Vol.107 「曽爾村のカヤ」 奈良県
日本の国土面積の67%は深林。
森に囲まれたこの国で、今では幻となってしまったのが「カヤの木」です。
かつては、タネを食用として、「実」は油の原料として大切にされてきたカヤですが、
今ではほとんど見ることができません。
そんな中、奈良県の曽爾村(そにむら)に、カヤの木がたくさん残っていることから、
この木を使って地域を元気にする取り組みが始まりました。
地元、曽爾高原(そにこうげん)の湧き水に、
カヤの果肉で香りづけしたフローラルウォーター(蒸留水)。
柑橘系のフレッシュな香りが良いと、全国で評判を呼んでいます。
「曽爾村農林業公社」、事務局の高松和弘(たかまつ・かずひろ)さんのお話です。
「曽爾村に暮らす70代以上の方に話を伺うと、
みなさん、カヤに思い入れを持っているんです。
それを聞いて、“これを宝にしたい”と思いました。」
もちろん、そうは言っても、地元の若い方はカヤの実を食べたこともないのが現状。
カヤの「実」は油分をたくさん含んでいるので、
落ちた実が潰れたりすることもあって、むしろ、厄介物だったくらいだそうです。
そんな厄介なものでも、活用次第では“宝”へと姿を変えます。
村では、昔から保存食や薬などに利用してきたカヤを、
「曽爾村農林業公社」は、地域資源として再び着目。
手始めに、フローラルウォーターとナッツを作りました。
「今年の秋、また、実が落ちてくる頃には村全体で拾うようなワークショップを
開きたいと思っています。
みなさんが拾ったカヤを買い取って、そのカヤを、ナッツだったり、蒸留水だったり、
油に転換させたいと思っています。
そうすると、地元にも経済的に還元されて、やっぱりカヤは大事なんだなと、
自分たちが大事にしてきたことはこれからも守っていけるものなんだなと、
そうやって思ってもらいたいと考えています。」
村が大切に守ってきたタカラモノが、全く新しい価値を生み出して今に蘇る。
カヤと共に生きる奈良県曽爾村の挑戦はこれからです。