのピアノ協奏曲は、1931年の11月27日にヴィトゲンシュタインのピアノで初演されました。この作品によって左手(だけ)のために書かれたピアノ曲が注目されるようになりました。実は左手のためのピアノ曲というのは、いろいろ書かれています。事故や故障(練習のしすぎで腱を痛めるなど)によって一時的ないし生涯にわたって両手が使えないピアニストにとって、このようなレパートリーは強く必要とされてきたからです。
左手のために書かれたピアノ曲に注目しました。
<PlayList>
M1ラヴェル 《左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調》 / パスカル・ロジェ(ピアノ)、シャルル・デュトワ(指揮)、モントリオール交響楽団M2 スクリャービン《左手のための2つの小品》op.9より<プレリュード>/ 舘野泉(ピアノ)
M3 ゴドフスキー編曲《ショパン練習曲op.10-12「革命」》/ ボリス・ベレゾフスキー(ピアノ)
M4ブラームス 《ピアノのための5つの練習曲》 より 第5番 シャコンヌ /イディル・ピレット(ピアノ)
M1ラヴェルの《左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調》は、横山さんが10代のフランス留学時代に1度演奏した曲。「ジャズの影響が感じられ、すばらしい作品です。左手のための曲を演奏するときは、ピアノの前に座るポジションから変える必要があります。いつもより少し右側に座らないと、高いほうの音を親指で弾くときに届きません。右手でフタをおさえ、バランスをとる人もいます。」
M2のスクリャービン(1872-1915)はモスクワ音楽院でラフマニノフと同級でしたが、手の大きかったラフマニノフに比べ、オクターブをつかむことが精一杯と言われるほど小さな手の持ち主でした。にもかかわらず、同級生らと難曲の制覇数をめぐって熾烈な競争を続け、とうとう右手首を故障してしまいます。これは、ちょうど音楽院を卒業して間もない1894年(22歳)の作品。横山さんも「スクリャービンの作品は演奏していても、大きな手が書いたのではないかと思ってしまいます」と語っていましたが、広い音域を駆け巡る独自の作風は、「左手のコサック」と呼ばれていました。
M3のゴドフスキーはポーランドの作曲家ですが、このショパンの編曲は不評でした。「面白いけれど弾きこなすための時間があるピアニストは少ないでしょう・・」と横山さん。
ブラームスは、右手を痛めたクララ・シューマンのためにM4を書いています。原曲はJ.S.バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(BWV. 1004)』。原曲にほぼ忠実な編曲です。
次回は、12月生まれの作曲家、セザール・フランクに注目します!お楽しみに。