聴取期限 2023年4月14日(金)PM 10:00まで
山口「はい授業を始めますから席に着いてください。Twitterを開いてる生徒はTwitterを一度閉じなさい、Instagramを開いてる人はサカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。」
「さあ、SCHOOL OF LOCK!は、今週から新学期に入りました。生徒諸君も新学期に入ったり、就職したり、いろいろ環境が変わった人もたくさんいると思います。このサカナLOCKS!は、この4月でなんと丸11年!12年目に入ります。あらまー……これサカナLOCKS!が始まったときに生まれた子は、もう小学校6年生ですよ。あらまー……。音を学ぶと書いて、"音学"の授業を毎週お届けしておりますよ。11年間やってきまして、12年目に入ります。今後もよろしくお願いいたします。音学にまつわることを主に授業してます。プロモーションはほぼないですから(笑)。この丸11年の間でリリース2〜3回しかないから、残念ながらサカナクションね(笑)。それがよくこんな長い期間続けれたなと思いますよね。もう古参ですから。最古参ですよ。古株です。引き続きよろしくお願いいたします。」
「先日『SCHOOL OF LOCK! CREATION ACADEMY in 東洋学園大学』が開催されまして、このサカナLOCKS!のディレクターでもあるヘルツ先生が、「サカナLOCKS!と編集・演出」の授業をお届けしたそうです。私のトークナレーションを用意しまして、生徒のみんなにBGMをつけて編集と演出をするという授業をやったと。僕もね、生徒の皆さんがBGMをつけた素材を聞かせていただきましたが……みんなもうプロ級だね。ちゃんとトークの文脈で、聞いてる人がそのトークの内容に入り込みやすいように温度を変えて(BGMを)選曲されて、上手にできてるなと思いました。余韻を作ったりとかしてる班もありましたけども。こういう授業は、僕もあったら受けてみたいなと思いました。ラジオディレクターに興味がある人もいると思いますけど、こういった授業をやってるよっていうことを知っていただけたらなと思います。」
「さあ今夜は、音楽にまつわるあらゆるお悩みを、ドクター山口が、音楽という処方箋を出して解決!『ドクター山口の音楽処方箋』をお届けします。」
「(お医者さんの口調で!?) はい、こちらドクター山口でございます……治すよ、君の音楽の悩み、治しまくります。東洋音楽とね、西洋音楽でね(笑)。双方を使っていくからね!早速今日の患者の問診票を見てみましょう。」
私は軽音楽部に所属していて大きな活動内容として、オリジナル曲の制作が求められます。
楽器経験や作詞作曲経験が元々なかった私は、入部当初は先入観もなく、とりあえず作ってみようという気持ちで作曲をしていましたが、現在は作曲していく中で、自分達に求められるものは何なのかなどと曲に対して深く考えすぎてしまうことが多くなってしまいました。
「あまり深く考えすぎないほうが良いのではないか」という考えもあると思いますが、限られた高校三年間のなかでこのままだと後悔する気がします。
新しく曲を作っていくべきなのか、既存の曲の進化を優先すべきなのか、 高校3年間を後悔しないためにはどちらを取れば良いのでしょうか?
