第60回 ミラーレスカー

2016/05/19

去年、自動車の国際基準を定める国連の「自動車基準調和世界フォーラム」が、
一部のミラーに限定していた映像の代用をすべてのミラーに拡大すると決めました。
これを受けて国土交通省も車両運送法の安全基準を改定して、
すべてのミラーをカメラとモニターで代用することを認め、
ミラーがないクルマが公道を走れるようになるとみられています。

そこで、今回は自動車評論家 国沢光宏さんにお話を伺い、
「ミラーレスカー」について追跡しました。
国沢さんによるとミラーレスカー登場にはいくつかの流れがあります。

車が走行している時、ミラーには斜め後方や横に見えない死角があります。
また出発時などに車の周囲で子供がいても見えない部分があります。
それをなくしたいというのは昔からあったこと。
デザインの面においてもミラーがなければ自由度が広がる
モーターショーに出展されるコンセプトカーには
ミラーが付いていない車もたくさんありました。
そうした素地があって、そこに技術が追いついてきたのです。

ミラーのかわりにみることになる車のどこに画像を見るモニターがあるかというと
ドライバーが見やすいダッシュボードの中、
ドアミラーに替わるモニターは運転手は
ドアミラーを探してしまう習性があるのでドアミラー近いところ。
目線の異動が少ない位置。

ただ、国沢さんのミラーレスカーに乗った経験では、
ミラーに変わるような性能を持つ動画を映す技術は出来ていないといいます。
画像の処理が遅い。目で見る鏡よりも情報量が少ない、つまり粗い。
現時点では、人間の目と同じ位、情報量の多い画像処理システムを作ろうとすると、
1つあたり10万、2つで20万円、さらに後部のルームミラーでまた10万円。
安くない金額がかかってしまいます。

それであれば、今ならレーダーを使うブラインドスポットモニターで後ろの安全を確保できるし、
バックで大きな通りに出る時は左右の交通の状況をレーダーでキャッチできて警報を鳴らしてくれるし、
しかも、もっと安価なので、ミラーレスカーが広がるには、技術の進化が必要ではないか。
というのが国沢さんの見解です。

現状ではすでに実用化されているサポート機能のほうが、
安全運転のためには役立つということ。
でも、国沢さんはミラーレスカーが近い将来、
安全運転に大きく寄与することを期待していました。

「画像処理能力が進めば車の周りに危険物が接近した時点で
警告してくれて、危険の接近を教えてくれれば事故を大幅に防ぐ事が出来るし、
そういう意味では凄く期待が出来るシステムです。
人間は必ずミスをするので、そこが助けてくれるのが技術。
ですから、技術は進んだほうが良いと思います。
それまでは人間が頑張るしかないということです」