第47回 トンネルでの安全運転

2016/02/18

一般道でも、高速道路でも、
クルマを運転していて明るい外の世界から、
わずかに電気が灯る仄暗い、あの空間に入ると、
どことなく「怖さ」を感じる人は多いのではないでしょうか。

仄暗い空間とは・・・「トンネル」。
クルマの運転は多くの危険が潜んでいますが、もちろんトンネルにも。 
今回は交通安全アドバイザー 藪下正三さんのお話をお聞きしつつ
トンネルでの安全運転を「追跡」しました。

まず、トンネルでの交通安全で気をつけるべきは、
明るい外の世界から暗いトンネルに入る前に、
安全な通行ができる状態なのか情報を集めること。

? 日中、サングラスをしていたらはずす

? ヘッドライトの早めの点灯

? 高速道路ならラジオの情報提供を受信 1620kHz

? 電光表示板や信号の確認

そして、しっかり情報を集めてトンネル内に入っても、
運転には充分注意しなければいけません。
トンネル内の「性質」も知っておきましょう。

トンネルというと真っ直ぐな道路という印象があるかもしれません。
しかし、近年のトンネルは直線が招くリスクを押さえるために
わざとカーブになっているトンネルが増えているそうです。
つまり、トンネル内は前方の見通しがあまりよくないということ。
また、トンネル内は水捌けを良くするため入口から中心に向かって上がり坂。
中心から出口に向かっては下り坂になっています。
つまり、下り坂ではスピードがオーバー気味になってしまう可能性があります。

また、ドライバーがトンネル内でとりやすい行動もあります。
車幅が狭く、側壁が迫る暗いトンネルの中に差し掛かると、
ドライバーは意識せずにスピードダウンする現象が見られます。
その原因の1つがトンネル外よりも速度を速く感じてしまうため。
多くの車両が無意識の内にアクセルペダルを緩めているのです。

多くのドライバーは無意識にスピードを落とすこと、
それ自体は交通安全にとってマイナス要素ではありません。
ただ、そのことを知らない上に自分はトンネルの“怖さ”を感じず、
スピードを出すドライバーがいるとなれば大いに危険な事態になります。

また、高速道路で起こりやすい現象がトンネル内では顕著に現れます。
それは大事故の要因になりかねません。

高速道路を走り始めて暫くの間は、
スピードへの恐怖心や周囲の景色が刺激となって緊張感を保てます。
しかし、運転に必要な情報が次々と視界に飛び込んでくるため、
時間の経過と共にストレスを感じるようになるのです。
このようなストレスを「流体刺激」と呼んでいます。

一部のドライバーたちは流体刺激から逃れようと、
無意識の内に前方を走る車両の後ろ姿を見て走るようになります。
そして、自分の車が100kmで走っていて、前方車両も100kmだと、
あたかも止まっているモノを見ているのと同じ感覚になります。
その結果、速度に応じた安全を確保するための車間ではなく、
流体刺激から逃れるための車間になっていくのです。

このようなドライバーが数十台ずつ一団となって、
等間隔で異常接近する「車郡現象」がトンネル走行時には多くなります。
多くのドライバーがヘッドライトをロービームにしていて、ロービームの照射距離は約40m。
この範囲以内に前方車両を捉えようとすると極端に車間距離を詰めることになります。
このような車郡現象が多重衝突事故の大きな要因となっています。

止まっているように感じることを「追従静止視界」と言います。
つられてスピードを出しすぎているかもしれないので
スピードメーターの確認を怠らないようにしましょう。
そして、適正な車間距離を保つようにしましょう。

安全な車間距離の取り方は、距離を時間に置き換える方法が効果的。
停止の際に必要となる「2秒」をあらかじめ確保しておきましょう。
走行中の目印となる目標物を前車が通過した時点から、
自分が同じポイントを通過するまでの時間をカウントしますす。
しかし、この2秒間は走行条件の良い時の車間距離。
走行条件が良くない場合、雨や夜間の運転は1秒追加します。
トンネル走行は夜間走行と同じなので前車との距離感が3秒必要です。

トンネルは出る時も要注意!
川端康成の雪国にある「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」ではないですが、
トンネルのあちらとこちらでは天候や道路状況がまったく違うこともあります。
トンネルの危険を認識して安全運転を心がけてください。