東京都/17歳/男性
山口「結構本格的な軽音楽部だね。曲に対して深く考え過ぎてしまうこと……あるね。ありがち。なるほどねー。」
山口「じゃあ、アジアの劣等さん、診察室へどうぞ。」
アジアの劣等(以下、アジア)「こんばんは。」
山口「この春から高校3年生?」
アジア「はい、そうです。」
山口「軽音部は1年生の頃から所属してるの?」
アジア「はい。一年生の頃から所属しています。」
山口「バンド組んでるってこと?担当は?」
アジア「はい、ベースを担当しています。」
山口「あ、ベースを担当。今、その悩んでることっていうのはどういうことなの?改めて。」
アジア「自分がやっていく中で、もっと曲を……やっぱり新曲とかを出していきたいって思いながらも、既存の曲をブラッシュアップするべきなのかとか……そういう風に迷っている状態になっています。」
山口「なるほどね。どういう曲なのかをちょっと聞かせてもらおうかな、まずは。」
アジア「はい。」
山口「先生、本気で聴くからね。聴く中途半端に聞かないよ、ちゃんとプロの目線で聞くから。本気でアドバイスするからね。」
アジア「はい。ふふふ(笑)。ありがとうございます。」
山口「ふふふ(笑)。はい、聴かせてもらうよ。何ていうタイトル?」
アジア「「たそがれ」という曲です。」
♪ たそがれ / RampWay
山口「なるほどね。そうね……よくできてると思うよ。」
アジア「ありがとうございます!」
山口「構成はちゃんと作られてるし、サビはサビらしくしようっていうポイントもあるし、展開としても間延びするようなところっていうのは少ないかなって感じがするね。もっと良くしたいっていう気持ちも分かる。」
アジア「はい。」
山口「例えば、1サビ終わってからもう1回Aメロに戻るじゃん。そのAに戻ったときの変化とかが今はちょっと少ないなって感じするから、そこをガラッと変えたりすると、それに対してCメロのバリエーションがもうちょっとつくんじゃないかって気がするけどね。Cメロでもうちょっと大きな変化があったりすると、曲として幅が広がるっていうか。今、一貫して同じ景色がずっとある中でのダイナミクスだけど、もう少しそのダイナミクスを極端につけたりするといいんじゃないかなと思うけどね。」
アジア「はい。」
山口「あと、四つ打ちのグルーヴを……ドラムが四つ打ちになれば、別に他はどんなんでもいいんだみたいな気持ちにならないで演奏した方がいいかな。四つ打ちである意味みたいな。ダンスミュージックにしたいんだったら、やっぱりベースはダンスミュージックをもっと勉強しなきゃだめだなと思うし。グルーヴを作るっていうこと。なんとかなっちゃうんだよね、四つ打ちにすると。なんとかなっちゃうでしょ?」
アジア「はい。」
山口「でもギターは結構ファンキーな感じで弾いてるけど、ベースはすごいロックな八分(音符のリズム)で弾いちゃってるし。ちゃんとグルーヴを作ってあげたりすると、もっと曲として方向性というか……カラーが決まるよね。」
アジア「ありがとうございます。」
山口「目標にしている大会とかあるの?」
アジア「もう最後……高校3年生になるんですけど、春から。それで、もう最後の大会で都の大会があるんですけど。そこでは録音審査があって、それを通過してスタジオ審査があって、決勝は結構大きなホールで演奏させていただくみたいな感じになるので。そこを一応最終目標として練習しているところです。」
山口「なるほど。」
山口「今回のアジアの劣等からの相談内容としては、新しく曲を作っていくべきなのか、既存の曲を進化するべきなのかっていうところだと思うんだけど……ドクター山口からすると、新しい曲をどんどん作るべきだと思うよ。」
アジア「はい。」
山口「既存の曲の進化っていうのは、やっぱりライブ演奏することによって進化するから。人に聞かせるっていうことを前提に、目の前に何十人何百人いる状態で演奏していくうちに、例えばドラムがこういう風に盛り上がってるんだなとか、お客さんここでテンション上がるんだったらもうちょっと音がほしいなとか、ここ間延びしてるから短くした方がいいかな、構成……とか、そういう風に進化させる。客観を得てからから進化していくもんだと思うんだよね。今高校3年生で、あとライブ何回できるかとか、数限りがあるわけじゃん。アジアの劣等がこの先、大学行っても音楽やっていこうと思っているのかどうか分かんないけど、新しい曲をどんどん作っていくことによって、既存の曲の進化もしていくし、曲を作るっていう基本を高校生のうちに学ぶっていうことの方が大事だと思うから。いろんな曲を聞いて、いろんな曲を作っていくっていう。」
アジア「ありがとうございます。」
