第94回 高齢者による交通事故
2017/01/12
このところ頻繁に報道される高齢者ドライバーによる交通事故。
死亡者が出るケースも多く、免許証の「自主返納」を求める声も出ています。
今週、追跡は「高齢者による交通事故」を追跡しました。
警視庁によると・・・
平成18年から27年の交通事故発生件数は、
7万4千件から 3万4千件と年を追うごとに減少しています。
一方で同じ期間の交通事故の発生件数に占める
高齢者ドライバーが関わった事故の割合は
11.6% から21.5%と年を追うごとに増えています。
警察庁が去年11月に公表した統計では、
2016年の交通事故死亡者は10月末の時点で3,134人でした。
その事故を起こしてしまった加害者ドライバーの年齢層を見ると
◾ 65歳以上 29%
◾ 40〜49歳 18%
◾ 50〜59歳 14%
と続きます。
10年前に最も多かった加害者ドライバーの年齢層は「30〜39歳」。
その「30〜39歳」や、他に多かった「16〜24歳」「50〜59歳」は、
現在までにほぼ半減しました。でも「65歳以上」は1% 増えています。
数字というのは見方や切り取り方によって大きく変わるもの。
上記のデータを見ると「高齢者の運転はやはり危険だ」ととらえる人が多いでしょう。
でも、ちょっと待ってください。
実は少子高齢化が進む日本社会。
若年層のクルマ離れもあって自動車免許を持つ年齢が上昇しました。
高齢者で免許を持つ人数が増え、免許を持つ人の中で高齢者の占める割合が増えました。
その結果、高齢者が起こす交通事故の数と、
全体における高齢者による交通事故の割合も増えているのです。
実は「免許を持っている1万人あたりの事故数」を算出すると
「高齢者よりも10代、20代のほうが多い」という指摘もあります。
高齢者が他の年代よりもクルマの運転に関して
著しく危険な存在というわけではないのです。
どの世代であってもおしなべて危険は孕んでいること。
それは認識してください。
その上で高齢者の何がしかの特徴が交通事故に繋がっているのも事実。
その部分はどうすれば解決するのか。交通事故減少へと繋がるのか。
考え、取り組んでいくことが大切でしょう。
自動車運転工学研究所 代表 細川一夫さんによると
高齢者ドライバーが起こしやすい事故のタイプはあります。
🚗 信号交差点の右折
信号が青で直進してくる対向車が途切れるのを待っている時
「いける」と思って右折したところ 実際には直進車と接触してしまうケース
いわゆる「右直事故」と言われるもの
🚗 一時停止が必要な交差点
一時停止が必要な交差点
高齢者がいったん停止した
他の車が来ていることも認識している 充分な距離もある
でも動き始めた時に他のクルマとぶつかってしまう
いずれの場合も人間は経年によって認知・判断・操作の能力が低下。
自分がイメージしていることが現実に起こることとずれてしまうから。
自動車運転工学研究所 代表 細川一夫さんによると
高齢者は下の世代と比較して自分は交通事故にあわないという
自信を持っている割合が多いのです。
高齢者ではないドライバーは高齢者の運転する車が
予測しない動きをする可能性があることを認識しておくことが大切です。
歩行者の立場なら車には細心の注意を払うこと。
子供たちにも、そのことを伝えること。
身近に運転する高齢者がいる場合には、
日々の運転についてコミュケーションをとり
何十年運転してきたことに慢心しないよう注意を促すことが大切でしょう。
解決が難しい高齢者による交通事故の問題。
この番組ではいずれまた追跡します。