9/10 「 カップリング 」

サカナクション


マスタリング
すごくよく分かりました!!!!CD音源はボーカルが小さくなっててラジオ音源になるとボーカルの音が大きくなっててすげーーーー!!!!!!って感動しました! iPodに取り込んだ曲は圧縮されてるっていうの知らなかったので、今度はiPodとCDの聴き比べしてみようと思います!!!! 一郎先生の授業わくわくして楽しすぎます!!!!!!!!!!!!!

すいちゃん★
女/19/茨城県


「なるほどね。iPodに取り込む際も、iTunesからやってると思うんですけど、設定をそのままにしておくと、AACっていうiTunes専用に圧縮されてしまうので、それをAIFFっていうやつに切り替えてください。すると、iPodにいれても、いい音質で聞けますよ。」


こんなにハッキリ…
マスタリングの授業聞きました!!最近、CD音源とMP3の音について気になってたので、すごく勉強になりました☆イヤホンがちょうど調子が悪かったので普通に聞いたのですが、全然音が違いました!!あんなにハッキリ違うんですね!!本当に驚きました(*^_^*)改めてCD音源の良さを感じることができました☆山口先生、面白い授業をありがとうございました!!まだまだ面白い授業やってくださいね(^^)/

マロちー
女/18/福島県


「そうですね。サカナLOCKS! は音の授業って言うくらいですから。音楽だけじゃなく、音の性質に付いてもこれからいろんな授業をやっていきたいと思っています。」

先週のマスタリングの授業は、生徒の中で大絶賛!授業中、Twitterのホットワードにも入ったそうで、山口先生もその反応にテンションが上がっていました。

「今日の職員会議で、「なかなか評判良いじゃないか!」とお話を頂きまして……サカナLOCKS! もうちょっと続けられそうな気がする!(笑)。みなさん、ありがとうございます。サカナLOCKS!は難しい宿題が多かったですし、反省しました。みんな、こういうの好きなんだね!こういう授業だったらどんどんやっていきますよ。」

サカナクション

さて今回の "音学" の授業は、「カップリング」について。カップリングがどういう役割を果たしているのか、考えていきます。

現在、CDとしてリリースされているシングルには、ほぼ、この "カップリング" が存在しています。古くから、シングルが発売されるときは、その表題曲とは別に、もう1曲、収録されている物があって、それが「カップリング」と呼ばれています。「B面」と呼ばれる事もあって、これは音楽がアナログレコードで売られていた頃、レコードの両面に1曲ずつ収録されていたことから、「A面」が表題のシングル曲、その裏側を「B面」と呼んでいた名残で、今でもそう呼ぶことがあります。近年、音楽業界ではCDが売れなくなっているので、セールスを増やす戦略として、カップリングを利用することがあります。そして、ミュージシャンにとっても "カップリング" は、音楽活動をする上で大きな存在となっているそうです。

中には、「ダブルAサイド」、「両A面シングル」といって、カップリング曲として扱わない場合もありますが、この場合は、どちらの曲にもタイアップが付いている場合が多いそうです。

「両A面シングルになる場合に多い理由は、タイアップが同じ時期だったりした場合、"二枚に分けて出すコストがもったいない" とか、"カップリング曲をレコーディングする費用がかかる"など、制作費を考えている部分もありますが、両A面にすることで、両方の曲をラジオで流してもらえたり、CDとしてリリースする際に、お得感を出せるというメリットがあります。しかし、デメリットもあって、メディアで紹介してもらえるときは、例えばラジオ番組でゲストに呼ばれた時、そのコーナーの時間配分や企画内容の関係から、1曲しかオンエアしてもらえなかったり。両方の曲をかけてもらうっていうことは難しかったりします。」

サカナクション

「また、カップリングっていう立場は、もっとミュージシャンの姿勢的な部分の意味合いが多くなってきていると僕は思っています。カップリング曲は、アルバムに収録されなかったりすることがあるので、シングルを買わないとその曲が聞けない。そして、ミュージシャンがそのときにどんな事を歌いたいのかっていう本質的な部分を担ったりしているときもあります。」

それではここから、山口先生がサカナクションのシングルCDに収録されている、歴代のカップリング曲について、1曲ずつ、振り返っていきましょう。

「セントレイ」(2008年)に収録されているカップリング曲

「Ame(A)」
「もどかしい日々」
「夜の東側(「NIGHT FISHING IS GOOD」
TOUR 2008 in SAPPORO ライブ音源)」

「初めて出したシングル曲は「セントレイ」っていう曲だったのですが、このとき、僕たちはカップリングの意味をよく解っていませんでした。とりあえず埋めてしまえば良いのかなって(笑)。シングルが発売する度にそれなりの曲を作れば良いや……みたいな、浅はかな気持ちでやっていたのですが、リリースしてからのリスナーの反応を聞いていたら、カップリング曲の存在っていうのが分かってきて、自分たちのバンド活動のヒストリーになるんだって事が解ってきました。」

「アルクアラウンド」(2010年)に収録されているカップリング

「スプーンと汗」
「ネイティブダンサー
(Rei Harakami へっぽこ re-arrange)」
「“FISH ALIVE chapter 2”1 sequence by
3 songs SAKANAQUARIUM 2009 SAPPORO」」

