MURAKAMI RADIO
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村上RADIO ~歌う映画スターたち~

村上RADIO ~歌う映画スターたち~

<オープニングテーマ曲>
「Madison Time」Donald Fagen


このあいだ夕暮れに近所をジョギングしていたら、イノシシに出会いました。道の前方にぬっと立っていたんです。かなり大きなイノシシで、びびりました。イノシシって、走るとすごく速いんです。追いかけられたら、とても逃げ切れません。だからじっと壁に張り付いて隠れて、どこかに去ってくれるのを待っていました。神奈川県の山の手の、普通の住宅地なんですけど、イノシシが時折出没するみたいです。日常生活にはいろんな、思いも寄らぬ危険が潜んでいます。みなさんも気をつけてくださいね。

こんばんは、村上春樹です。村上RADIO、今日は「歌う映画スターたち」という特集です。「え、こんな人も歌っているの」とちょっとびっくりしちゃうような人たちを、うちにある音源の中からできるだけたくさん集めてみました。歌がうまくて関心しちゃう人もいれば、「まあ、それほどでもないかな」という人もいますが、さすがに優れた役者さんたちなので、それぞれに良い味、渋い味を出しています。
スクリーン上の姿を思い浮かべながら彼らの歌を聴いてください。

ジョージ・クルーニーの叔母さんは有名な歌手のローズマリー・クルーニーで、それなら彼もきっと歌がうまいだろうということで、ある監督が映画の中で彼に歌わせてみたんだけど、あまりにも下手なので「もういいよ」とあきらめたという話もあります。歌のうまい下手、遺伝子とはどうやら関係ないみたいですね。

僕は音楽好きで、こうして音楽関係の仕事をしていますけど、実を言いますと歌うのはかなり下手です。はっきり言って音痴です。だからカラオケの匂いのするところにはできるだけ近づかないようにしています。関わりたくないから。皆さんはいかがでしょうか?
A Hard Day's Night
Goldie Hawn
In My Life
MCA Records
まずはゴールディ・ホーンがビートルズの「A Hard Day's Night」を歌います。ゴールディ・ホーン、最近あまりスクリーンで観なくなったけど、キュートで素敵なコメディエンヌですよね。ウディ・アレンの『世界中がアイ・ラヴ・ユー』の彼女はとてもうまく役にはまっていました。

この「A Hard Day's Night」をプロデュースしたのはジョージ・マーティン、ビートルズのほとんど全作品をプロデュースした人ですね。彼はホーンに、この歌を「クラブ歌手」風に歌ってほしかったんだと言っています。「彼女のくすくす笑いはなにしろ最高だものね」と。なかなか素敵なパフォーマンスになっています。聴いてください、ゴールディ・ホーンの歌う「A Hard Day's Night」。くすくす笑いもちゃんと入っています。
Mack the Knife
Kevin Spacey With John Wilson And The Orchestra
Beyond The Sea Original Motion Picture Soundtrack
ATCO / Rhino
ケヴィン・スペイシー、味のある優れた俳優ですよね。ちょっとひねった役がうまくて、「セブン」の連続殺人犯役なんかは、ほんとに不気味だったですね。彼は複数の男性に対するセクハラ事件に関与していまして、裁判では無罪になったんですが、現在のところ映画界からはほとんど追放状態になっているみたいです。どうしようかなとちょっと迷ったんですが、まあ音楽に罪はないということで、かけることにしました。

なかなか多芸な人で、ボビー・ダーリンの伝記映画『Beyond the Sea(ビヨンド the シー ~夢見るように歌えば~)』では監督・主演・制作・脚本の四役を務め、おまけに歌も全部自分で歌っちゃうという驚くべき活躍ぶりを見せてくれました。歌がまたうまいんです。なにしろボビー・ダーリンにそっくりです。
今日はその映画から「マック・ザ・ナイフ」を聴いてください。これ、むずかしい歌なんだけど、楽々と歌いこなしてしまいます。映画のハイライトシーンになっています。歌うのはケヴィン・スペイシーです。
La Mer
Kevin Kline
French Kiss Original Motion Picture Soundtrack
Mercury
ケヴィン・スペイシーのあとはケヴィン・クライン。ケヴィン・スペイシーがきりっと切れ味の良い俳優だとすれば、クラインさんの方は飄々(ひょうひょう)としたとぼけた雰囲気を漂わせた人です。こちらも素敵な俳優で、僕は個人的にこの人が大好きです。

