第70回 危ないクルマのローカルルール(後編)
2016/07/28
運転マナーには多少の地域性があるもの。
夏休みに慣れない土地でハンドルを握る時は気をつけましょう。
今週は悪しき運転マナーの地域性を紹介する「危ない!車のローカルルール」後編でした。
取り上げたのは「播磨道交法」。
播磨地方はかつて播磨国があった兵庫県南西部の一帯。
姫路市を中心にたつの市・相生市・赤穂市周辺のことです。
その播磨地方にまつわるのが「播磨道交法」。
でもこれ、実在する法律ではありません。
地元新聞社の神戸新聞のある連載から生まれたものです。
当時を知る淡路総局長 三好正文さんによると
13年前のこと、関西では「1 姫、2 和泉」と言われ、
兵庫県西部の姫路ナンバーが交通マナーが悪い車だとされることが多いため、
姫路地域の運転マナーは本当に悪いのか? どういうふうに悪いのか?
読者とともに考えてみようという連載を始めました。
その中で読者から「姫路ナンバーの運転は荒いか」意見を募集。
すると「荒っぽい」という意見、「そうでもない」という意見、
また「そういう運転には事情がある」という意見など多数が寄せられ、
専門家を交えて紙面上で考えていったそうです。
そして、テーブルに挙げられた地域の運転マナーの悪さを、
自戒の意味を込め、法律的な文章にして紙面に掲載しました。
それが「播磨道交法」です。
ともすれば読者からの反発や批判もあったかもしれない
「自戒」と「皮肉」と「ユーモア」を込めた「播磨道交法」の作成と掲載。
そこには「地域の交通事故を減らしたい」という思いと願いがあったからでしょう。
「播磨道交法」は3つの賞からなります。
第1章・交差点
(1) 先に入った車が優先。右折時、対向車が直進してきても待つ必要なし。
(2) 右折時、対向車が左折なら、一緒に曲らなければならない。
左折車を先に行かせていると、右折待ちの後続車からクラクションを鳴らされる。
(3) 自転車や歩行者は、車が通らなければ、赤信号は青とみなす。
(4) 右左折時、横断歩道を人が歩いていても、通れるスペースがあれば、すり抜けるべし。
(5) 右折は、右折信号が出てからが勝負。
右折信号が消え、赤と続く数秒間に何台潜り込めるか。
第二章・歩道、車線変更
(1) 信号のない横断歩道。
歩行者は、車が途切れるまで待つべし。車は止まってはくれない。
(2) 車線変更。狭い間隔でも、スペースさえあれば割り込み可。
(3) 指示器は曲がると同時に出す。
第三章・附則
(1) バスは、停留所から車線に戻るとき、辛抱強く待たなければいけない。
(2) 前に人がいれば、クラクションで道を空けさせる。
こうした悪しき運転マナーは、今回とりあげた、
伊予地方、名古屋、播磨地方に限ったことではありません。
長野県の松本周辺には「優先道路に出る際、一時停止をしない」などの
「松本走り」と言われるローカルルールがあります。
山梨県には「直進車の有無に関わらず、減速なしで右折する」などの
「山梨ルール」と言われるものもあります。
程度の差こそあれ、こうした運転はどこにもする人がいるもの。
今回とりあげたローカルルールは、有名なだけに気をつけやすく、
地域の住民が意識的な分、大きな改善の余地があるのかもしれません。
大多数が当たり前に危ないローカルルールで運転していて
そのことを地域外の人たちはまだ知らない・・・それがいちばん怖いことかも。
知らない土地で運転する時には充分注意しましょう。