
2010年3月30日。原宿・Kスタで行われた授賞式を持って、『第二回蒼き賞』の幕がー
…みたいな書き出しにしようかと思ったけど、やめた。最初にどうしても書きたいことがある。
確かに、3人のグランプリ受賞者たちがトロフィーを手にした30日の授賞式で、この蒼き文学賞の幕は下ろされた。でも、もっとさかのぼれば、2010年2月10日。『第二回蒼き賞』のノミネート作家が発表されたあの日に、既に早い終わりを感じてしまった人がたくさんいたに違いない。
「せっかく頑張って書いたのに…」
今年の応募総数、およそ3200通。昨年を大幅に上回る作品群。数だけでなく内容もとんでもないことになっていた。熱意だってハンパじゃない。「第二回目が開催されるのを、本気で1年間待ち望んでいました。これは、私の1年間が詰まった作品です」「外見も頭の良さも、何一つ人に勝てるものがない。楽器だって何にも鳴らせない。SCOOL OF LOCK! を聴いて、すごい人に出くわすたびに、へこんでしまう。でも、そんな自分にも、『書く』ことだけはできるんじゃないかと思って、すごく恥ずかしいけれど、応募してしまいました」 …この調子。3200の作品に、3200の想いが間違いなく乗っかっていた。
2月10日の生放送教室には、そんな幾多のナマの想いが、またしてもドッと届いた。「今回選ばれた6人の作家の人に拍手を送りたい気持ちはウソじゃないんですが、正直、悔しくて、連載作品を読む気持ちになれないです」「今、泣いてます。また来年があれば挑戦したいと思いますが、今はまだ前向きになれないです…」
悔しいね。自分より何かが得意な人がいることを認めることって。嫌だね。自分の弱さを知ることって。でも、そっから始まる。世界が変わる。
だからこそ、ひょっとしたら未だにモヤモヤを抱えているキミにこそ、機会があれば、そんな気になったら、また何かを書いてほしいなと、厚かましいながらも思う。今回書きかけた小説でも、日記でも、友達への手紙でも、何でもかまわない。自分の考えていることを、一生懸命考え抜いて書いた何かを。
今回の特別審査員を務めてもらった作家のあさのあつこ先生も言っていたように、書くという行為は、『自分を知ること』。だからこそ、『とっても怖くて、でも、とっても楽しい』。
一晩寝たら解決することもある。考えてばっかりいないで、ちょっと体を動かすだけで答えが出ることもある。でも、自分と一生懸命向き合わなければ、いつになっても光が見えないこともある。
自分と一対一でガッツリ向き合いたい時、何かを書くという行為は、最も勇気が必要で、最も素晴らしい方法の一つ。白い紙にキミが産み落とす言葉は、どこまでいっても『キミ自身』。他人から見たらただの落書きでも、キミにとっては、どんな偉い人が書いた分厚い本よりも価値がある言葉。それを自分の中の井戸に降りて行って、すくい上げた瞬間。また違う世界が始まる。
※
ここで話は戻る。3月30日。『第二回蒼き賞』の授賞式。今年は、ノミネート作家全員に、わざわざ東京に来てもらった。連載期間中、蒼き作家たちを担当してくれた幻冬舎の編集者の皆さん、作品をがっつり読み込んだ上、この賞に関するあらゆる仕事に積極的に参加して手助けをしてくれたauの関係者の皆さん、そして、SOL!の担当職員。ぼくたちは、恥ずかしそうにステージに立つ6人の姿を見て、とても誇らしかったです。
連載中、作品専用の掲示板をずっと見ながら、「私なんかを応援してくれる人がたくさんいる。それだけでも涙が出るくらい嬉しい」と言っていた、『なぜ、ナゼ、何故』の橙愛。
授賞式の当日、作品の感想を会場の誰かに直接語りかけられる度に、「私なんかの作品を読んでくれて…」と嬉し泣きを続けていた、『明日エクスプレス』の村咲絢香。
授賞式の帰りの新幹線から、「今日はホンマに最高に幸せな1日やった」と掲示板に書き込んでくれた、『ロンリーベム』のイヌワラビ。
準グランプリを手にしたその日、「今回の経験は、自分の何かを変えることができたと思います」と言い切ってくれた『Over the Bridge』の渡冶原海。
連載中に取材に行かせてもらった際、「最年長として、10代の心にぶちかませる、自分なりの最高の作品を書いてみせる」と言った『スズノネ』の猫恵(有言実行。本当に書ききってくれたね!!)。
そして…自分の言葉を練り上げて紡いだ、真に美しい物語をぼくたちの心に叩き込んでくれた、『冬のひまわり』のカッパ。
長い時間、自分と向き合い続ける孤独な戦いをひとまず終えたキミたちの顔は、とても美しかったです。3200人の代表が君たちで、本当によかった。
そして、そんな彼ら6人の孤独を支えていたのが、毎回彼らの連載を読んで、掲示板に感想や激励を送ってくれた読者のみんな。キミたちの言葉は、実はもうこの世界において、すごく強い意味を持っているんだよ。
…なーんて言われても、ぶっちゃけ、もしもぼくがキミの立場だったら、納得しなかったかもね。「変な慰めなんていらねーよバカ!!! 自分よりもスゴイ何かを持ってる誰かに素直に拍手なんて送れるか!!! いつか見返してやるからなー!!!」って。
それでいいと思う。
『第二回蒼き賞』。これは、およそ3200人の主人公がいる、壮大な物語。残念ながら、キミが望もうが望むまいが、この物語、もう始まっちゃっています。
物語の主人公の皆さん。これからも、時にモヤモヤしたり、イライラしたり、絶望したりしてください。自分を好きになったり、嫌いになったりして下さい。自分と向き合い、戦い続けてください。そうやって、がむしゃらに走り続けたキミはある日、この世界をー
…この物語の続きを、いつか聞かせてください。
キミの世界が変わる、その日まで。
ぼくたちは、未来でキミを待っています。
キミが白い紙の上に踏み出した、偉大なる一歩に愛と敬意を込めて。
SCHOOL OF LOCK! サワカリー |
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