中でもこの『フレンチ・キス』という映画はメグ・ライアンとのコンビが実に絶妙で、あちこちで大笑いしてしまいます。映画の中で、ケヴィン・クラインは変なフランス人を演じていまして、フランス語なまりの英語が絶妙なんです。そういう役をやらせるとこの人は本当にうまいですね。
ケヴィン・クラインがフランス語で歌います。「ラ・メール」

映画の最後でクラインさんとメグ・ライアンが結ばれて、おそらくは暗くなった寝室の中でクラインさんがこの「ラ・メール」をクレジットにかぶせて鼻歌風に歌います。シャルル・トレネの作曲したシャンソンの名曲ですよね。でもアメリカ人のメグは「それって、ボビー・ダーリンの歌じゃん」と言い張って、ちょっとした口論になります。そこの部分がほんとうに洒落ていて素敵だった。
You Got It
Whoopi Goldberg
Boys On The Side Original Soundtrack Album
Arista
You Got It
Bonnie Raitt
Boys On The Side Original Soundtrack Album
Arista
ウーピー・ゴールドバーグがロイ・オービソンのヒットソング「You Got It」を歌います。もっともウーピーさんの歌は歌というよりは語りに近いものなので、ここではそのあとをボニー・レイットが引き継いで歌ってくれます。ウーピー・ゴールドバーグとボニー・レイットが歌います。「You Got It」。

これは「Boys on the Side」という映画のサントラ盤に収められています。1995年の作品、この映画にはウーピーさんも主役の1人として出演しています。僕はこの映画はまだ観ていないんですけど、女性3人が友情で結ばれていく、いわゆる“シスターフッドもの”だということです。サウンドトラックの曲もすべて女性歌手が歌っています。 まさに映画のタイトルどおり「ボーイズ・オン・ザ・サイド」“男は添え物”なんですね。
Sunny
Robert Mitchum
That Man
Bear Family Records
今日は「歌う映画スターたち」という特集です。
タフガイから、コメディーまで、幅広い役柄をなんでもすらりとこなせる名優ロバート・ミッチャム。でも僕はやはりミッチャムというと、『狩人の夜』『恐怖の岬』といった不気味なサイコパスの役をつい思い浮かべてしまいます。あれ、ほんとに怖かったなあ。なにしろリアルにうまい俳優です。今で言えばロバート・デ・ニーロみたいなタイプなのかな。
それはともかく、この人はみかけによらず、歌がとてもうまいんです。ピアノも弾けるし、作曲だってできます。自己名義のアルバムも何枚か出しています。今日はボビー・ヘブのヒット曲「サニー」を聴いてください。ロバート・ミッチャムが歌います。
Try A Little Tenderness
Jack Lemmon
Jack Lemmon Sings And Plays Music From "Some Like It Hot"
Epic
ミッチャムと同じ時代、主に1950年代~70年代にかけて活躍したヴェテランの演技派俳優、ジャック・レモンの歌を聴いてください。この人もなにかと器用な人で、ピアノもダンスも上手です。歌もなかなかのものです。ハーヴァード大学で学んだというインテリでもあります。もっとも在学中から演劇と歌に夢中になっていて、学業成績はあまりぱっとしなかったということですが。

ここではレモンは「Try a Little Tenderness」を心優しく歌います。
ジャック・レモンといえば『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』『おかしな二人』と素敵な映画がたくさんあります。基本的にはコメディー俳優なんだけど、シリアスな役もこなせます。コスタ=ガヴラス監督の映画『ミッシング』での、シシー・スペイセクの義理のお父さん役はとても印象的でした。
My Funny Valentine
Ethan Hawke With The David Braid Quartet
Born to Be Blue Music From The Motion Picture
Rhino
映画『ブルーに生まれついて(Born to Be Blue)』は2015年に制作された、ジャズ・トランペッター、チェト・ベイカーの伝記映画ですが、こだわりの男、イーサン・ホークがベイカーをどこまでもリアルに演じていて、ずいぶん見応えがありました。チェト・ベイカーは1950年代に彗星のごとく現れ、一世を風靡(ふうび)しますが、麻薬に溺れて身を持ち崩し、悲劇的な道を辿ります。しかし残された力を振り絞り、最後まで自分自身の音楽を奏で続けました。痛々しいけど、美しい映画でしたね。
イーサン・ホークが映画の中で、自らの声で歌っています。「My Funny Valentine」。これが素晴らしいんです。入魂の歌唱です。トランペットを吹いているのはケヴィン・ターコット。
La Vie En Rose
Jack Nicholson
Something's Gotta Give Music From The Motion Picture
Columbia / Sony Music Soundtrax
ジャック・ニコルソンが歌う『バラ色の人生』。これはこの番組で何年か前にもおかけしたことがあると思うんだけど、何度聴いても素敵なので、またかけます。ジャック・ニコルソンの歌なんてなかなか聴く機会はありませんしね。

