第288回 高齢者ドライバードットコム

2020/10/02

8月に「高齢者に適した安全運転と円満な免許返納のために」という情報サイト
「高齢ドライバードットコム」がオープンしました。
今週は、このウェブサイトを紹介しました。





高齢ドライバードットコムを立ち上げたのは、
トヨタ自動車が母体となって創設された
一般財団法人トヨタ・モビリティ基金。

より良いモビリティ社会の実現や
モビリティ格差の解消に向けて活動する組織です。

今回は、そのプログラムマネージャー 
富井雄三さんにお話を聞きました。





年々、交通事故の発生件数は減っています。
東京都を例にとると2010年のおよそ5万5000件が、
2019年はおよそ3万件。

しかし、65歳以上の高齢運転者が「第一当事者」の
交通事故発生件数の減少は他の世代と比べて緩やか。

そのため、交通事故全体に占める割合は上昇しています。
2010年のおよそ13%が、2019年には18%。

そんな状況を踏まえ
高齢ドライバードットコムが発信している情報は大きく2つ

1つは高齢ドライバー本人向けの情報。
高齢ドライバーの免許更新制度、安全に車に乗り続けるための運転習慣、
車の安全装備とその購入助成制度、マイカー以外の移動の選択肢などが紹介されています。





例えば「高齢ドライバーの事故を知る」という項目に
死亡事故の「人的要因比較」があります。
        
75歳以上と75歳未満でかなり違うのが「操作不適」。
75歳未満だと「人的要因」全体の16%ですが、
75歳以上は30%とほぼ2倍です。

その内訳で多いのは「ハンドルの操作不適」17%。
「ブレーキとアクセルの踏み間違い」5.4%。
75歳未満の「ブレーキとアクセルの踏み間違い」は1.1%。
75歳以上は、その5倍です。

また「自分の運転能力を調べる」という項目では、
交通安全関連のウェブサイトに掲載されている
チェックリストへのリンクが多数あります。

高齢者事故の実態を知り、自分の状態をチェックして、
あらためて安全運転に臨む、あるいは潮時だと感じたら、
免許返納を考えることができます。





そして、2つめは高齢者ドライバーの家族向け情報。
高齢ドライバーの車に同乗した際、運転能力を観察するチェックポイントや
免許返納までの検討の流れなどがアドバイスも交えて紹介されています。





目に留まるのが「免許返納に応じてもらえない!」
この悩みを抱えている方、多いかもしれません。
九州大学 大学院 教授で交通心理学協会 副会長
志堂寺和則さんのインタビューが掲載されていて参考になりそう。





高齢者の運転について、富井さんが特に伝えたいことは2つ。
1点目は安全に長く車に乗れるよう高齢ドライバー自身や家族との運転ルールを作ること。
「運転能力」「体調」「天気」「道路状況」を鑑みて危ないと判断した時には運転を避ける。

2点目は高齢ドライバーの交通安全の取り組みには
本人の努力と同じくらい周囲のサポートも重要だということ。

「加齢による運転能力低下は、誰しもが避けられない問題です。
今はまだ、自身やご家族の運転に心配がない人でも
ぜひ一度高齢ドライバードットコムのウェブサイトを見て、
10年先、20年先のご自身やご家族の移動のあり方について
考えるきっかけにしていただければと思います」。
富井さんは最後にそう話して下さいました。