第388回 補償運転

2022/09/09
 
「補償運転」という言葉を聴いたことはありますか?
高齢者が起こす交通事故が社会問題になっている昨今ですが、
多くの地域ではクルマがなければ生活が成り立ちません。
また、運転免許証を持ちクルマを運転することは、
その人のアイデンティティの1つになっていることも少なくありません。

そのため、無理をせず、長く運転を続けるための方策、
それが「補償運転」という考えです。





今回お話を伺ったのは交通心理学が専門
実践女子大学人間社会学部 松浦常夫教授。
マスコミの報道で高齢者による交通事故が注目を集めた2017年
高齢運転者の交通事故防止対策に関する有識者会議が開かれた際、
交通心理学会の代表として補償運転の考え方を紹介した方です。
これが警察庁交通局長の目に留まり「補償運転」となって
全国の交通警察に対し、普及を促す指示が出ました。





「補償運転」という言葉はわかりにくいかもしれません。
概念を説明すると高齢者になって低下する心身の機能を補償するという意味。
運転する時や場所を選択する、心や身体や環境を整えるなどして
衰えてきた運転技能を補う運転方法のことです。
具体的には以下のように3つの要素があります。


① 運転の制限・選択

  → 夜間・高速道路・知らないところなど、危険ところでは運転しない


② 運転前の準備

  → 体調を整えてからクルマに乗り 時間に余裕を持って出発する 
   クルマの点検や車内の整頓をする


③ 安全を志向した運転
 
  → 速度を出さない 運転中は集中する 
   危ないクルマ・自転車や歩行者からは離れる



以上のことによって、
できるだけ交通事故を遠ざけようという発想です。





誰もが年齢を重ねると残念ながら心技体のすべての機能が低下します。
しかし、多くの高齢者には自分がその領域に入ったことに気づかない、
あるいは気づいていても認めようとしない傾向にあります。

若い頃と同じように安全に運転できると思っている、あるいは思いたがり、
自分の運転技能を過大評価する人が少なからずいて
これが高齢ドライバーによる事故増加の1つの要因だと考えられています。

高齢ドライバーに該当する方は運転能力の低下を客観的に自覚した上で
「補償運転」を心がけましょう。
身近に高齢ドライバーがいるリスナーの方は、
そのことを機会がある時に伝えていただければと思います。





今回テーマの「補償運転」は、これを心がけていれば
高齢者だけではなくどの世代のドライバーでも交通事故を遠ざける事ができるので
クルマに乗る時の指針にしてほしいと思います。