第64回 アクセルとブレーキの踏み違え(後編)
2016/06/16
人間は勘違いをする生き物。
・ 「ついうっかり」
・ 「ボーッとしている時」
・ 「何かに気を取られて」
・ 「とっさの判断を誤って」
ブレーキを踏むべき時に、アクセルを踏んでしまい、事故が起こることがあります。
今週は「アクセルとブレーキの踏み違え」を追跡する後編でした。
まずはあらためて、この踏み間違えによって、どんな事故が起きているか?
交通心理学の専門家、大阪大学大学院 篠原一光 教授に教えていただきました。
(1)いつもバックで駐車しているスーパーの駐車場で
前向きに駐車をしようした時に踏み間違いをして壁に衝突したケース
(2)スーパーの駐車場から路上に出ようとした時に踏み間違えて
道路を隔てた前方の電柱に衝突したケース
(3)走行中に路肩の縁石に接触して慌ててブレーキをかけようとしたところ
踏み違いをして車を暴走させて前方の建物に衝突したケース
30年以上にわたり交通事故防止の研究に取り組む九州大学名誉教授で
安全運転推進協会 代表理事の松永勝也さんが過去に行った
「踏み違え」の実験結果について伺ってみました。
「どんな状況で「踏み違え」が起こりやすいか?」
それは頻繁にアクセルとブレーキを踏み変える状況。
人間は同じ操作を繰り返すと、その動作が早く出来るようになります。
車を運転している人はアクセル操作の回数が最も多い。
だから、危険が迫ってできるだけ早くブレーキを踏もうとした時に、
ブレーキペダルを踏むつもりが反射的にアクセルペダルを踏んでしまう
といった事が発生する事が確認出来たといいます。
「運転中に驚いた時、人はどんな行動をとるか?」
人間がいちばん驚くのは自分の生命を脅かされた時。
そういった時には逃げる準備操作がなされる。
逃げる為には走る、走る為には足を踏ん張る。
だから、車を運転している時にアクセルを踏んだ状態で驚くと、
アクセルを強く踏むという動作をとってしまうのです。
「携帯電話やスマートフォンが「踏み間違え」の原因になることもある」
電話のベルが鳴ると多くの人は対応しようとします。
その時に、一瞬、注意が車の運転から離れてしまうからです。
松永教授によると「踏み違え事故」を起こす割合が多い
若年層と高齢層にも、それぞれの傾向があるといいます。
若年者の「踏み違え事故」が多く起きているのは直線道路。
解決策としては、踏み違えても修正動作が可能なように大きな車間距離をとっておく。
一方、高齢者の「踏み違え事故」が多く起きているのは駐車場などでのバック時。
解決策としては踏み違えても修正出来るように時間をゆっくり取る踏み方をする。
以上のことで「踏み違え事故」を減少できる可能性があります。
松永教授、篠原教授、ともに話していたのが
ペダルの踏み間違を完全に無くすことは難しいということ。
篠原教授は踏み間違い防止機能の普及を期待したいとおっしゃっていました。
その上で装置が無くても自分の工夫で防げる部分がある。
体の感覚でやらないといけないのがペダルの操作なので、
自分の足がどのペダルを踏んでいるのか?
意識した上で次の動作に移るという運転を心がけることが必要です。