10/22 「バイノーラル」 音で学ぶ。音を学ぶ。音に学ぶ。音学の授業、サカナLOCKS!、今回はヘッドフォンかイヤフォンで聞くとよくわかる、バイノーラルの授業をお届けしたいと思います。 "バイノーラル" とは──簡単に説明すると、音が3Dのように立体的に聞こえる録音方法です。皆さんが持っているイヤフォンやヘッドフォンは、左耳 (Lチャンネル) と右耳 (Rチャンネル) で分かれています。ラジオカなどのスピーカーも、右と左のふたつです。 右のスピーカーやヘッドフォンから出る音が大きくて、左のヘッドフォンから出る音が小さいと、音は右寄りに、逆に、左が大きいと、音が左寄りになります。こういう原理を利用して、音を立体的に聞こえるように工夫されているのが、バイノーラル・レコーディング、つまり、バイノーラルのことです。その加減を調整することで、360°全ての方角から、自分に向かって音が聞こえてくるようにできます。 「バイノーラルというのは、最新の技術ではありません。だいぶ昔から存在していたのですが、最近また注目され始めました。その理由は、ヘッドフォンやイヤフォンを使う人が増えてきたからです。」 「バイノーラルは、"ダミーヘッドマイク" という特別なマイクを使って録音します。ダミーヘッドマイクは、イヤフォンみたいなマイクで、右耳と左耳にマイクをセットするんです。するとマイクは周囲の音を拾って、そのまま録音するので、360°の音が聞こえるようになる……という、極めて特殊なマイクです。 サカナクションが先日発売した、「夜の踊り子」の初回版DVDに収録されている「SAKANAQALIUM 2012 "ZEPP ALIVE ALONE"」は、このバイノーラルのダミーヘッドマイクで録音されたものです。だから、もし「夜の踊り子」を購入した生徒がいたら、あのDVDをヘッドフォンやイヤフォンで聞いてみてください。まさに、ライブハウスに自分が立っているかのような気持ちで見ることができます。先週、先々週は「CDを買う・買わないの基準」の授業を行ないましたが、これはみんながCDを買いたいと思う理由として、魅力的な特典なんじゃないかと先生は思います(笑) 」 「私、山口一郎が思うバイノーラルのメリットは、やはり普段聞いているLとRの2つのチャンネルよりも、臨場感のある音を聞く事ができるところ。つまり、その場にいるような体験ができるということだと思います。ヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聞く人の数は、今が一番多いと思いますね。そういう部分でも、バイノーラルというのは今後、需要が出てくると思うし、楽しみ方を分かってもらいやすくなったのではないかと思います。 なので、今後の音楽の作り方も、ひょっとしたら変わってくるかもしれません。サカナクションは今、自宅レコーディングを行なっているのですが、そこでもバイノーラルを導入するかどうかの議論があります。」 「でもね、バイノーラルのデメリットもあるんですよ。それは、スピーカーで聞くと何がなんだか分からないこと。ちょっと音が遠く聞こえるだけなんです。だから、ヘッドフォンやイヤフォンで聞いたときと、スピーカーで聞いたときの違いが大きすぎる分、なかなかCDとしてバイノーラル録音を採用するというのは難しい部分です。 スピーカーで聞いたときにも成立していて、ヘッドフォンやイヤフォンで聞いたときには別の世界が見えるという使い方をちゃんと考えて組み合わせないと、なかなか難しいので、チーム・サカナクションでもそこが悩みの種になっています。」 今回の授業では、臨場感のある音、"バイノーラル" を、実際に生徒の皆さんに体験してもらおうということで、山口先生は録音素材を用意してくれました。東京・多摩川でフィールド・レコーディング(野外での録音)された、バイノーラルの音源です。 「僕がダミーヘッドマイクをつけているので、つまりそれは、僕が聞いた音がそのまま収録されています。なので生徒のみんなは、山口先生の立場になって音を聞いてもらうと分かりやすいと思います。これ、音がいきなり真後ろから鳴るから、ビックリしないでくださいね!