第226回 ひまわりの絆プロジェクト

2019/07/26

子どもたちは夏休みに入りました。
学校がある時とは生活が変わりって交通事故に遭遇する危険も増えます。
保護者のみなさんは子どもたちに注意を促し、
ドライバーのみなさんは安全運転の意識を高く持ちましょう
今週は1件の交通事故から生まれた
子どもの命を守る交通安全運動を紹介しました。
京都府警が全国に広める「ひまわりの絆プロジェクト」です。





平成23年、京都府内に住む、
東陽大(あずま・はると)くんという
4歳の男の子が、交通事故で亡くなりました。

お兄ちゃんのところへ行くと言って家を出た陽大くん。
お母さんは、前日に足を骨折して一緒に行くことができなかったため、
「端っこを歩きなさい」と声をかけました。

しかし、自宅から200mのところで、
言われたとおりに道路の右端を歩いていた陽大くんは、
背後からきた重さ2トンの大型SUVに命を奪われてしまったのです。

この交通事故を担当した警部補は、
霊安室で変わり果てた我が子と対面するご両親を目の当たりにしました。
横たわる男の子、泣き崩れるお母さん、気丈に妻を抱えるお父さん。
警部補の目からも止めどなく涙が溢れ出てきました。

お母さんは「私が一緒に付いて行っていたら」
「怪我をしていなければ」と精神的に大きなダメージを負いました。

警察署の被害者支援要員でもあった警部補は、
臨床心理士によるカウンセリングなど、
長期にわたり親身になって遺族支援を行います。





裁判が終わった夏。
警部補が遺族の自宅を訪れると、庭には大きなひまわりが咲いていました。

そのひまわりについて、お母さんは「陽大が事故に遭う前、
幼稚園で育てていた種を小さい手いっぱいに握りしめ
自宅に持ち帰ってきていたもので、来年は一緒に植えようねと話していたもの。
生きていた証の形見と思い庭に植えたものです」と語りました。

その後、警部補が人事異動の挨拶で遺族宅を訪問した時のこと。
ご両親から「陽大が生きていた証を残したい。
このひまわりがあちらこちらで咲け陽大もいろんな所へ行けると思う。
もう事故は嫌です」と種を託されます。





警部補は異動先になった警察署の転入者スピーチで、
陽大くんとひまわりのことを話しました。
すると「そのひまわりを育てて命の大切さや交通事故防止を発信しよう」
という声が、署員から上がります。

警察署前の花壇に陽大くんのひまわりの種が蒔かれました。
署員たちが世話をして高さ2メートルの大きなひまわりの花が咲きました。
5年前、平成26年の夏のことです。

その後、陽大くんのひまわりの種は、
この取り組みを大きく広げようという思いから、
京都府警本部の犯罪被害者支援室に引き継がれて
「ひまわりの絆プロジェクト」が発足。
     
府内の警察署・幼稚園・保育園・小中学校などに配られて花を咲かせ、
今では京都府という枠を超え、夏になると全国各地で、
交通安全の願いが込められたひまわりが咲いています。

京都府警のウェブサイトに
「ご遺族からのお手紙」が掲載されています。





どんな日も日本のどこかで
無謀な運転や思いやりのない運転、不注意が、
悲しい事故を起こしてしまう可能性があることを肝に命じて、
ドライバーの皆さんはハンドルを握って下さい。

そして、お父さん、お母さん、
夏休みの子供たちが外に出る時には注意を促して下さい。