第9回 ラウンドアバウトの安全性
2015/05/28
以前に一度「追跡」で取り上げた、
欧米では一般的なドーナツ状の交差点「ラウンドアバウト」。
日本でも試験導入されていましたが、
去年9月施行の道路交通法改正で「環状交差点」と定義され本格的な運用がスタート。
全国の警察に指定されることとなりました。
2015年5月現在で、その数は「45」。少しずつ増えています。
そこで、今週はラウンドアバウトの現状と安全性を追跡。
コメントは長年「ラウンドアバウト」の研究と普及に取り組む
名古屋大学大学院 交通工学が専門の中村英樹 教授でした。
あらためて「ラウンドアバウト」は、中央に円形の区域があり、
その周りをドーナツ状に道路が通る、信号のない交差点。
ドーナツ状の道路には、複数の道路が垂直に交差。
この接続した道路から左折してドーナツ状の道路に入り、
時計まわりに徐行、目的とする交差道路から抜け出る方式です。
優先されるのは円の道路に入るクルマではなく円の道路を走っているクルマ。
丸い交差点という意味で言うとロータリーが広場から始まって100年以上前からありました。
それを1996年にイギリスで、その丸い交差点の中の交通を優先にすると、
安全で処理能力も高くなるという事が分かり、近代的なラウンドアバウトが始まりました。
「ラウンドアバウト」の最大の利点は「安全性」。
通常の交差点では速度がそれなりにあるので、
出会いがしらの事故や対抗右折車と直進車が大事故になり、
運転者や同乗者にダメージが生ずることが非常に多いものです。
でもランドアバウトの場合は、合流で進入し、進行方向が同じ方向なので、
速度も落ちていて仮に車がラウンドアバウトの中で接触したとしても、
大事故にはならないというのが大きなメリットになります。
例えば2年前の3月からスタートした
長野県 飯田市の東和町ラウンドアバウトでは、
これまでのところ人身事故は起こっていません。
「ラウンドアバウト」以前、信号交差点時代を同じ期間遡ると、
2件の人身事故があったといいます。
同じように、物損事故はあるものの、
今のところ「ラウンドアバウト」に指定された他の交差点でも、
人身事故は起こっていないそうです。
ただ、まだ慣れない交通システム。
「ラウンドアバウト」には、横断歩道もあるので、
ドライバーも、歩行者も、十分な注意が必要です。
ラウンドアバウトには横断歩道が付いている所もありますから、
交差点の出入り口には信号のない横断歩道が付いています。
そういう意味では、信号が無い分、ドライバーの方でも気を付けなければいけませんが、
通常の交差点よりも車両の速度がかなり落ちています。
また、交差点の構造も横断歩行者の方が安全に渡れるような横断歩道の構造、
横断歩道の真ん中に島を作って2段階で横断するというようにすれば、
1回の横断距離が短くなって安全確認も最初は右だけを見る。
真中から先は左だけを見るということで、歩行者は渡りやすく、
安全性を高めると言われています。
「ラウンドアバウト」の他の要素を見るとメリットとディメリットがあります。
<メリット>
信号待ちが無くなり、円滑な交通を生む可能性があります
1日の交通量が15,000台程度の交差点であればメリットあり
<ディメリット>
交通量の多い交差点では威力を発揮できず渋滞を生む
都市部よりは郊外や地方向き
<メリット>
信号機の初期投資 維持管理コストがいらない
<ディメリット>
導入に適した交差点にはふつう信号機があり
改良するには相応のコストがかかる
他にも「広い敷地が必要」「道路を管理する地方自治体の情報と知識」
「利用する市民への周知と教育」など課題はいろいろ。
それでもいま「ラウンドアバウト」への関心は高まっています。