第19回 渋滞学 後編

2015/08/06

今週は『渋滞学 後編』。
先週に続いて東京大学 先端科学技術研究センター 
数理創発システム分野 西成活裕教授にお話を伺いました。

渋滞はもちろん目的地への到着が遅延するもの。
その経済的な損失は日本全体で年間12兆円という試算があること。
解決のキーワードは「車間距離40m」だということを先週お伝えしました。

それだけではありません。
渋滞は交通事故に繋がるもの。
渋滞防止は事故を防ぐことにもなるのです。

西成教授によると高速道路で起こる事故の20%は渋滞が原因。
高速道路は渋滞をして車が止まっているというイメージがないもの。
そのため見通しの悪い坂道の下で渋滞が起こっている時に
普通に走ってきた運転手にとっては、急に目の前に止まっている車が出現することになり、
ぶつかってしまうといことが少なくありません。
渋滞における、後ろからの追突事故は、非常に多いのです。

また、渋滞は運転手をイライラさせ、周りに注意が行き渡らなくなり、
追突すると二次的な事故も、もちろん考えられます。

20年「渋滞学」を研究してきた西成教授が出した結論は、
クルマの渋滞が解消できるか否かは人間にかかっているということ。
研究当初は道路を建設したりすることで渋滞をいかに無くすかを考えました。
その後は運転手の挙動を変えることによって渋滞を無くす方法を考えました。
そして、技術の革新も渋滞緩和に有効です。
今後、自動運転が実用化されれば、渋滞は今よりは緩和されることは確実だそうです。

でも、運転手が利己的な振る舞いをする社会であれば、
渋滞は増えていってしまうのではないかと西成教授は指摘します。
自分も早く目的地に着くのではなく、みんなでそうなるようにしようという、
社会的な視野をを我々が持つことができるかどうか。
そこにこそ渋滞解消の鍵があると西成教授は考えています。