第63回 アクセルとブレーキの踏み違え(前編)

2016/06/09

クルマの運転で本当ならブレーキペダルを踏むところを、
間違えてアクセルペダルを踏んでしまい。ヒヤッとした経験のある方・・・いませんか?
このところ怖い事故が報道されるアクセルとブレーキの踏み違えを2週にわたり追跡します。

今回のテーマのコメントは大阪大学大学院人間科学研究科 篠原一光 教授。
交通心理学の分野でドライバーの行動などのうち人間の注意力の研究が専門。
(財) 国際交通安全学会が「アクセルとブレーキの踏み違え」について行った研究で
プロジェクトリーダーをつとめた方。

この研究の報告書には以下のような事故例が記載されています。

? ファーストフード店の駐車場から発進しようとしていた乗用車が突然暴走、
  ガラス窓を突き破って店内に進入した。運転していた女性と店内の男性客2名が負傷。
  女性は「車が急発進した」などと話しており、警察ではアクセルとブレーキの
  踏み間違えが事故の原因ではないかとみて車両の検分をすすめている。

? スーパーマーケット駐車場で場内に進入してきた乗用車が暴走。 
  そのまま敷地内の菓子店の外壁に突っ込んだ。
  運転手は腹部を強打して4時間後に死亡。
  現場にはブレーキ痕が見あたらないため、警察ではアクセルとブレーキを踏み間違え、
  パニックになった可能性が高いと推測している。


アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違えは多い事故ではありません。
平成25年度だと6,402件。全人身事故の1.13%にあたります。

ただ、平成12年から平成21年に起こった事故件数を見ると
全交通事故は10年間で、およそ82万件から65万件に減りました。21%の減少。

それに対し、ペダルの踏み違え事故は横ばいで6千人から7千人。10年で2%ほど増加。
「踏み違え事故」は交通事故全体の1%ほどとはいえ減らしにくい事故なのかもしれません。
さらに運転手が死亡する割合が多いという特徴があります。
平成12年から平成21年の統計を見ると・・・

交通事故全体の運転者死亡率    ▶ 0.17 %          

ペダル踏み違え事故の運転者死亡率 ▶ 3.44 % 
 
2015年の「踏み違え事故」の死亡者は60人に達したという報道もあります。
「踏み違え」という行為を考えると世代別には圧倒的に
高齢者の事故というイメージを持つかもしれません。

しかし、免許所持者数に対するペダル踏み違え事故の発生率を世代別に見ると、
確かに認知・判断・操作の能力が落ちる高齢者の発生率が高いものの
18歳〜24歳までの年齢層にも高い数字が出ているのです。

毎日新聞の報道によると2013年の踏み違え事故は2割が20代。
免許を取ってあまり年数が経たない方には特に気をつけて下さい。

このタイプの事故がいちばん起こる場所は駐車場などの道路以外での場所。
篠原教授によると前進とバックを繰り返して行なう中でこの事故は起こるのだろうとのこと。
そのあとで交差点付近、単路・直線部。単路・カーブ、交差点という順になります。

アクセルとブレーキを交互に使うような時に起こりやすい「踏み違え事故」。
運転中は注意散漫にならないように、くれぐれも注意して下さい。
次回はこの続き「アクセルとブレーキの踏み違え事故 後編」です。