山口「あと、リファレンスを持たないっていうのが大事だよ。リファレンス……要するに、こういう人みたいな歌にしたいな、とか。この人の歌い方してみて、とか。この人らしい曲にしてみたいな……とかっていう、"誰々っぽい"っていうリファレンスを持っちゃうと、コピーになっていくから。本当は、オリジナルを作る前に徹底的に完コピすべきなのよ、いろんなミュージシャンを。とにかく完コピ、完コピ。完コピいっぱいして、それで曲作り始めると、手数が増えるじゃん、技が。それからオリジナル作ることによって、自然とその人のニュアンスが、自分が好きなニュアンスが自然に出てくるんだよ。でも曲を作るときに、この人の曲にしたいなって思うリファレンスを持ってやっちゃうと、結果的に真似になって、オリジネーターにならないから。1人のミュージシャンだけじゃなくて、いろんなミュージシャンのコピーをして……本当ならね。そこからオリジナルやっていく方が僕的にはいいかなって思うけどね。」
アジア「はい。」
山口「だけど、今3年生で残りわずかでしょ?だったら、例えば1週間に1曲ぐらいの気持ちで曲をたくさん作っていって、それを完成まで持っていく、とにかく。でも基本的には、良いメロディー、良い歌詞じゃないと、良い曲にならないから。そこをアレンジでなんとかしちゃえ、じゃないから。良い歌詞、良いメロディーがあれば、良い曲になるから。大事に思うから、大切に育てたくなるし。だから、自分がお風呂で自然に自分で作った曲を口ずさんじゃったりするぐらいの、本当に自分の中で良いと思う大事な曲を作るようにするといいかなと思うけどね。」
アジア「はい。」
山口「なので……ドクター山口からアジアの劣等に処方箋の曲を渡すとするならば……これだな。もう……本当に良い歌詞、良いメロディー。これができればもう本当に素晴らしい曲になるし、ちゃんとアレンジのルーツもしっかりしてる。SUPER BUTTER DOGの「サヨナラCOLOR」っていう曲。」
山口「曲のコンセプトがはっきりしてて、メロディーも歌詞も素晴らしいんだよ。共感も得るし。僕の中でも、今でも大切な曲だから。あと、いろんなミュージシャンがカバーしてるね。だから聞いてみたらいいと思う。アジアの劣等がやってるバンドの曲調ではないかもしれないけど、SUPER BUTTER DOG自体はすごくファンキーでソウルフルだから。その曲以外も聴いてみたりすると勉強になるんじゃないかなと思う。四つ打ちってなんだろうとか、グルーヴっていうものの勉強になるんじゃないかなと思う。」
アジア「はい。」
山口「サカナクションで言ったら「陽炎」っていう曲かな。あの曲は、グルーヴ……ちゃんと"間"を作るというか。隙間がないと人って乗れないから。どこに隙間を作るか。ルーツミュージックとしてあるから、本当はそのルーツミュージックをカバーしていくと分かってくるんだよ。ドラムと一緒に練習したりすると、こういう溜めなんだ……みたいな。そうなってくると、ギターが走ってるなとか、歌が走ってるなとか分かってくるし。」
アジア「はい、分かりました。」
山口「なので、「サヨナラCOLOR」を聴いてみてください。」
アジア「はい。」
山口「うん、頑張ってください。」
アジア「ありがとうございます。」
山口「それじゃ、お大事に。さよなら。」
アジア「はい、ありがとうございます。さよなら。」
今回の授業も終了の時間になりました。
山口「アジアの劣等……なんかね、かわいいらしいよね。自分で曲作って、悩んでいる高校生。でも、軽音部で作曲をすることが課題っていうのってすごいね。僕が軽音部の先生だったら、まず……もう、1年2年の間は、完コピをさせるね。完コピって言っても、TAB譜を見て演奏するんじゃなくて、もう……音源通りに。全く音源通りにするにはどうしたらいいのかっていう。ギターのエフェクトだったり、ドラムのチューニングだったり、楽器の種類だったりとか。そういうところまで完璧にコピーしなさいよっていうのと、自分たちでレコーディングしてミックスしなさいよっていうところまでやるね。そこまでやって、高校3年生でオリジナル曲を作ってみなさいっていう。本気で軽音楽部の先生をやってくださいって言われたら、僕はそれをやるね。これ……軽音部の先生やることになる人がいたら参考にしてもらいたいなと思います。」
山口「引き続き、『ドクター山口の音楽処方箋』では、音楽に関するお悩みを持っている患者さんからのメッセージお待ちしてます。ということで、今回の授業はここまで。音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ"音学"の授業、サカナクションの山口一郎でした!」
■ドクター山口の音楽処方箋!
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