映画『Something's Gotta Give』、日本題は『恋愛適齢期』。ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンという、一筋縄ではいきそうにない2人の俳優のガチの顔合わせです。でもとても楽しそうに共演しています。映画自体はまあ、なんてことのないラブコメなんだけど、2人の演技は貫禄十分というか、やはり見物ですね。そしてジャック・ニコルソンが大サービス、「バラ色の人生(La Vie en Rose)」を歌います。

<収録中のつぶやき>
「すごいね。親父力というか……笑」
Forgetful Lucy
Adam Sandler
50 First Dates Original Motion Picture Soundtrack
Maverick
映画『50回目のファースト・キス』、アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが共演したラブコメですね。今日はなんだかラブコメの映画が多いですね(笑)。ドリュー・バリモアが事故で、昨日のことを覚えていられない、短期記憶喪失障害女性・ルーシーを演じています。だからアダム・サンドラーは毎日、彼女を口説き直さなくてはなりません。そういうのって、大変ですよね。僕もこの映画を観ましたけど、観ながら「大変だろうなあ」と思ったし、今も「大変だろうなあ」という思いしか記憶に残っていません。あとは、ハワイ・ロケが美しかったことくらいかな。映画の最後にアダム・サンドラーがウクレレを弾きながら歌います。「Forgetful Lucy(忘れっぽいルーシー)」、ドリュー・バリモアのくすくす笑いもちょっとだけ入ります。しかし話はどんな結論になったんだっけな? 思い出せません。
Just Friends
Tony Perkins
Orchestra Under The Direction of Martin Paich
Epic
アンソニー・パーキンズ 、日本でも人気がありました。1960年代、若い女の子たちはみんな「トニパキ」に夢中でした。ハンサムで清潔で、育ちが良さそうで、すらりとした長身で、アイヴィースタイルがよく似合ってね。彼の出た映画の中ではヒッチコックの『サイコ』が圧倒的に有名ですが、他にはあまり作品に恵まれなかったみたいです。ハリウッドの映画界にうまく馴染めず、ヨーロッパに住んでヨーロッパの映画に出ていたんだけど、もうひとつうまくいかなかったみたいです。僕は『さよならをもう一度』で、イングリッド・バーグマンが扮(ふん)する年上の女性に憧れる孤独な青年を演じた彼が、個人的に好きでしたが。
彼はジャズが大好きで、歌もうまく、何枚かアルバムを残しています。今日はその中から『ジャスト・フレンズ』を聴いてください。
San Antonio Rose
Clint Eastwood
Rawhide's Clint Eastwood Sings Cowboy Favorites
Cameo
若い頃のクリント・イーストウッドは売れない俳優だったんですが、1950年代の終わりのころにテレビの西部劇「ローハイド」の準主役に抜擢され、一躍人気者になります。この番組、日本でも人気がありました。僕も小学生だったけど、よく観ていました。そしてその人気に乗っかって彼は、1963年に「ローハイドのクリント・イーストウッド、カウボーイ・ソングを歌う」というアルバムを出します。イタリアに行ってマカロニ・ウェスタンで成功を収める前のことです。

