第49回 ライジングボラード

2016/03/03

今回、追跡したのはヨーロッパ各国では
ポピュラーな交通安全のための1つの手段「ライジングボラード」。

日本版ライジングボラード普及に取り組む
埼玉大学 大学院教授 久保田尚さんのコメントを交えてお送りしました。

ふだんは道路の中に埋まっていて何かがあると上がってくる。
あるいは、ふだんは上がっていて、何かがあると道路の中に下がっていく、
機械式で昇降する車止めで、日本でも独自の方式のものが導入され始めました。

ふつうの「ボラード」=車止めは日本でも色々なところにあります。
車が侵入できないように立っている高さ7、80センチの円筒形のもの。





一方で機械式で昇降する「ライジングボラード」は、
もともと重要な建物の入口に設置される警備上のものでした。
例えば以前から日本の国会議事堂前にもあります。
悪質な車が入らないよう通常は上がっていて、
関係車両が入る時は下がり、通り過ぎると再び上がります。

これを交通規制にも利用できるのではないか?
そう考えられたのが、1987年、イギリスのケンブリッジ。

ある時間、ある場所に車に入らないようにするのが交通規制。
典型的な例でいうとスクールゾーン。
例えば朝7時30分から8時30分までは子供が安全に登校出来るよう車の進入を禁止する。
ただ、禁止を無視して入ってくる車がいないとも限りません。
それをライジングボラードで確実に交通規制をしようとしたのです。

もう1つ大きいのは都心部のいわゆる「歩行者ゾーン」。
人だけが歩いて活性化した都心部を作るような場所にライジングボラードを置けば
そのエリアにいる人は安心して歩くことが出来るます。

イギリス ケンブリッジで交通規制のために導入された後、
ヨーロッパ各国には交通事故防止のためのライジングボラードが普及します。
ところが日本には導入されせんでした。

実はヨーロッパのライジングボラードは鋼鉄製。
許可を得た車が通過したあと「後続の車も通ってしまおう」と試みたところ、
上がってきたボラードが車を直撃してしまうという事故が起こっています。
ヨーロッパは自己責任社会。
入ってはいけない人が入ろうとして事故を起こした訳ですから、
後続の車がボラードを弁償する責任を負うことになります。

ところが日本人は誰かに責任を追わせたいという国民性。
「入ってはいけないと分からなかった」「ボラードが見えなかった」という理由で、
車の損傷を弁済しろという主張が出てくることが予想されたのです。
そこで考案されたのが車もボラードも壊れない
柔らかい素材で作る「ソフトライジングボラ―ド」。

4年前から試験がスタートして本格導入されたのが2014年。
新潟市 中央区の商店街「ふるまちモール6(ろく)」。
150mの道路を挟んで、両側に29の店舗、専門学校や銀行がある商店街では、
一方通行の道路の入口に「ライジングボラード」が設置されています。

<午前8時〜正午>

 ボラードが下がっていて通行OK。


<正午〜午前8時 >

 ボラードが上がっていて通行禁止。
 通行には警察の通行許可が必要で許可車両には
 ライジングボラードを下げるためのリモコンが配布されます。


「ふるまち6(ろく)」のあと、
去年、岐阜市の商店街「長良川プロムナード」に、
おとといから新潟市 中央区の古町通8番町でも、
ソフトライジングボラードの運用がスタート。

ただ、これらはもともと交通事故が起こっていないところ。
日本版ライジングボラード導入に取り組む久保田さんは、
より事故の可能性を孕むところに導入したいと考えています。

それは、やはり子供たちが歩く通学路。
交通規制を守らない車が入ってきて子供が事故に遭うという悲惨な自己を
遠くない将来、排除できることを期待しているということです。