2016年12月8日
12月8日 群馬大学・片田敏孝教授(6)
今朝も、防災のスペシャリスト、群馬大学大学院教授、片田敏孝さんのインタビューです。
岩手県釜石市や三重県尾鷲市で長年防災教育に携わり、現在は全国各地で防災の取り組みを指導。「命を守る」「人が死なない防災」を旗印に活動を続けています。
東日本大震災の大津波を機に、全国各地の沿岸部では津波防災のあり方が問われています。高知県黒潮町も、その一つです。
◆日本一の巨大津波の町で考えた、日本一の防災の町にする
東日本大震災のあと1年後に出された「南海トラフ」の巨大津波想定。これで一番大きな津波想定が出たところは、高知県の黒潮町という町だった。34.4メートル。この数字が政府から公表される数日前、黒潮町の町長さんがわたしのところに連絡をよこされた。「先生、いま国から内示が出て、黒潮町には34.4メートルの日本一の津波が地震からわずか数分で出るとういことになった。これをわたしは町民にどう説明したらいいだろうか。わたしは町民を守る自信がない」町長さんはそう話された。ちょっと不謹慎に聞こえるかもしれないが、わたしは町長さんに「町長、一番でよかったじゃないですか。一番とラベルを張られたからには、町長自らがそんなにおびえていてどうするんですか。日本一の津波、大いに結構だ、そんなの知っている。そんな津波に絶対負けるかと町長が先頭を切ってこの巨大津波に立ち向かって、この日本一の津波の町で考えた日本一の防災をやる、それを味方に町民を固めるんだ、ある意味すごいチャンスですよ」と申し上げた。その後町長さんとお酒を飲んだが、町長さんがわたしに地元の自慢話をされた。「先生は群馬の人だからカツオの本当の味を知らないはずだ。高知のカツオは本当においしいんだ。」「ここの浜は、ラッキョウの花が咲くシーズンは全面紫色になって、桜よりもきれいなんだ」と地元の自慢話をされて、わたしはそのときに「この町長さんは地域のことを本当に大切に思っておられる」と思った。そして「一番でよかった」といったのは間違いじゃなかったと。町長さんに「その自慢のカツオやラッキョウを使って、「日本一の巨大津波の町で考えた、日本一の防災食」の缶詰工場でもつくったらどうかと提案した。そうしたら、この町長さん、若くてノリがいいもんだから、町営の缶詰工場、(株)黒潮町缶詰製作所という会社を立ち上げられた。そしていまそこに20人くらいの雇用がある。地元のいいものを使っているからおいしいので、非常食としてだけでなく、日常使いできるようなおいしいものを作られて。町長は自慢の産品を使って全国に売り出して、日本一の津波の町がこんなにも元気であるということを応援していただきたいと思う。黒潮町のように日本一の津波想定を突き付けられたからこそ、日本一元気な、日本一津波に対して向い会えるような、防災で売ってる町ができた。
これからも東日本大震災以降日本は多少自然が荒ぶっている。火山の噴火や地震もあるし、台風もあって、気象が多少荒れている。災害大国日本だから、これからも災害はあると思う。それでも、それにちゃんと向かい合えるような防災大国日本、なによりもどんな難局をも乗り切れるような日本国民なんだと、国民を強靭化していかなきゃならないと僕は思う。
お話に出てきた高知県黒潮町町営の黒潮町缶詰製作所。商品ラインナップを見てみると・・
「黒潮オイルのごろっとカツオ」「柚子香るブリトロ大根」「トマトで煮込んだカツオとキノコ」などなど、非常食といえど今すぐ食べたい!オシャレで美味しそうな缶詰ばかり。オンラインショップで購入も可能です!
巨大津波想定におびえるのではなく、全力で立ち向かう黒潮町の事例。家族で、会社で、そして地域全体でどう備えるのか。それぞれの取り組みが問われています。
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