イーストウッド自身はチャーリー・パーカーの伝記映画を作るくらいの熱心なジャス・ファンなんですが、ここでは「ま、いいか」みたいな感じで気楽にウェスタン音楽を歌っています。うまいか? うーん、「悪くない」というあたりじゃないですかね。
聴いてください。クリント・イーストウッドが歌います。「サン・アントニオ・ローズ 」
Moon River
Audrey Hepburn, Henry Mancini and Johnny Mercer
Music From The Films of Audrey Hepburn
Big Screen Records
最後になりますが、オードリー・ヘップバーンが映画『ティファニーで朝食を』の主題曲「ムーン・リバー」を歌います。窓辺でひとり、ギターをつま弾きながら歌うシーンですね。これは映画の中で歌われたバージョンで、サウンドトラック盤には収められていません。決してうまくはないけど、心のこもった素敵な歌唱だと思います。『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーン、ほんとにチャーミングだったですね。トルーマン・カポーティの原作を僕が訳したものが、新潮文庫から出ています。原作もぜひ読んでみてくださいね。
E.T.
David Matthews Orchestra
Grand Connection
Electric Bird
懐かしいですね、「E.T.のテーマ」。演奏しているのはデビッド・マシューズ・オーケストラです。作曲したのはもちろんジョン・ウィリアムズ、このあいだサントリーホールで、彼が指揮してこの曲を演奏するのを生で聴いて、「やっぱりいいなあ」と感動しました。メロディーを聴いていると、目の前に明るい星空がすっと浮かんできます。E.T.ゴーホーム。
久しぶりにリスナーのみなさんからのメールを中心とする特集を組みたいと思います。例によってメールを読む合間に、僕のセレクトした素敵な音楽もかけます。番組に関する感想、僕に対する質問、ただの世間話、猫自慢、おいしいドーナッツ話……、その他なんでもいいです。メールをいっぱいください。抽選で僕のサイン入りの本をプレゼントします。詳しくは村上RADIOの番組サイトをチェックしてみてください。
今日の言葉は映画とも、E.T.ともぜんぜん関係なく、内田百閒(ひゃっけん)さんの言葉です。
「お膳の上に、小鉢に盛ったおからとシャムパンが出ている」
これは「おからでシャムパン」という短い作品、小説のようなエッセイ、エッセイのような小説の書き出し部分です。「どうしてシャンパンとおからなんだ?」と読んだ人は不思議に思いますよね。あまりにも奇妙な組み合わせだから。どうしてかというとだね……というところから、百閒先生のお話が始まります。この辺はさすがにうまいですね。

話の書き出しってとても大事なんです。逆にいえば、書き出しができちゃえばあとは簡単っていう部分もあります。短篇小説を書くとき、僕はよくそういう書き方をします。
さて、どうしてお膳の上にシャンパンとおからが載っているのか?

「お膳の前は私一人である。だれも相手はいない。猫もいない。尤(もっと)も猫がいたとしても、お膳の上がおからでは興味がないから、どこかへ行ってしまうだろう」

いいですねえ。すみませんが、続きは自分で読んでください。(ニャア)

スタッフ後記

スタッフ後記

  • 映画スターが歌う曲、いかがだったでしょうか。彼らの多才さを改めて感じますね。自分の魅せ方を知っているからこそ、魅力的な歌になっているんでしょうね。それにしても春樹さんのレコードコレクションの幅広さはすごい!来月も楽しみです!(CAD伊藤)
  • オードリーの歌う『ムーン・リバー』が心に残りました。春樹さんによると、とても希少なレコードだと。映画『ティファニーで朝食を』でのジバンシーの衣装を思い出し、もう一度観たくなりました。(延江GP)
  • 「彼女のくすくす笑いはなにしろ最高だものね」。ビートルズの名プロデューサー、ジョージ・マーティンが語ったというゴールディ・ホーンの“A Hard Day's Night”。オードリー・ヘプバーン自身が歌う映画『ティファニーで朝食を』の主題歌“Moon River”、そしてジャック・ニコルソンの”バラ色の人生 La Vie en Rose”……。スタジオで俳優たちの歌を紹介する村上DJはとても愉しそうでした。映画をもう一度観たくなりますよね。(エディターS)
  • ジャック・ニコルソンの/La Vie En Rose/を聴くと、なぜだかどうしてもくすっと笑ってしまいます。人間味というやつでしょうか。人間味、大事ですよね(構成ヒロコ)
  • 今回の村上RADIOは、歌う映画スターたち。皆さん、さすがの表現力で見事に歌手を演じきっています。改めて歌唱はパフォーマンスだと感じさせてくれる1時間、存分に堪能してください。(キム兄)
  • 映画を観て劇中歌が記憶に残るのって、いい体験ですよね。全然関係ないですけど、映画は最近『アメリ』を観ました。パリに行きたいです。全然関係なくてすみません。(ADルッカ)

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文藝春秋(2007年10月)文春文庫(2010年6月):音楽本ではないが、ランナーにも愛読者が多い。

村上春樹(むらかみ・はるき)プロフィール

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。