オバケじゃないですよ!もう、夏は終わったからね(笑) ちょっとドキッとするかもしれないけど、それを楽しんでみてくださいね。それでは、多摩川にいる山口一郎に繋いでみましょう。」 「……今、わたくし山口一郎は多摩川に来ています。今回は課外授業として、バイノーラルの授業をしたいと思い、多摩川に来ました。いつもの音声とは明らかに違うものに切り替わりますので、それを体感してもらいたいと思います。それでは、バイノーラルの音声に切り替えます。」 「はい!切り替わりました!どうですか?僕は今バイノーラルのマイクを両耳に装着しています。このマイクでで音を拾っているので、360°の音がみんなに聞こえるんです。」 録音素材では、スタッフの皆さんに協力いただいて、山口先生の周り……右斜め前、左斜め前、右斜め後ろ、左斜め後ろの位置から、手を叩いてもらって、音の聴こえ方の違いを確認しました。そしてなぜか、右斜め後ろに立っていたのは、サカナクションのドラム、江島先生でした(笑)。 山 口「江島くん、こちらに来てください!」 江 島「はい!山口先生!」 山 口「僕の周りをしゃべりながらまわってみてください。"きゃりーぱみゅぱみゅ"って言いながらまわって!」 江 島「きゃりーぱみゅぱみゅ!きゃりーぱみゅぱみゅ!……」 (言いながら山口先生の周りを一周) 山 口「じゃあ、"SCHOOL OF LOCK!"って言いながらまわって!」 江 島「SCHOOL OF LOCK!SCHOOL OF LOCK!……」 (言いながら山口先生の周りを一周) 山 口「もうちょい近くで!」 江 島「SCHOOL OF LOCK!SCHOOL OF LOCK!……」 (言いながら山口先生の周りを一周) 山 口「はい、これがバイノーラルです。音の違いを感じていただけたでしょうか?それではスタジオの山口先生に戻します。」 「はい、こちらスタジオの山口一郎です。みんな、どうでしたか?なんか、江島先生、いきなり居たんですね(笑)。 後半の、江島先生がしゃべりながら僕の周りをぐるぐるまわっていた部分は、ざわっとするくらい臨場感を感じませんでしたか?これがバイノーラルなんです。ただ、ヘッドフォンやイヤフォンで聞いていなかった人や、車で聞いていた人は、単に川辺ではしゃいでいるサカナクションの様子を聞いていたっていうことになりますね(笑)。ヘッドフォンやイヤフォンで聞いていると、臨場感は出ていたかなと思うので、伝わるといいな〜と思います。」 今回の授業でバイノーラルに興味を持ってくれた皆さん。サカナクション先生が"バイノーラル・トレーラー"っていうのをYouTubeでアップしていますのでチェックしてみましょう。 「これは、僕たちが発売した「夜の踊り子」の初回盤DVDでバイノーラルレコーディングした映像をヘッドフォンをせずに見ている人が多いと聞いて、その人たちを誘導するための推奨トレーラーなんですけど、先ほどの多摩川での課外授業では物足りなかった人や、今回はヘッドフォンやイヤフォンで聞く事ができなかった人は見てくれたら分かりやすいかなと思います。」 「今回の授業、ラジオでどこまで伝わるか……先生含め、サカナLOCKS!の首脳陣はもろもろ工夫しているので、うまく伝われば良いんですが。これからも、音というものについてみんなにに深く知ってもらって、それが生まれる過程や、音とは、音楽とは何なのかというのを生徒諸君に知ってもらえたらと思っています。今後もこの授業で、生徒のみんなに音に関するいろんなことを伝えていきたいと思います。」 さて、サカナLOCKS! から出ている宿題ですが、現在、出ているのは小論文の宿題です。今回のテーマはこちら…… 『 メジャーとインディーのメリット・デメリットについて140文字以内で述べなさい 』 「みんなからの宿題の提出待っていますよ。先生の査定に関わってくるからね!(笑) サカナLOCKS! がなくなるってこともあり得るし、冬のボーナスにも関わってくるから!……先生、車、買ったばっかりだからさ(笑) ボーナス、大事なんだよ。だから、たくさんの宿題提出待ってます!」 宿題提出は【 こちらから 】 M 夜の踊り子 / サカナクション |