「二枚目のシングルは「アルクアラウンド」。これに収録されているのは『スプーンと汗』『ネイティブダンサー(Rei Harakami へっぽこre-arrange)』ですが、僕が特別な気持ちで聞いてきた、Rei Harakamiさんっていうミュージシャンの方に、『ネイティブダンサー』って曲をリミックスしてもらったんですよ。これをカップリング収録することで、ものすごく意味のある物になりました。自分たちのストーリーの中でRei Harakamiさんとひとつの作品を作ったというか、関わったという、大きな事を成しているという事をリスナーのみなさんと共有しています。」

サカナクション

「アイデンティティ」(2010年)に収録されているカップリング

「ホーリーダンス」
「YES NO(AOKI takamasa Remix)」

「「アイデンティティ」のカップリングに収録されている『ホーリーダンス』。現在のライブのセットリストの中にも、『ホーリーダンス』って曲はよく入っていますが、この曲も僕らにとって、大事な曲になっています。なぜかというと、この曲……ベースを弾いてないんですよ!生ベースを初めて無くした曲です。この曲に限っては、草刈はベースをシンセサイザーという機械を使って、電子的に弾いているんですね。そういうチャレンジがカップリングの曲の中で出来たという事は、大きな出来事になりましたし、分岐点になったりしました。そういう意味でカップリングの意味はすごく大きいのかな。」

「ルーキー」(2011年)に収録されているカップリング

「スローモーション」
「montage」

「「ルーキー」に収録されている『montage』というインストゥルメンタルの曲があります。この曲は、ミュージックビデオを先に監督さんに作ってもらって、その映像を見ながら音楽を作っていくという方法で制作されたんです。USTREAMで生中継しながらね。サカナクションがどういう風に音楽を作っていくのか、音楽とはどのように生まれていくのか、そういうのを生中継で見せた、という音楽なんです。サカナクションの姿勢と言うか、活動内容を多く含んでいる物として、僕らのストーリー……思い出になったりしています。」

サカナクション

「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
(2011年)に収録されているカップリング


「years」
「ライトダンス(YSST Remix 2011)」

「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」に入っている『years』。これも僕らの中では大きな存在になっています。「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」は、僕にとっては初の恋愛ソングで、『years』もそういう意味を持っています。実はこの2曲で、ひとつの時代を歌いたいというのが僕らのシングルのテーマだったので、僕らの中で勝手にダブルA面なんですね(笑) ……2つ聞いてほしい。アルバムでも、この2つは続けて収録しました。シングルと同じように、2曲で1曲ですよっていう姿勢を出したんですね。これはものすごく好きな曲なので、皆さんに聞いてもらいたいです。」

「僕と花」(2012年) に収録されているカップリング

『ネプトゥーヌス』
『ルーキー(Takkyu Ishino Remix)』

「「僕と花」はドラマの主題歌になりました。それは本当にメディアの最先端の活動なんですね。ドラマの主題歌を自分がやるなんて思っていませんでしたが、そのときに、そんな人たちにどんな曲を聴いてもらいたいか、僕らの姿勢や思いを『ルーキー(Takkyu Ishino Remix)』に含めています。電気グルーヴの石野卓球さんは僕がずっと好きなミュージシャンでしたし、リミックスしてもらって、ドラマを見ているひとたちに、彼の音楽の面白さを分かってもらえたらなって思って収録したのですが、評判でした。卓球さんもDJイベントでかけてくれたりしたそうで、嬉しいですね。」

サカナクション

「夜の踊り子」(2012年)に収録されているカップリング

「multiple exposure」
「僕と花(sakanaction Remix)」

「そして、今回「夜の踊り子」に収録したカップリング曲は『multiple exposure』と『僕と花(sakanaction Remix)』です。「夜の踊り子」はCMソングだし、この曲の前にSMAPさんに楽曲提供をしたり、その前はドラマの主題歌でしょ?だから、次に出すシングルは、外に向けて発信しなきゃ!っていう気持ちが自分たちのモードとしてあったんです。じゃあその気持ちから、「自分たちが本当にやりたい事は何だろう?」とか、「好きな物は何だろう?」っていうのをカップリングで取り戻さなきゃいけないって気持ちで作ったのがこの2曲です。」

さあ、ということで、カップリング曲について考えてきましたが、山口先生が考えるカップリングとは、自分たちのバンドにとってのヒストリーになる存在、さらには、ミュージシャンにとっての最新の実験ができる場でもあるようです。

「プロモーション的にはあまり利用できないカップリング曲ですが、ミュージシャンがカップリングを出す事で、その瞬間、「いま」っていうのを表現しています。外に発信しているもの以外で、音源に含まれている本質的な事を表現する媒体としてカップリングは位置づけできるのではないでしょうか。ミュージシャンやレーベル、ディレクターによって意味合いは、いろいろあると思いますが、アルバムにも入っていない曲、また、シングルの裏っていうところで、楽しみ方は色々あると思います。」

サカナクション

ということで、山口先生による "カップリング" の授業、今回はここまで。来週も引き続きカップリングについて、考えていきましょう。生徒の皆さんが提出してくれた宿題「カップリングの役割・重要性について」の、小論文を紹介していきますよ!

M multiple exposure / サカナクション